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33「実践してみた 後半」*R18
しおりを挟むトイレに誰かが入ってくる物音がした。
「!」
俺たちは動作を停止させる。
「誰か来ちゃったね」
秋之が囁く。
男子トイレ内の個室は六つ。そのうち、一番奥の左の個室で、俺たちは息を潜め、なんとかやり過ごそうと試みる。
小便器は入り口から入って右側すぐにあるが、奥へ進み左へ曲がらない限り、こちらに気付かれることは……無い。と思いたいが――。
「宮田の仕事っぷり最近エグくねぇ?」
「あー、わかる。俺なんてもうとっくに業績も何もかも抜かれちまったもん。デキるエリートくんは違うよな」
同じフロアの営業担当の同期たちのようだった。
気配をなんとか消そうと吐息が、熱がこの個室から漏れないよう、必死そのもの。
「抜かれたと言えば――俺、昨日宮田で抜いちまったわ」
「ハァ!? 本気かよ。まぁ分からんでもないが」
その同期たちの会話を俯きながら聞いていた秋之は、
「ふふ……夏樹で……抜いた……なつ、きで……ふふ、ふ」
と声なき声で肩を震わせていたが、ピタッとそれが止んだ。俺はなんだか恐ろしくなって両太腿に変な汗をかいてしまった……。
すると満更でもない表情で俺を見つめ、音を立てないよう舌をゆっくりと乳首の上へと這わせた。舌先で弄り抜こうとするつもりのようだ。
これはひょっとして、罰なのか。怒っちゃった?
「待ってって……ばか……っ……ん」
絶対に声が漏れてはいけない。と下唇を噛み締めた。
小さな口の中で赤子のように吸われ続け、俺の先端からはカウパー液がいつの間にか滴りそうになっていた。
「なんかさ、宮田……好きなんだよな。誰にも言うなよ?」
「うーん、頑張れと言いたいところだが……宮田の付き合ってる人、同じ部署にいるだろ?」
「そんなの、奪っちゃえばいいじゃん。――無理かな」
「お前、それやらかすと、とんでもないことになるぞ……悪いことは言わん。やめとけ」
ど、どうしよう。
まだだ。
彼らはトイレから出ようとしない。
正直もうこれ以上、聞いていられなかった。きっとそれは秋之も同じだったかもしれない。
その間も執拗に乳首を攻められ続けた。極度の緊張と刺激がじわりじわりと蓄積され、身体と頭のナカに快楽が走り渡る。
首筋、鎖骨、素肌の上を舌が這う音、唾液で濡れたその場所に吐息が当たるとひんやりして、また直ぐに舌がチロチロと乳頭をいじめてくる。擽ったい、でももっと欲しくなる。肌が汗ばんできた。
「ぅ……ぁ」
やっと同期の二人が『帰るか』とトイレを後にした頃には、既に個室は俺たちの熱で湿気を帯び始めていた。
「――ねぇ、僕、嫉妬しちゃうよ」
「……っ、落ち着いて、よ……あっ」
「僕が隣にいないとき、夏樹が他の社員からどんな視線を向けられてるのか、よーく分かった」
俺の顔を見上げた秋之、その瞳は真っ赤だった。
そんなに俺がオカズにされたこと、悔しかったのか。嫉妬に満ちた彼が、どうしようもなく可愛く思えた。
「大袈裟だな、大丈夫だよ。ほら、おいで」
両手を広げ、秋之を胸元に抱き寄せると、
「夏樹、絶対渡さないから」
悔しさを隠し切れていない表情で呟いた。
「何言ってるの、大丈夫だって」
そして、強引に唇を奪われてしまった。
交わる舌が厭らしい音を立て、唾液を交換するように何度も激しく絡み合う。
再び呼吸が奪い去られ、胸部に口端から溢れた唾液が垂れると、腹部をゆっくりとなぞり下腹部へ伝うのが分かった。
「んんっ」
身体が興奮と期待でピクンと跳ねてしまう。キスをされながら俺の両乳首を人差し指で弾く刺激に身悶えた。もっと他のところにも触れてほしいのに。なんだろう、何かが漏れてしまいそうな――この感じ。
「っはぁっ、あき、ゆき……っまって、……おれヘンだ、何か……」
「僕、知ってる。夏樹のその顔、イク前の顔といっしょ。ほら、我慢しないで」
彼の瞳に、一体俺はどのように写っているのだろう。
再び柔らかな唇が重なると、身体中がビクビクと強く疼いた。
秋之の腕をぎゅっと掴み続けていた右手が、堪え切れず自慰をしようと自ら入り口の『ソコ』へ手を伸ばす。
「う……あ」
「夏樹、アナニーはダメだよ」
その右手は、直ぐに静止されてしまった。
「だってぇ、はぁ……どこも触ってくれないからっ」
すぐそこにある自分のペニスだって、この手でたくさん扱けばどれだけ気持ちいいか、自分自身が一番よく理解している。
彼の前ではあらゆる性欲が、願望が駄々漏れてしまう――滑稽なほどに。
「乳首、もうビンッビン。おっぱい……母乳も出るのかな?」
「うぅっ! あぁ……んっ!」
出会った頃よりも、少しふくよかになった胸部にこれでもか、というくらいに吸い付いてきた。チュウチュウと唾液に濡れた口端から、あからさまに音を立てられ耳までもを犯される。
「んっ! く、うぅぅう!」
身体がビクンッと反応すると、カツンッとトイレの床と靴底がぶつかる音が響いた。
ビジネスシューズの中で足指がヨガって力が籠もる。
「あ……っ、出ちゃ……う! あ……、んぁ……っ!」
上半身を仰け反らせ、目眩を起こしたかのように一瞬意識を手放してしまった――
荒い呼吸が少し落ち着くと、既に『放って』しまったあとのようだった。
なにが、起きた?
「ねぇ、夏樹、見て! プッシャーって本当に出たよ、透明なの!」
「……あ……」
しまった。
秋之のワイシャツとネクタイをしっかりと汚してしまっていた。
床やビジネスシューズ、脱がされたスラックスの一部にも潮らしき液体が付着していた。
出てしまったのか、本当に――。
「ん? 夏樹?」
「ごめん……帰るまでに、乾くかな、それ」
「このくらい大丈夫だよ? ほら、ジャケットはそんなに濡れてないし」
「ほ、ほんと……?」
「むしろ嬉しい。それに、僕たちでもできたし! 次はおっぱいからミルクをいーっぱい出そうね!」
キラキラ笑顔で喜ぶ秋之。それとは裏腹に股間がスラックス越しにもう『限界です』と反り立ち、訴えているような有様になっていた。
彼は俺の濡れてびしょびしょになった下腹部からペニスを愛おしそうに舐め尽くした。
ぬるぬるな舌があったかくて、擽ったくて、嬉しくなって、少し乱暴に彼の髪をクシャッと撫でる。
「夏樹」
「ん?」
「僕もう、ダメかも」
互いに顔を見合わせ、早く帰ろう。と、早々に会社を後にしたのだった。
それから、彼と自宅へ帰宅。玄関から既にキスの嵐で、俺たちはすぐさま素っ裸に――
ようやく触れてもらえる。
ローションで濡れた右手が入り口を優しく解し始めるが、その間も口で乳首を攻め立てられた。
「ふふ、今度は立派に勃ってきた」
「う……」
今日はとにかく攻められっぱなしの日らしい。
寝室で奥深くを突かれ続け、夜が更けるまでナカイキさせられたっけ。
――あっ!遅刻!
しまった、寝坊!……と思ったが、そうだ、今日は土曜。
まだ俺たちは布団の中。窓越しの太陽がもう随分と暖かくなってきた。春がもうじき終わろうとしている。
彼は俺の胸の中で幸せそうに、すやすやと寝息を立てていた。クスッと笑い出してしまいそうになるが、そこをなんとか堪える。
寝癖が凄いことになっていたからだ。
こうして、俺たちのあまりに唐突な『実践』してみた件は幕を閉じ、この日以降、俺の両胸は以前よりもしゃぶられ尽くされるようになってしまった。
また胸――というか、乳輪がふっくらになったような気がしている――。
「やっぱりまた膨らんできたような……大丈夫? これ」
脱衣所の洗面台の前で半裸で立ち尽くす。
女性のように艶っぽくなってゆく自分の胸に戸惑ったがそれ以上に、トキメキを覚えてしまっている自分がそこにいた。
まだまだ、秋之による開発は終わらない。
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