上 下
13 / 48

弟side1

しおりを挟む
姉に婚約の話が来たと父から聞かされた。
姉はそんな人がいるという素振りを全然見せなかったので、2人で驚いたものだ。
聞けば小さい頃からよく遊んでいた彼。
ああ、ただの友達だと思っていたけれど俺の知らない所で2人はそう言う関係だったのかとショックを受けた。
婚約話に最初は何故か姉も驚いていたが、彼と婚約者として対面すると決まった時には少し嬉しそうにしていた。
姉が幸せならば問題無い。


珍しく姉が怒っているようだった。普段は滅多な事では怒らない穏やかな姉。
・・・確か今日は彼と会っていたはずなんだが。
「姉さん今日は彼と会っていたんだよね?久し振りに会ってどうだった?」
そう聞いた俺に姉は今まで見せた事の無い歪んだ笑みを見せた。
「ええ、会っていたわ。久し振りに会ってとても変わっていたわ・・・見た目も中身もね」
それだけ言うと姉は自分の部屋へと戻って行った。
・・・とても婚約者に会って喜んでいる様子では無かった。

それからしばらく経ったある日俺は姉に呼び出された。ここは街の教会。
・・・結婚式の下見だろうか?
俺は恐る恐る教会の扉を開くするとそこには姉と神官の姿が・・・。
「姉さん」
俺が声を掛けると楽しそうに微笑む姉がいた。うん、やっぱり結婚式の話をしに来たんだなとその時は思ったのに・・・!
「何なんだ!このふざけた契約書」
俺は姉が婚約者から突き付けられた契約書を見ながら声を荒げた。
「ここは教会なんだからそんなに声を荒らげてはダメよ」
「!何で姉さんはそんなに冷静なの!」
あまりにも普段通りの姉に思わず怒鳴ってしまった。
「こんな婚約今すぐ破棄するべきだよ!姉さんを馬鹿にし過ぎている!」
何なんだ一体!何だこの契約書!
「彼の方には私と婚約破棄する意思が無いから・・・私の方から婚約破棄を言い出すと莫大なお金を彼に払わなければならない・・・折角喜んでいる両親を驚かせたくは無い・・・このまま彼と結婚するわ」
どんな気持ちでそんな事を言っているんだと姉の顔を見れば・・・姉はとても楽しそうに微笑んでいる。
「姉さん、何か楽しそうな事を考えているんじゃないの?」
その時姉は明確に答えなかったが、俺には姉があの男に復讐しようとしている事が分かった。
「俺はなんでも手伝うよ」
それだけ言うと姉はとても嬉しそうに笑ってくれた。
それから神官の立ち会いの元あのふざけた契約書は正式な契約書となった。俺があの男の家をいずれ継ぐ事もその時正式に書面にした。

姉とあの男の結婚式。俺達の両親もあの男の両親もとても嬉しそうだ。
ウェディングドレス姿の姉は今まで1番綺麗だったが隣にあの男がいるのが我慢ならなかった・・・。
本当なら好きな相手とこの場所に立つはずだった姉。何でこんな事になったんだ!
あの男はこんなに綺麗な姉を見て何も思わないのだろうか。
少しでも罪悪感があるなら!今からでもこの結婚を取り止めにしてくれ。
俺のそんな願いも虚しく姉はあの男の元に嫁いでしまった。
絶対に幸せになれるはずも無い相手の所に・・・。


姉が嫁いで暫く経ってある噂が流れ始める
結婚したばかりの侯爵が新妻を放ったらかしにして家には帰っていないと言う噂。
それはそうだ、元々そう言う契約で姉はあの男に嫁いだのだから。
あの男がどれだけ愚かな男なのか周りの奴らに言ってやりたかったが姉は喜ばないだろうと思い何とか耐えた。
姉から外ではどんな風に噂が流れているか教えて欲しいと手紙が来た。
少々気は引けたがこの手紙を読んで姉が帰って来てくれたらいいと思い全て正直に書いた。
結果姉が戻って来る事にはならなかったが感謝の手紙が届いた。
姉がどうやって仕返ししようとしているのか分からないけど、取り敢えずは1発殴ればいいと思うんだよね。俺は。
しおりを挟む
感想 441

あなたにおすすめの小説

彼の過ちと彼女の選択

浅海 景
恋愛
伯爵令嬢として育てられていたアンナだが、両親の死によって伯爵家を継いだ伯父家族に虐げられる日々を送っていた。義兄となったクロードはかつて優しい従兄だったが、アンナに対して冷淡な態度を取るようになる。 そんな中16歳の誕生日を迎えたアンナには縁談の話が持ち上がると、クロードは突然アンナとの婚約を宣言する。何を考えているか分からないクロードの言動に不安を募らせるアンナは、クロードのある一言をきっかけにパニックに陥りベランダから転落。 一方、トラックに衝突したはずの杏奈が目を覚ますと見知らぬ男性が傍にいた。同じ名前の少女と中身が入れ替わってしまったと悟る。正直に話せば追い出されるか病院行きだと考えた杏奈は記憶喪失の振りをするが……。

番(つがい)はいりません

にいるず
恋愛
 私の世界には、番(つがい)という厄介なものがあります。私は番というものが大嫌いです。なぜなら私フェロメナ・パーソンズは、番が理由で婚約解消されたからです。私の母も私が幼い頃、番に父をとられ私たちは捨てられました。でもものすごく番を嫌っている私には、特殊な番の体質があったようです。もうかんべんしてください。静かに生きていきたいのですから。そう思っていたのに外見はキラキラの王子様、でも中身は口を開けば毒舌を吐くどうしようもない正真正銘の王太子様が私の周りをうろつき始めました。 本編、王太子視点、元婚約者視点と続きます。約3万字程度です。よろしくお願いします。  

私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください

迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。 アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。 断るに断れない状況での婚姻の申し込み。 仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。 優しい人。 貞節と名高い人。 一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。 細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。 私も愛しております。 そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。 「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」 そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。 優しかったアナタは幻ですか? どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。

前世の旦那様、貴方とだけは結婚しません。

真咲
恋愛
全21話。他サイトでも掲載しています。 一度目の人生、愛した夫には他に想い人がいた。 侯爵令嬢リリア・エンダロインは幼い頃両親同士の取り決めで、幼馴染の公爵家の嫡男であるエスター・カンザスと婚約した。彼は学園時代のクラスメイトに恋をしていたけれど、リリアを優先し、リリアだけを大切にしてくれた。 二度目の人生。 リリアは、再びリリア・エンダロインとして生まれ変わっていた。 「次は、私がエスターを幸せにする」 自分が彼に幸せにしてもらったように。そのために、何がなんでも、エスターとだけは結婚しないと決めた。

振られたから諦めるつもりだったのに…

しゃーりん
恋愛
伯爵令嬢ヴィッテは公爵令息ディートに告白して振られた。 自分の意に沿わない婚約を結ぶ前のダメ元での告白だった。 その後、相手しか得のない婚約を結ぶことになった。 一方、ディートは告白からヴィッテを目で追うようになって…   婚約を解消したいヴィッテとヴィッテが気になりだしたディートのお話です。

陛下を捨てた理由

甘糖むい
恋愛
侯爵家の令嬢ジェニエル・フィンガルドには、幼い頃から仲の良い婚約者がいた。数多くの候補者の中でも、ジェニエルは頭一つ抜きんでており、王家に忠実な家臣を父に持つ彼女にとって、セオドール第一王子との結婚は約束されたも同然だった。 年齢差がわずか1歳のジェニエルとセオドールは、幼少期には兄妹のように遊び、成長するにつれて周囲の貴族たちが噂するほどの仲睦まじい関係を築いていた。ジェニエルは自分が王妃になることを信じて疑わなかった。 16歳になると、セオドールは本格的な剣術や戦に赴くようになり、頻繁に会っていた日々は次第に減少し、月に一度会うことができれば幸運という状況になった。ジェニエルは彼のためにハンカチに刺繍をしたり、王妃教育に励んだりと、忙しい日々を送るようになった。いつの間にか、お互いに心から笑い合うこともなくなり、それを悲しむよりも、国の未来について真剣に話し合うようになった。 ジェニエルの努力は実り、20歳でついにセオドールと結婚した。彼女は国で一番の美貌を持ち、才知にも優れ、王妃としての役割を果たすべく尽力した。パーティーでは同性の令嬢たちに憧れられ、異性には称賛される存在となった。 そんな決められた式を終えて3年。 国のよき母であり続けようとしていたジェニエルに一つの噂が立ち始める。 ――お世継ぎが生まれないのはジェニエル様に問題があるらしい。

いくら時が戻っても

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
大切な書類を忘れ家に取りに帰ったセディク。 庭では妻フェリシアが友人二人とお茶会をしていた。 思ってもいなかった妻の言葉を聞いた時、セディクは――― 短編予定。 救いなし予定。 ひたすらムカつくかもしれません。 嫌いな方は避けてください。 ※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。

人生の全てを捨てた王太子妃

八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。 傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。 だけど本当は・・・ 受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。 ※※※幸せな話とは言い難いです※※※ タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。 ※本編六話+番外編六話の全十二話。 ※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。

処理中です...