老舗あやかし和菓子店 小洗屋

yolu

文字の大きさ
上 下
40 / 55
唐傘妖怪・一本傘のしずくちゃん編

小洗屋のシラタマと一本傘のしずくちゃん 2話

しおりを挟む
 シラタマの手が止まる。
 見上げた空は晴れ、雲すらない。

「お天気予報は、晴れ、だったよ?」
「……そうだね」

 しずくちゃんはつぶやいて、黙った。
 川のせせらぎが辺りに響く。

 シラタマはもう一度小豆を研いでいく。

 じゃりじゃりしゃりしゃり。
 しゃりじゃりしゃりじゃり。

「シラタマちゃん、小豆ってどうなったら研ぎおわるの?」

 不意の質問に、シラタマのヒゲがぴくりとゆれる。

「うんとねー……」

 じゃりじゃりと小豆を回して、ザルを持ち上げた。

「……こんな感じ。ツヤツヤして、小豆の色がキラキラしたらいいの! 研ぎすぎたらザラザラして、キラキラしなくなるんだよ」
「へぇ……そうなんだぁ」

 アメジストの原石のようにきらめく小豆をシラタマはニコニコと眺める。
 日差しにかざし、チラチラと光る川面のようで、とても美しい。

「シラタマちゃんは、小豆、好きなんだ」
「うん! あ、しずくちゃんは小豆、嫌いだった? ごめんね」
「ちがう、ちがうの」

 しずくちゃんは傘をくるくると回す。
 言葉を選んでいるんだろうか。
 シラタマは目をまわさないように傘から目をそらし、ザルの小豆を乾かす作業にはいる。
 ハンモックのように伸ばした布に広げるのだ。
 涼しい風に吹かれると、とても気持ちよさそうに布が揺れ、小豆から、ざざーざざーと音が鳴る。

「終わったぁ。しずくちゃん、あっちで串団子、食べよ!」

 シラタマは木陰に移動し、胡麻団子の包みを開けていく。
 確かに1日経ってはいるが、ふんわりと胡麻の香りがシラタマの鼻をくすぐってくる。

「しずくちゃん、取って」
「ありがと」

 2人そろって頬張る。
 胡麻の風味はもちろん、一度焼いてある団子の焦げた風味が鼻を抜けていく。さらに歯ごたえがいい!

「おいし!」
「でしょ。父ちゃん自慢の胡麻餡だよ」

 もちもちと食べていると、しずくちゃんがぼそりという。

「私ね、天気が予想できるのも嫌いだし、この顔も嫌いだし、髪の毛の色も大嫌いなの……」

 傘を肩に置いてシラタマを見る。

「なんで、そんなに、シラタマちゃんは好きでいられるの……?」

 本当に不思議そうに見つめられ、シラタマはどう答えていいかわからない。
 シラタマにも、嫌いなものがあるからだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

処理中です...