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27「ぽかぽか」
しおりを挟む宮田宅
「朝、肌寒くなってきたね~」
ダークブラウンのぶかぶかな俺のスウェットを着た秋之が窓辺に立ち、外の景色を見渡している。後ろ髪には、ぴょこんっと寝癖がついていた。
夏に見慣れていた緑たちは、紅葉の季節が訪れ今ではすっかり鮮やかな夕日色に彩られている。きっとあっという間に冬が来るのだろう。
すぐ後ろから、同じように窓の外を眺め、秋之を背中から包み込み、ぎゅーっと抱きしめた。
「そうだよ? 秋之、今朝も布団全部掻っ攫ってくんだもん。俺、寒かった」
「噓でしょ! ほ、ほんと? ごめんねぇ……寝相悪くて。気をつけます」
「寒い日は温かいの飲みたくなるね」
「いいね! どんどん寒くなって来るよ~! ちなみに……今日さ、午後から雑貨見に行かない? 久しぶりにカフェでも寛ぎたいし、どう? 夏樹」
「買い物? いいよ、行こう。ついでに冬服も見ようかな」
「やった! それじゃ、午後から出掛けよ!」
嬉しそうな姿に、俺も笑みがこぼれた。
お昼は自宅で一緒にミートパスタとオニオンスープ、コーンサラダを食べ、ゆっくりした後、外出の準備を始めた。
秋之の作るパスタ、茹で加減が抜群なんだよな。俺は完全に胃袋を掴まれている。
「この長袖にジャケットじゃ寒いかな?」
「パーカーは? 俺ライトグレーのあれ、好き」
「じゃあ、それにしよっかな~! ありがとう!」
「そう言えば、秋之、何買う予定なの」
「マグカップ欲しくてさ。ずーーっと長年使ってたの、割れちゃったから。夏樹も一緒に買わない? 冬が来たらたくさん使いそうだし」
お揃いのアイテムか。
いいな。
二人でホットココアを飲みながら、ぽかぽかと過ごす日常を想像して、俺はめちゃくちゃ心が踊った。
ショッピングモール
照明でフロアが満遍なく照らされている。休日ということもあり、それなりの人混み。カップルや子連れの来客が多い。
「最上階、映画館だからかな、人多いね!」
「結構広いんだな」
俺たちはエスカレーターで上階を目指した。
「ショップは五階だよ。ちょうどフロアの向かいが服屋のハズだから、そっちも見てみよ!」
通路の一角にある雑貨屋。
初めて来店したが、秋之は休日に何度か訪れている様子だった。
店舗の入り口にはバス用品から、食器類、オシャレなカトラリーが。生活雑貨を中心に扱っているようだ。
棚にはガラスカップ、マグカップがズラリと並んでいる。
「良い感じの、あるといいなぁ」
秋之は目をキラキラさせ、夢中になりながら一点ずつ商品を手に取る。
「これ柄オシャレ! でもこっちも持ちやすくて捨てがたい!」
落ち着いたベージュ色のマグカップ、透き通った透明なティーカップを交互に眺めている。
一つ手に取ってみたが、うん。デザインも様々で俺も絶対迷っちゃうかも。
あ、そういえば、コースター買いたいんだった。
近くにあるだろうか。俺は周りを見渡す。
ちょうど、棚の真向かいのテーブルにズラリと並べられていた。
「コースターって素材いろいろあるんだな」
取っ手の部分の色違い、秋之がピンク、俺がグリーンのシンプルなデザインのマグカップを買った。
コースターはお揃いのもの。木製で、とてもあたたかみがある。
「ふふふ、これで僕の予定はおわり。次は冬服見に行こうよ!」
とても楽しそうな秋之の様子を見ていると、俺も嬉しくなる。先に早く、早くとメンズ衣料用品を取り扱うショップの前で手招きをしている。
「ねぇねぇ、これ似合いそうじゃない? 温かそうな毛糸のトップスとかさ! あ! 夏樹ならこれ、ロングコートとかも似合いそう! スタイルがいいからなぁ!」
店頭のマネキンが着用しているアウターやトップスを、やっぱりキラキラした瞳で、次々と見つめる秋之。
「落ち着いて! 時間はあるんだから!」
俺は笑いながら秋之の肩をゆさゆさと揺らした。
「テンション上がっちゃう……! 僕も一緒に選んであげるよ」
「それは心強い。去年、冬服結構処分しちゃったから、新しいのが欲しくてさ」
「えー、捨てちゃったんだ、部屋着のお下がり、欲しかったなぁ」
「ギリギリ、秋之と出会う前だったからな、ごめん」
「よし、じゃあ、新しいの! 買おう!!」
その後、秋之プロデュースによるチョイスで何度も試着室で衣装チェンジをした。
「スエード生地のハットもいいな、ニット帽もいいけど、キャップも好き……! 夏樹は白が似合うと思うんだよなぁ! ホワイトのスウェットもいいし、タートルネック……あっ! ノーカラーのジャケットも……好きぃい……!!」
もう、秋之の勢いが止まらない。
その後、互いに服を選び合い、休日を満喫。
帰りは通り道にあるカフェで秋之はホットレモンティーを、俺はカフェラテを飲みながら、ゆっくり過ごした。
そして肌寒くなる夕方の街の中を、手を繋ぎながら、俺たちはもう少しだけ、デート。
「秋之、手袋とかも、買う?」
「まだ! 次のデートにとっておく!」
そう言うと、秋之は繋いだ手を引き、目の前を進んでいく「向こうも行ってみよう!」と、冬が待ち遠しそうな街の温かい灯りと人混みの中を、俺たちは駆けて行った。
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