【R18】恋人CONTRACT

ichientei.U

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20「三か月」

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 先日、たくさん身体を重ねてヘトヘトになったばかり。
 デスクワーク中に、ふっと脳裏を過ってしまう事があって、ドキッとしてしまう。

 そんな日中を思い出し甘い回想に浸りながら、秋之と一緒に帰宅中。
 今、丁度駅前で横断歩道の前で止まっているところだ。

 隣に本人がいるのに。俺何考えて…。

「あ、あのさぁ……今、いい?」

 秋之がいつもと違う声色で俺に問いかけた。

「ん? なに?」

「夏樹!!ごめんなさい!!!」

 突然路上で謝罪してきた秋之。
 通行人の視線が一瞬集まる。
 俺は呆気に取られた。そして暫く、考えた。

 謝られるようなことなんかあったっけ?

「?」

 はて……?

「僕たちさ、初めてしたとき……」

「えっ」

「ほら、同期飲みの帰りに夏樹の家で……」

「……」

 あの時の事、今でも鮮明に思い出せてしまう。
 少し鼓動が高鳴るのを誤魔化すように、ドサクサに紛れてとり合えず言葉を発してみて動揺を、隠す。

「何か、あった?」

「……僕、中出し……したでしょ……」

 あ、その事?

「こないだ俺だって……秋之にナマで挿れて中出し……しちゃったよ」

 外でこんな話、するか?

「そう、そうでしょ!」

「うん」

「うんって……だからさ、行こう!!」

「どこへ?」





 という経緯があった訳だが。

 秋之が勧めてきたのは――。

「HIV検査か」

 もしかしてあの日以降ずっと悩んでたのかな。
 俺が暫く出張で居なかった分、タイミング見計らってたのか。
 独りで何か悩ませてしまっていた……のかもしれない。



 俺は自宅のソファに腰掛けながら、スマホを眺めて情報を検索していた。

 「いくら我慢できなかったとはいえ…」と訴えてきたのだから、驚いた。
 正直、異性と付き合っていた頃はゴムは勿論していた訳だけど。
 いざ自分がその『挿れられる』側も経験し、身を挺して分かることも多い。

 秋之がプライベートで送ってくれたメッセージに添付されたHIV検査ページのURLをタップして確認する。

 二人で行こうって誘ってくれたの、率直に言って、かなり嬉しかった。
 あ。あの日以降、かなりの頻度でゴム着け始めたのもそういうことか。

 俺とナマでやったの、あんまり気持ちよくなかったのかなって内心気にしてたんだけど、今回のことで、いろいろと腑に落ちたかも。





 そして、検査日当日。

 検査病院は、案外近隣にあった。
 大規模検査とかもあるんだ。俺、ほんと何も知らなかったんだな。
 とりあえず待ち合わせ場所に到着した。
 駅前の開けているエリア、そこにはベンチがいくつかあるのだがそこに座りながら木陰でのんびり待つことにした。そよ風が気持ちいい。



 午前、十時二分。

 この場所、俺と秋之が一緒に降車した駅、つまり俺達の最寄り駅だ。
 逆方向の改札口はあまり散策したことがなかったが、見慣れない店舗や建物、ビルがあって、周辺を眺めているだけでとても新鮮だった。
 仕事始めてから余裕あまり無かったもんな。

 まだ彼は来ていないようだ。
 辺りを見回す。
 もしかしたら、俺たちのように会場へ向かうために待ち合わせてる人たちって、居るのかな。
 一度気になってしまうと、全員がそうなのでは、という錯覚に陥りそうになる。

「ごめんーー! お待たせしました!」

 秋之の声。

「あ……え!?」

 わ、普段着、若! 若いな!?
 キャップにTシャツ、だぼっとした上着でちょっとお洒落なジーンズとスニーカー。
 ぱっと見、ちょっと……いやかなり、かわいい。

 普段、殆どスーツ姿しか見ていない俺、オフのギャップに、かなり萌えた。
 俺の格好、落ち着きすぎてないか?
 無難にシャツとアンクルパンツなんだけど。

「おはよう」

「迷っちゃってー! ゴメンゴメン!」

「いつもと雰囲気全然違うからびっくりした」

「休日くらいは好きな格好したいからね~! むふふ~ん!」

 鼻高々に仁王立ちする秋之。
 オフィスで見る秋之は穏やかで面白いし頼れる存在だけど、こうして普段の姿を見ていると、変わらないというか、地の性格なんだろうなぁと改めて思う。

 俺と会う前はどうやって過ごしてたんだろう。

「予約時間そろそろだけど、行く?」

「うん、行こ~!」

 こうして休日に秋之と外出するのって、初めてかも。
 今まで所謂『お家デート』で一緒に映画鑑賞したり、昼食作ったり、ちょっと密着してみたり、してみなかったり……はしていた。

 ちょうど、先週一緒にホラー映画を観賞したっけ。
 ずっと観賞したかった映画のレンタルが開始していたので一緒にディスプレイをテレビに接続、菓子を一緒につまみながら、まるで子供みたいに画面に釘付けになっていたのだが。
 お互い、恐怖で怯え震え、固まってしまってたという。
 二人で眉間にシワを寄せながら観賞してしまった。
 無理なシーンは「あ、ムリムリムリ」と秋之が目を閉じていたし、俺は無の境地だった。
 今思うとシュールな絵面で笑えて来る。

「ふふっ」

「ん? 何思い出し笑いしてるの!?」

「後で……教える……ふ……ふふ」
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