【R18】恋人CONTRACT

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2「再会とお弁当」

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 休憩時間。

 午後、一時六分。


 午前中に総務部の君津さんに案内されたばかりの休憩ルームへ。
 うん、めちゃくちゃ広い。

 総従業員数が多いので当然と言えば当然なのだが。
 ルームへの入り口は広く、開放的。
 目の前は全面ガラス張りで向かい側のビルが建ち並んでおり、遠くまで見渡せる。
 今の時間はちょうど日差しがあり、とても気持ちがいい。
 下方向へ視線を向けると、交差点で信号待ちをする人々、車が行き交う道路、角を曲がった辺りに都内には珍しく自然豊かな公園が見えた。

 昼、どうしよう。
 朝ドタバタしてて全く考えてなかった。
 もうコーヒーでいいか。

 自動販売機でコーヒーの微糖を見つけると、人差し指でポチッとボタンを押そうとした。

「あっ、だめですよ。ちゃんとお昼ご飯食べないと」

 横の別の自販機で緑茶のボタンを押すその人。

 ガコン!

 彼は屈んで五百ミリリットルの緑茶を手に取ると、こちらに視線を送りながら顔を上げて見せた。

 あ。やっぱり。

「北岸、だよな? ほら、研修で一緒だった」

「覚えててくれてる! 凄い記憶力! あんなに人数が多かったのに!」

 北岸はにこっと微笑んだ。

「僕も覚えてるよ、宮田君でしょ。改めて、宜しく!」

「ああ、こちらこそ」

 ディスプレイの向こうから俺を覗き込んでいたのは、彼だった。
 まさか、既に面識のある同期とこうして同じ部署に配属されるとは思ってなかった。
 ちょっと安堵したというか、一人じゃないんだという気持ち。
 これから共に競い合うライバルとなるであろう同僚が、彼で本当に良かったと心から思えた。
 更に気を引き締めねばならない。

「お昼はいいの?」

 北岸は、向こうの空いたテーブル席を指差した。

「そんなに腹も減って無いし、いいかなぁ。北岸は?」

 缶コーヒーを買い、俺達は休憩室中央にあるテーブル席に向かう。
 辺りを見回すと、他の休憩中のスタッフもたくさんいた。

 賑やか。しかもこの椅子、座り心地がいい。

「僕はお弁当ですよ」

「そういや、俺より早くオフィスにいたよな?」

「うわ、バレてた。そうなんですよ。僕が現場に来たのは二日前なので」

「弁当は自作? よく作れるな、偉すぎる」

「作ろうと思えば作れるんだよ! やってみないと出来ないんですよー宮田君!」

 ほわっとした雰囲気の彼と談笑し、休憩時間が終わるまでずっと話し込んでしまった。

 人と話すって、楽しい。

 顔がほころぶ。
 研修の頃、同じグループだった他のみんなはどうしてるのかなぁ、なんて。

 この日は、人事関連の手続きが主で、他に自己紹介、基本的な業務の流れの説明などであっという間に定時になってしまった。
 覚えること、いっぱいだ。がんばろう。
 新しいことばかり。
 置いてけぼりにならないようにしないと。
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