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1「新しいはじまり」
しおりを挟む都会の街並み。
駅前を行き交う人々。
太陽光を反射するビル群に青空が映える。
俺は、宮田夏樹。
今日から、ようやく社会人。
入社式を終え、研修と大忙しだったがようやく、部署へ配属され、実践的な業務に携わることができるようになる。
やっと、ここまで来た。
初日は総務部の社員からオフィス内、共有スペース、備品や各ルームの説明を聞く。
物腰穏やかな人だ。
「以上かな、はい。一通りの説明は終わりですが、何か質問はありますか?」
爽やかな風が吹いているようだ。
キラキラの笑顔で、君津さんは俺に聞いてきた。
「いえ、今のところは大丈夫そうです。ありがとうございます!」
「何フロアも別れてるからねーここ。初日から覚える事がいっぱいあるかもしれないけど、何か分からない事があればいつでも呼んでくださいね。内線でも社内のチャットでもよいので」
「はい!」
俺は会釈すると、君津さんと所属する部署へ向かった。
エレベーターで十一階へ移動。内装が洒落ていて、新鮮に感じた。
そうだ、考えたら面接……、社員研修以来か。
「坂見さん、いますか? 宮田さんですよー」
本部のオフィスがある階にそのまま招かれる。
辺りを見渡す。ざっと、三十人くらいはいるだろうか。
開発本部の営業担当となった俺は、初めて現場の空気を感じていた。
恐らく、取引先と通話をしているのであろう上司。
プレゼンテーションの書類作成をしている従業員から、デスクでオンラインミーティングをしている社員がいたりと、様々だ。
あれ。
見覚えがある人が。いや、人というか、髪型なのだが。
あの茶髪の猫っ毛。
俺は、そのデスクのディスプレイの向こう側に着席し、ひょこっと覗き見ている彼と目が合った。
「ん?」
確か、研修のレクリエーショングループで一緒だった……、そうだ、北岸。
彼は動揺したように目を泳がせ、あたふたした様子で俺から視線を逸らした。
うわ、凄い動揺してる。
「いやぁ、悪い、取引先とやりとりが伸びてしまって。初めまして、課長の坂見です。そしてこちらが」
「本部エンジニアの瀬良です。営業の方とも共有する機会が何かと多いので、先にご挨拶だけでもと思いまして! よろしく!」
俺が会釈すると、そこから君津さんはバトンタッチ、宜しく。といった感じで、総務部へ戻ったようだった。
坂見課長は僕のデスクまで案内したあと、また直ぐに会議の予定で部署を後にしてしまった。
それからは、隣の席の先輩から業務についての説明。瀬良さんもすぐ横で不明点にすぐ応えられるように暫く居てくれた。
学生時代のブラックなバイト先とは大違いなんですけど!
俺、感激してる。
瀬良さんはエンジニアチームのリーダーで、週に一度の定例会議で情報交換や進捗の確認を俺達と行うのだそうだ。
一日でも早く、前に進みたい。
仕事一直線で生きていく。俺はそんな気持ちで溢れていた。
そう、彼と出会うまでは。
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