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14「何もしない土曜日」
しおりを挟む翌日。
土曜日。
日差しがカーテンの隙間から差し込む。
街はいつものように騒々しく、車の走行音や人々が行き交う足音が響いている。
俺達は、目覚めてはいたが互いにずーっとベッドの上に全裸で寝そべって会話を交わしていた。
二人で天井を見上げる。
改めて思った。
目覚めたら、隣に北岸が、居る。
やっぱり現実なんだ、これ。
「……そう言えば、今日って彼女とデートじゃないのか。昨日、言ってたじゃん」
「ん? ……あー! 同期飲みで話した子のこと? 彼女じゃないよ、知り合いの妹の話をしただけ。あれ? やだなぁ、宮田君もしかして、酔ってた?」
「そう、か?」
酔ってたのか? 俺も? まさか。
俺達、互いに酔ってた勢いであそこまで……って、こと?
まぁ、ある意味、北岸には『酔わされた』のかもしれないが。
「は~、宮田君のイッた時の気持ちよさそうな顔、忘れられないなぁ」
「うっ」
「ねぇねぇ、今度、僕も潮吹きしてみたい!」
横から、北岸が脇腹をツンツンしてきた。
「は、はぁ!? してみたい! でできるモンなのか、というか、あれは潮吹きなの」
もしそうだとしたら、俺の人生初体験がもう一つ増えるワケだが。
「いや~……潮吹きでも、おしっこでもいいの。凄かったねぇ……なんかさ、もっと極めたくなるっていうか、ほんと可愛いっていうか」
語り始めた。やめろ。
顔が熱くなってきた…。
「あーもう! うるさい!! 二日酔いは黙って休んでおけ! 今日は安静だから!」
「は~い。宮田くんも体、大丈夫? 今日はさ、お互いゆっくり休も~!」
ベラベラと、本当に調子がいいやつ!
俺は……身体が……また……欲しそうにしてる……けど。
「……」
「……」
ほら、無言になってしまった。
でもそれがどこかリアルだな、と感じた。
「宮田君」
「ん?」
「僕の、カノジョになってください」
きた。
また唐突に来た。
このシチュエーション、学生の時以来かもしれない。
その時は『カレシ』だった訳だけど。
ベッドの隣で北岸の視線を感じながら俺は天井を見つめていたが、互いに向き合うようにして顔を見合わせ、俺は応えた。
「…………はい」
「むふう~~~~~んっっ!!! ほんとに!? やった……!!」
感激してる。分かりやすい。目がキラキラしてる。なんなら北岸の周りのオーラすらもキラキラしてるような気がした。
「再会してから正直気になってたし。理由はたくさんあるけど、何より……」
「なにより?」
「北岸のこと、もっと知ってみたい。俺のこと、好いてくれてるし、大事にしたいなって」
うわ、少し声が震える。
「ふふ。僕もだよ、宮田君の全てを知りたい。同じ部署で再会するんだもん、びっくりしちゃった。すごく……嬉しい!」
ニッと俺に笑いかけてみせた。
「ほんとにカノジョでいいの? ……俺、カレシになっちゃうかも……よっ!!」
北岸の腹部に掛っているシーツをばさっと剥ぎ取り、内腿に手を忍び込ませる仕草をして脅かす。
「わーっ! ちょっと、あははは! くすぐったいって!! ~んくくく……っ!」
「おらおらおら! あれ、勃ってませんか? 朝勃ちですか?!」
「ちがーう! でも半分そうー!」
「そうなのかい!」
括れを擽り合ったり、胸部を挑発的になぞってみたり。互いに牽制し合う。なんだこれ。
あ、これ、あれだ。あれです!
テレビでよくある動物特番で子犬同士がじゃれ合うやつと同じ既視感、みたいな。
この日、俺たちが共にする空間は笑い声が絶えなかった。
結局、今日も引き籠りになってしまったけど、一人じゃないのがとにかく嬉しかった。
これからも、よろしく。
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