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第11話 現代とエルフの関係

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 イウォールは自分以上にうまいビーフシチューはないと自負している。

 彼はこの世界に来て、世界各国、そして日本の有名な店で食事をしてきた。
 薬の調合師でもある自分が料理の味を間違えるなどあり得ない。

 そして、なにより、料理の色が鮮やかであるのは、この世界では不正解だ。

 エルフには魔力がある。
 そのおかげでできることも多いのだが、認識しているものも多い。
 動植物は生きながらに魔力を発している。
 それらの生命エネルギーが魔力といってもいい。
 それを目でとらえることで、景色がカラーになる。
 ……というのを、エルフは40年前に知った。


 なぜならこの世界には色がない。


 犬や猫などの動物、木々や土などには多少魔力が宿っている。
 そのおかげで、うっすらと色がついて見えるのだが、殊の外、人間に魔力がなさすぎた。
 おかげで建物や着る物など、生きていないものは全てモノクロに見える。
 特にイウォールは他の人よりもずっと魔力が高い。
 国家魔導師でもあるのだから、相当だ。

 おかげで、より色が見えないのだ。

 木々はカラー、だけれど道路や人はモノクロ。
 もちろん、料理だってモノクロだ。

 匂いも、温度もわかるのに、色がわからないという状況が、苦痛でしかなかった。
 だから自分で作ればそれが解消される。
 自分の部屋であれば、物に魔力を与え、色を見ることができる。
 イウォールはそうやってこの世界のストレスと向き合ってきた。

 たしかにこの世界の人間でも魔力のある者がいるという。
 だが統計では1%にも届かないといわれている。
 ないわけではないが、見つけられたなら奇跡でしかない───



『イウォール、この並木道の先なんだ』

 ランチタイムとなった今、トゥーマとアキラを先頭に、4人でカフェに向かっているところだ。

『マスター・イウォール、信じてないですね』

 アキラの声に、イウォールは苦く笑う。

『私は魔力が強いからな。それなりの魔力がないと色は感じられない』
『お前の目って不自由だよなぁ』

 ひと事のようにケレヴがつけたしたとき、並木道の影から洋館がのっそりと現れた。
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