上 下
10 / 48

10

しおりを挟む
今日はとてもいいお茶会日和だわ。
私はお客様を迎えながら心ここに在らずといった様子で隣に並ぶ夫を横目でチラリと見た。
今すぐにでも彼女の所に行って問い詰めたいのでしょうね・・・。
分かるわよ、その気持ち。ふふふ。
私のその微笑みを見て招待された客達は仲が良くて羨ましいわぁ。あんなに微笑んで余程幸せなのねぇ。と次々に口にする。
そんな言葉を聞いて私はまた楽しそうに微笑んだ。みーんな思うツボ。

このお茶会の招待客は殆どが前侯爵夫婦と縁があった方たち。まぁ、若い夫婦のお披露目のようなものだ。
でも、すこーしだけ私が自ら選んだお客様達もいる。
・・・この方達ならとっても話が合うと思うのよ。ふふふ。
一見和やかに進むお茶会。その一角に少し空気の重いテーブルが3つ程・・・。
あそこだわ!私が呼んだお客様達。
そこには上は私の親のような年齢の方から下は私と同じかそれより少し下の年齢の方まで1テーブル6人ほど計18人。
私は隣で難しい顔をしている夫を連れてその一角へと向かう。
「(いつまでもそんな顔してないで)しっかり挨拶して下さいね」


「皆様、本日はようこそお越し下さいました。・・・こちらは私の妻でございます」
夫がまあまぁそれなりに挨拶をした。
私は夫に紹介され皆様にご挨拶する。
「皆様、わたくし1度皆様とゆっくりお話してみたかったのです!だからわたくしが自ら選んでご招待させて頂きましたの!」
満面の笑みでそう言って夫の方を見る。
「あなた、こちらのご婦人方の旦那様はみーんな・・・ある舞台女優さんに傾倒していらっしやるのよ・・・・・・・・・貴方と同じですわね」
そう言って私はご婦人方の方を見る。
するとご婦人方達は夫に厳しい目を向けた。その視線を一身に受けて夫の顔色は優れない。

そう、ここにご招待したご婦人方は夫が愛してやまない彼女と同じ女性を愛していらっしゃる方ばかり。
「・・・・・・まだ新婚ですのに・・・貴方も大変なのね」
状況を察して下さった1人のご婦人が声を掛けて下さる。
私は答えず困ったように微笑むだけに留めておく。
「ど、どう言う事なんだ・・・」
夫が呟くように言った。
「・・・どう言うって、ねぇ。そう言う事ですわ」
夫の顔を見る。
「貴方の彼女さんが大好きらしいですわ・・・こちらのご婦人方の旦那様達も。良かったですわね、皆様から愛される可愛らしい彼女さんで」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

利用されるだけの人生に、さよならを。

ふまさ
恋愛
 公爵令嬢のアラーナは、婚約者である第一王子のエイベルと、実妹のアヴリルの不貞行為を目撃してしまう。けれど二人は悪びれるどころか、平然としている。どころか二人の仲は、アラーナの両親も承知していた。  アラーナの努力は、全てアヴリルのためだった。それを理解してしまったアラーナは、糸が切れたように、頑張れなくなってしまう。でも、頑張れないアラーナに、居場所はない。  アラーナは自害を決意し、実行する。だが、それを知った家族の反応は、残酷なものだった。  ──しかし。  運命の歯車は確実に、ゆっくりと、狂っていく。

魔術師のご主人様

夏目
恋愛
「君との婚約を破棄したい」 大好きな婚約者のマリオは、突然そう言った。隣には異界からやってきた女がいる。彼女のことが好きになってしまったというマリオ。けれど、そんなの信じられないよ。 (小説家になろう様でも投稿しています)

ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~

柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。 その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!  この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!? ※シリアス展開もわりとあります。

【完結】夫もメイドも嘘ばかり

横居花琉
恋愛
真夜中に使用人の部屋から男女の睦み合うような声が聞こえていた。 サブリナはそのことを気に留めないようにしたが、ふと夫が浮気していたのではないかという疑念に駆られる。 そしてメイドから衝撃的なことを打ち明けられた。 夫のアランが無理矢理関係を迫ったというものだった。

好きな人と友人が付き合い始め、しかも嫌われたのですが

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ナターシャは以前から恋の相談をしていた友人が、自分の想い人ディーンと秘かに付き合うようになっていてショックを受ける。しかし諦めて二人の恋を応援しようと決める。だがディーンから「二度と僕達に話しかけないでくれ」とまで言われ、嫌われていたことにまたまたショック。どうしてこんなに嫌われてしまったのか?卒業パーティーのパートナーも決まっていないし、どうしたらいいの?

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

フランチェスカ王女の婿取り

わらびもち
恋愛
王女フランチェスカは近い将来、臣籍降下し女公爵となることが決まっている。 その婿として選ばれたのがヨーク公爵家子息のセレスタン。だがこの男、よりにもよってフランチェスカの侍女と不貞を働き、結婚後もその関係を続けようとする屑だった。 あることがきっかけでセレスタンの悍ましい計画を知ったフランチェスカは、不出来な婚約者と自分を裏切った侍女に鉄槌を下すべく動き出す……。

処理中です...