老舗あやかし和菓子店 小洗屋

yolu

文字の大きさ
上 下
26 / 55
座敷童のサチヨちゃん編

小洗屋のシラタマと座敷童のサチヨちゃん 5話

しおりを挟む
 今日も変わらず小豆洗いに川に来ている。
 とても穏やかな日だ。
 天気予報では、お昼ごろに雨が降るかもと言っていたが、空を見上げれば、問題なさそうだ。
 一本傘の天気予報は絶対に外れないのに、珍しいなと思っていたとき、

「おーい、シラタマちゃーん!」

 声がかかる。
 顔を上げると、サチヨちゃんだ。
 大きな岩に飛び乗ると、ぴょんぴょんと跳ねながら、こちらに渡ってくる。

「シラタマちゃん、本当にありがと!」

 いきなりのお礼とあわせて、むぎゅっと抱きしめられ、シラタマの頬がふわりと押される。

「ななななんのこと、サチヨちゃん……?」

 頬擦りするサチヨちゃんを押しもどしながら聞けば、この前の運動会の件だという。

「ウチの子の願いの理由を調べるって大事なこと、思い出させてくれて、本当にありがとう! 見て! 雨を降らせて、1週間のびたから、……ほら!」

 サチヨちゃんが鞠をなでた。
 すると、この前見た少年が浮かび上がる。

『母さん、みんなで今日、飛べたんだ! よかったー! 雨ふってよかったよ!』

 大喜びの少年が、母親に大興奮で報告している。
 お弁当タイムなのか、おにぎりを頬張り、楽しげな昼食風景だ。

「……ふふ、よかった」

 ふわふわの肉球を口にあて、うふふと笑うシラタマをサチヨちゃんはもう一度抱きしめる。

「本当にありがとう、シラタマちゃん! だから今日はお礼にね、魔女ミランダのアップルパイ、食べましょ」

 サチヨちゃんが風呂敷からそっと出したのは、言った通り、2ピースのアップルパイだ。
 さくさくとしたパイ生地はもちろん、甘酸っぱいりんごの香りがふわっと広がる。
 瞬間、口の中に涎がじゅわっとあふれだす。

「……え、でも、これ」
「いいの、いいの! うちの父ちゃんと母ちゃんがね、シラタマちゃんと食べなってくれたから」
「じゃあ、あたし、お茶、淹れるね。ほうじ茶とアップルパイって、とってもおいしいのよ?」
「そうなの? たのしみー!」

 洗い終わった小豆を手早くまとめ、またあの小豆小屋へと向かっていく。
 2人の可愛らしい楽しげな声は止まらない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

処理中です...