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第5話 現代のエルフの姿

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 莉子はオーダーを確認すると、素早く動き出した。
 なぜならこの店を切り盛りしているのは彼女ひとり。

 他のお客のオーダーをさばきながら、ドリンクを出し、会計をし、料理を作らなければならないのだ。

 徐々に埋まり始めた店内を見回し、莉子は準備を整えていく───

 木のケースに入れられたカトラリーと一緒に出されたのは、手のひらほどの木製ボウルに盛り付けられたサラダだ。

 張りのある葉野菜と少し変わった茹で野菜が盛りつけられている。
 黄色の人参やロマネスコ、アイスプラントが散らばっていて、目でも楽しめるサラダだ。
 すでにかけられていたドレッシングはオリーブオイルの風味がいい。粒マスタードも散らばっていて、食欲がそそられる。

『トゥーマ、このサラダ、キレイ……! 色がついて見えるよ! すっごく、おいしそう……』

 小声で話しかけるのは金髪の青年だ。

『アキラも色がついて見えるのか? 俺の錯覚かと思った……。なぁ、アキラ、あの料理人は魔法使い、……なわけないよな? 何なんだ、彼女は』

 トゥーマと呼ばれた青年は、小声ながらも興奮気味に話し、大きく葉野菜を頬張った。
 2人ともに、ふんわりと笑顔が浮かんでしまう。
 歯応えもさることながら、ドレッシングの旨味がいい。
 それになにより、

『サラダ、うまいな、アキラ』
『だね、トゥーマ。もう1皿、食べれちゃいそう』

 彼らの言葉はエルフ語であるため、この店内にいる人は聞き取れないだろう。
 だが、日本語は、魔力でつくられた翻訳機で、少なからず聞き取れてしまう。

 今も───

「あのエルフ、ちょーイケメン。タレント並みじゃない?」
「やばい。話しかけてきなよぉ」
「えー、ムリムリ! エルフ語マジわかんないしぃ」
「あの言葉、マジやばいよね」
「音痴みたいな?」
「そーそー! マジ、きも!」

 エルフは見た目が褒められることが多い。
 だが、エルフ語はちがう。
 人間には、音の外れた歌のように聞こえてしまうことがあるのだ。

 ギャップがありすぎるからこそ、起こるのかもしれない。
 楽しく食事をしていた2人だが、日本語が理解できるため、会話を続けるのが、どうしても辛くなる───

「お客様、こっちの言葉はエルフの方も聞き取れるものですので……少し、お控えに」

 そう声をかけたのは莉子だった。
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