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29「聖夜の贈り物 後半」
しおりを挟む「うぅ」
目が覚めると、俺は秋之の背後にぴったりと抱きついていた。
柔らかくてあったかい素肌の感触、先週以来だ。
鼻先に届いた彼の髪の毛からシャンプーの甘い香りがする。落ち着く――。
彼は俺の腕の中で器用にもぞもぞと寝返りを打ち、向き合った。
「夏樹?」
ディナーの中盤、真っ白い生クリーム下地に真っ赤な苺が二つ寄り添ったホールケーキを半分に取り分け、一緒にツリーと窓辺から見える雪を眺めゆっくりとした時間が過ぎていったのを覚えている。
それから、『プレゼント』を遂に彼へ渡したことも。
「――」
「おはよう。起きた?」
寝起きの自分とは違い、完全に目覚めている状態のようで、長い睫毛の先の瞼がぱちぱちと瞬きをし、瞳が俺を見据えていた。
「うん。おはよう」
鼻を寄せ擦り付け合う。
秋之が、ふふ。と微笑んだ。
俺はもう少しだけ、と彼の頬に触れる。
脇腹あたりには秋之の優しい手の感触があったが、すぐにもしょもしょと擽って来た。
「こしょこしょ~!」
「っ!? あっはは! ちょっと!」
悶える俺の鎖骨の辺りへ秋之が顔を伏せると、喉元にキスをしてきた。
「――夏樹、ほら。僕、本当に指輪してるよ」
そう言うと、俺の目の前に左手を見せた。
昨日のディナーのあと、感謝の気持ちと共に捧げた指輪が薬指に輝いていた。
思わず顔が綻ぶ。
「夢じゃないよ? ほら、俺とお揃い」
自分も同じように秋之に指輪を見せる。
彼は自分の指輪と比較するようにじーっと交互に何度も見つめていた。
「僕の指のサイズ、よく分かったね。ピッタリだよ」
「夏の終わり頃、隣で爆睡してる時にこっそり測った」
「いつの間に。その時、僕は全然起きなかったんだ。すごい無防備だねぇ!」
「測った前日は俺がだいぶ秋之を、その――ヘトヘトにさせちゃったから」
「骨抜き。まさか、ほぼ気を失っていた?」
「確か昼過ぎまで起きなかった!」
一緒に笑い合うと、秋之は俺の指のリングを確かめるように触れ、白い滑らかな手で優しく握ってきた。
「夏樹、ありがとう」
秋之がほんの少しだけ、涙ぐんだ瞳で俺を見つめキスをすると、甘えるように胸部に顔を埋めてきた。
「俺の方こそ、ありがとう、秋之」
メリークリスマス
ぴょろんと寝癖のついた彼の頭をよしよしと撫で、強く抱きしめた。
日曜日のクリスマスは、まだ温かいベッドの中。
俺たちは暫く抜け出せそうにない。
――それから、一緒に身体を温め合い、昨日の洋菓子屋へ二人でショコラケーキを買いに自宅を出たのは午後一時頃だった。
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