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第2章 カフェから巡る四季
第148話 ザ・鳥刺し!
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『鳥刺し』というのをご存知だろうか。
そう、鶏肉が生で食べられるのである。
宮崎や鹿児島の郷土料理ともいえる鳥刺し。
地元ではスーパーや居酒屋でも並んでいるという。
「……食べたい」
莉子は思った。
レバ刺しやユッケが食べられなくなってしばらく経つ。
生のお肉が食べたい……!
調べると、なんと冷凍通販をしていることに気がついたのだ。
しかも、ふるさと納税!
今流行りのふるさと納税で!!!
そうして届いたのが、“鳥刺し1キロ”だ───
莉子の部屋の食卓テーブルに並べた鳥刺しパック。
それらを挟んで、連藤と莉子は見下ろしていた。
どうみても肉だ。
ピンクの肉だ。
あれほど鳥には火を通せと言われているのに、この冷凍は生だ。
とても美しい桃色と、皮目は焦げ目があり、“タタキ”と書かれているのにも納得。
「意外と量があるんだな」
そう言ったのは連藤だった。
手で撫でて、パックを確認しての一言だ。
さらに、
「もも肉が皮目が炙られて、スライスされてるんだろ?」
「あなた、本当は目が見えてるんでしょ?」
連藤は肩をすくめて否定する。
「昔、現地で食べた」
「その経験値から導き出す答えとしては、ちょっと的確すぎて、キモいです」
「キモい……」
莉子は言いながらも冷蔵庫から日本酒を取り出してくる。
今日は日本酒の日なのだ。
今日の日本酒は華やかながらに辛味もあるものを選んだつもりだ。
最近の日本酒はふくよかな味わいが多く、本当に飲みやすくなったと莉子は思う。
香りも爽やかなものが多く、白ワインと表現してもいいほど。
「あ、連藤さん、実はこの中で1パック、溶かしてあ」
「一番、右側のパックだろ」
「……もう恐怖なんですけど」
莉子はまだ溶けていないパックを冷凍庫に戻し、手早く盛り付けていく。
大根のツマや大葉などを適宜にあしらい、鳥刺しを置いていく。
連藤は淡々と日本酒の準備を進めてくれている。
錫の酒器を棚からだし、手早く拭いて、テーブルに並べ、いつでも飲める準備が整った。
莉子は盛り付け終えた鳥刺しを出し、事前に作っておいた筑前煮、ほうれん草の胡麻和え、冷奴とトマトとしめじのマリネ、〆用に豚汁とご飯は明日まで食べても問題ないように調整してある。
「連藤さん、鳥刺しって、専用のタレがあるんですね」
莉子が小皿に注いでいくが、香りはニンニクが強め、醤油ベースのタレだ。
いろいろな薬味が混ざっていて、タレだけでご飯が食べれそうだ。
指につけて舐めてみたが、甘みもあり、美味しい。
本当にこれだけでご飯が食べられる。
「濃いめのタレだが、淡白な鳥刺しと本当に合うと思う」
連藤は嬉しそうに席につくと、手をさすり、早く食べたいとアピールされる。
莉子はそれに笑いながらも、連藤のお猪口にお酒を注ぎ、自分の分も注ぐと、箸を取り上げた。
「さ、いただきますか!」
「いただこう」
「「いただきます」」
声を揃えて食べ始めるが、やはり二人の箸が最初に伸びたのは、鳥刺しだ。
連藤用に取り分け渡す。
「ありがとう、莉子さん」
「いえいえ。私もさっそく……」
そっと箸でスライスされた肉をつまむと、ちょうど胸のあたりだろうか。
肉質の厚い部分だ。
持ち上げただけでわかる。
生だ。
ねっちょりとした、まるで鮮度のいいイカの刺身のような、そんな弾力がある。
それをタレにつけ、一口。
「……ん……あ、意外と、皮の歯応えも……」
甘めの薬味タレが混ざり、淡白な鶏肉がしっかりお刺身になっている。
馬刺しとちがい、肉の旨みは少ないが、皮の食感がおいしい!
「あー……これ、すごくクセになる……」
ふた切れ目を頬張った莉子に、連藤が大きく頷いた。
「この食感とタレの味がいいんだよ。日本酒もするする飲めてしまう」
空になったお猪口にお酒を足しながら、莉子も日本酒を口に含んだ。
合う。
タレが合う。
日本酒はいわば、香りのいいご飯!
それに風味のいいタレと、肉の旨み、皮の旨みが合わさり、口の中が幸せでいっぱいだ。
「……おいしい……これ、地元だったら、冷凍じゃないの食べてるんですよね。いいなぁ」
「そうだな。やっぱり地元の方が、肉の食感が違った気がする」
「ですよね~」
「だが、俺は莉子さんと一緒にこれが食べられてるのが嬉しい」
「えへへへ……私もです……へへへ……あ、胡麻和え食べます? 合いそうな気がします」
一緒に出かけるタイミングがなくとも、同じものを美味しいと言える時間は、とても好きな時間だ。
一人だったら、ただ美味しかったで終わるが、二人なら思い出になる。
莉子はこの時間が大好きだ。
少しでも味わいたいが、いかんせん今日の日本酒はとても美味しい。
忘れないように、莉子はなるだけ気持ちを込めて、鳥刺しをゆっくり頬張ってみる。
そう、鶏肉が生で食べられるのである。
宮崎や鹿児島の郷土料理ともいえる鳥刺し。
地元ではスーパーや居酒屋でも並んでいるという。
「……食べたい」
莉子は思った。
レバ刺しやユッケが食べられなくなってしばらく経つ。
生のお肉が食べたい……!
調べると、なんと冷凍通販をしていることに気がついたのだ。
しかも、ふるさと納税!
今流行りのふるさと納税で!!!
そうして届いたのが、“鳥刺し1キロ”だ───
莉子の部屋の食卓テーブルに並べた鳥刺しパック。
それらを挟んで、連藤と莉子は見下ろしていた。
どうみても肉だ。
ピンクの肉だ。
あれほど鳥には火を通せと言われているのに、この冷凍は生だ。
とても美しい桃色と、皮目は焦げ目があり、“タタキ”と書かれているのにも納得。
「意外と量があるんだな」
そう言ったのは連藤だった。
手で撫でて、パックを確認しての一言だ。
さらに、
「もも肉が皮目が炙られて、スライスされてるんだろ?」
「あなた、本当は目が見えてるんでしょ?」
連藤は肩をすくめて否定する。
「昔、現地で食べた」
「その経験値から導き出す答えとしては、ちょっと的確すぎて、キモいです」
「キモい……」
莉子は言いながらも冷蔵庫から日本酒を取り出してくる。
今日は日本酒の日なのだ。
今日の日本酒は華やかながらに辛味もあるものを選んだつもりだ。
最近の日本酒はふくよかな味わいが多く、本当に飲みやすくなったと莉子は思う。
香りも爽やかなものが多く、白ワインと表現してもいいほど。
「あ、連藤さん、実はこの中で1パック、溶かしてあ」
「一番、右側のパックだろ」
「……もう恐怖なんですけど」
莉子はまだ溶けていないパックを冷凍庫に戻し、手早く盛り付けていく。
大根のツマや大葉などを適宜にあしらい、鳥刺しを置いていく。
連藤は淡々と日本酒の準備を進めてくれている。
錫の酒器を棚からだし、手早く拭いて、テーブルに並べ、いつでも飲める準備が整った。
莉子は盛り付け終えた鳥刺しを出し、事前に作っておいた筑前煮、ほうれん草の胡麻和え、冷奴とトマトとしめじのマリネ、〆用に豚汁とご飯は明日まで食べても問題ないように調整してある。
「連藤さん、鳥刺しって、専用のタレがあるんですね」
莉子が小皿に注いでいくが、香りはニンニクが強め、醤油ベースのタレだ。
いろいろな薬味が混ざっていて、タレだけでご飯が食べれそうだ。
指につけて舐めてみたが、甘みもあり、美味しい。
本当にこれだけでご飯が食べられる。
「濃いめのタレだが、淡白な鳥刺しと本当に合うと思う」
連藤は嬉しそうに席につくと、手をさすり、早く食べたいとアピールされる。
莉子はそれに笑いながらも、連藤のお猪口にお酒を注ぎ、自分の分も注ぐと、箸を取り上げた。
「さ、いただきますか!」
「いただこう」
「「いただきます」」
声を揃えて食べ始めるが、やはり二人の箸が最初に伸びたのは、鳥刺しだ。
連藤用に取り分け渡す。
「ありがとう、莉子さん」
「いえいえ。私もさっそく……」
そっと箸でスライスされた肉をつまむと、ちょうど胸のあたりだろうか。
肉質の厚い部分だ。
持ち上げただけでわかる。
生だ。
ねっちょりとした、まるで鮮度のいいイカの刺身のような、そんな弾力がある。
それをタレにつけ、一口。
「……ん……あ、意外と、皮の歯応えも……」
甘めの薬味タレが混ざり、淡白な鶏肉がしっかりお刺身になっている。
馬刺しとちがい、肉の旨みは少ないが、皮の食感がおいしい!
「あー……これ、すごくクセになる……」
ふた切れ目を頬張った莉子に、連藤が大きく頷いた。
「この食感とタレの味がいいんだよ。日本酒もするする飲めてしまう」
空になったお猪口にお酒を足しながら、莉子も日本酒を口に含んだ。
合う。
タレが合う。
日本酒はいわば、香りのいいご飯!
それに風味のいいタレと、肉の旨み、皮の旨みが合わさり、口の中が幸せでいっぱいだ。
「……おいしい……これ、地元だったら、冷凍じゃないの食べてるんですよね。いいなぁ」
「そうだな。やっぱり地元の方が、肉の食感が違った気がする」
「ですよね~」
「だが、俺は莉子さんと一緒にこれが食べられてるのが嬉しい」
「えへへへ……私もです……へへへ……あ、胡麻和え食べます? 合いそうな気がします」
一緒に出かけるタイミングがなくとも、同じものを美味しいと言える時間は、とても好きな時間だ。
一人だったら、ただ美味しかったで終わるが、二人なら思い出になる。
莉子はこの時間が大好きだ。
少しでも味わいたいが、いかんせん今日の日本酒はとても美味しい。
忘れないように、莉子はなるだけ気持ちを込めて、鳥刺しをゆっくり頬張ってみる。
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