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魔女の娘のアリーちゃん編
小洗屋のシラタマと魔女の娘のアリーちゃん 4話
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リッカちゃんの質問は、向こうのファッションから、ドラマ、向こうの男の子の情報ばかりで、アリーちゃんはうまく答えられなかったが、それ以外の、パンを毎日食べていることや、野菜たっぷりのスープが定番メニューで、さらにオーブンの料理が多いことなど、教えてもらった。
おしゃべりをしながら、いくつかリンゴをもいで、果樹園をあとにしたが、それでも3人の会話は止まらない。
この村ではパン屋はないため、いつも魔女ミランダが焼いてくれるのだそう。
シラタマはその話に夢中になってしまう。
「パンって、雲みたいな食べ物のことでしょ?」
「そうね。パン屋さんはそう。でもママのパン、かたい」
くすくす笑うアリーちゃんにつられてシラタマとリッカちゃんも笑ってしまうが、頷くことは多い。
「うちの母ちゃん、掃除と洗濯はすごいんだけど、料理はからっきしでさー。アリーちゃんのママ、うらやましい」
リッカちゃんが足元の小石をぽーんと蹴った。
近くの川にぽちゃんと落ちて、シラタマはどうだろうと思う。
自分の母はどうかしら、と。
でもみんながいう、お母ちゃんの嫌いなことが、ぜんぜんうかんでこない。
これは、おかしいことなの……?
「ね、アリーちゃん、そのリンゴ、またアップルパイにするの?」
カゴにたっぷりはいったリンゴをみて、リッカちゃんがたずねている。
たしかに、そのリンゴの行方は気になる。
「わからない。ジャムにも、コンポートにもなる。どれも、おいしい」
シラタマはジャムはわかっても、コンポートがどんなものかわからない。
だが、まちがいなく、おいしいものにちがいない!
「そっか。リンゴっていろんな使い方ができるのね。……父ちゃん、毎日、リンゴとにらめっこしてる。和菓子で使いたけど、うまく使えないって」
「ママもアンコ、すごく悩んでる。ここのアズキ、とってもおいしい。洋菓子に使いたい。でも、うまくいかない……」
ふたりでうーんうーんとうなったとき、リッカちゃんがケロリという。
「それってさ、洋菓子と和菓子、それぞれまぜればよくない?」
「「まざらない!」」
つい声がかさなるが、リッカちゃんはおかまいなしだ。
「だから、自分で作らないで、もらえばってこと。それこそ、シラタマちゃんのところはリンゴジャムをもらって、なにか和菓子にするとか、アリーちゃんは餡子をもらって、それを洋菓子にするとか」
「「名案ですっ」」
リッカちゃんに2人が抱きつくと、ふふんと鼻をならす。
「まかせて。これでもあたし、ぐろーばる、だから!」
そのグローバルの意味はわからないが、お互い得意なことで補えばいい。
なんでこんな簡単なことに気づかなかったのだろう……
とはいえ、どうやって大人に協力してもらえばいいのか。
子どもが友だちになったから、和菓子屋と洋菓子屋でお互いの得意なお菓子を使い合いましょう!
……なんて、大人が発想するとは、思えない。
「むずかしよ、リッカ」
「そうおもう、私も」
消極的なアリーちゃんとシラタマに、リッカちゃんはなんで? という顔だ。
「じゃあさ、シラタマちゃん、もしリンゴジャム、もらったらどうしたい?」
シラタマの目がぎゅんと開く。
「もう決めてるの! 羅生門にね、生八つ橋ってお菓子があるんだけど。米粉を練って、薄くのばして、餡子を入れた和菓子。ニッキがきいてて、それにリンゴジャムをはさんだら、って思ってて!」
「シラタマ、ワタシもアンコあったら、やりたい洋菓子ある。パイに包んで焼く。さっくりしたバター生地とアンコが絶対にあう!」
お互いにすでに作りたいお菓子があることに驚くが、リッカちゃんは微塵も驚きはない。
「そんなの、大人が思ってないわけないじゃない」
そのとおりだ。
今までベテランの菓子職人が思いつかないわけがない。
「だからよ。それを偶然で、完成させるのよ! ……計画は、こう……!」
──計画実行は、3日後。
ろくろ首のシマ婆が開くお茶会だ。
おしゃべりをしながら、いくつかリンゴをもいで、果樹園をあとにしたが、それでも3人の会話は止まらない。
この村ではパン屋はないため、いつも魔女ミランダが焼いてくれるのだそう。
シラタマはその話に夢中になってしまう。
「パンって、雲みたいな食べ物のことでしょ?」
「そうね。パン屋さんはそう。でもママのパン、かたい」
くすくす笑うアリーちゃんにつられてシラタマとリッカちゃんも笑ってしまうが、頷くことは多い。
「うちの母ちゃん、掃除と洗濯はすごいんだけど、料理はからっきしでさー。アリーちゃんのママ、うらやましい」
リッカちゃんが足元の小石をぽーんと蹴った。
近くの川にぽちゃんと落ちて、シラタマはどうだろうと思う。
自分の母はどうかしら、と。
でもみんながいう、お母ちゃんの嫌いなことが、ぜんぜんうかんでこない。
これは、おかしいことなの……?
「ね、アリーちゃん、そのリンゴ、またアップルパイにするの?」
カゴにたっぷりはいったリンゴをみて、リッカちゃんがたずねている。
たしかに、そのリンゴの行方は気になる。
「わからない。ジャムにも、コンポートにもなる。どれも、おいしい」
シラタマはジャムはわかっても、コンポートがどんなものかわからない。
だが、まちがいなく、おいしいものにちがいない!
「そっか。リンゴっていろんな使い方ができるのね。……父ちゃん、毎日、リンゴとにらめっこしてる。和菓子で使いたけど、うまく使えないって」
「ママもアンコ、すごく悩んでる。ここのアズキ、とってもおいしい。洋菓子に使いたい。でも、うまくいかない……」
ふたりでうーんうーんとうなったとき、リッカちゃんがケロリという。
「それってさ、洋菓子と和菓子、それぞれまぜればよくない?」
「「まざらない!」」
つい声がかさなるが、リッカちゃんはおかまいなしだ。
「だから、自分で作らないで、もらえばってこと。それこそ、シラタマちゃんのところはリンゴジャムをもらって、なにか和菓子にするとか、アリーちゃんは餡子をもらって、それを洋菓子にするとか」
「「名案ですっ」」
リッカちゃんに2人が抱きつくと、ふふんと鼻をならす。
「まかせて。これでもあたし、ぐろーばる、だから!」
そのグローバルの意味はわからないが、お互い得意なことで補えばいい。
なんでこんな簡単なことに気づかなかったのだろう……
とはいえ、どうやって大人に協力してもらえばいいのか。
子どもが友だちになったから、和菓子屋と洋菓子屋でお互いの得意なお菓子を使い合いましょう!
……なんて、大人が発想するとは、思えない。
「むずかしよ、リッカ」
「そうおもう、私も」
消極的なアリーちゃんとシラタマに、リッカちゃんはなんで? という顔だ。
「じゃあさ、シラタマちゃん、もしリンゴジャム、もらったらどうしたい?」
シラタマの目がぎゅんと開く。
「もう決めてるの! 羅生門にね、生八つ橋ってお菓子があるんだけど。米粉を練って、薄くのばして、餡子を入れた和菓子。ニッキがきいてて、それにリンゴジャムをはさんだら、って思ってて!」
「シラタマ、ワタシもアンコあったら、やりたい洋菓子ある。パイに包んで焼く。さっくりしたバター生地とアンコが絶対にあう!」
お互いにすでに作りたいお菓子があることに驚くが、リッカちゃんは微塵も驚きはない。
「そんなの、大人が思ってないわけないじゃない」
そのとおりだ。
今までベテランの菓子職人が思いつかないわけがない。
「だからよ。それを偶然で、完成させるのよ! ……計画は、こう……!」
──計画実行は、3日後。
ろくろ首のシマ婆が開くお茶会だ。
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