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お義父様、お義母様。
結婚式では慌ただしくなかなかお話出来ませんでしたのでゆっくりお話させて頂きたいのです。1度こちらに遊びに来ては頂けないでしょうか?
こちらのお家のしきたりなど教えて頂けたらと思っております。
折角ご縁が出来ましたので是非仲良くして頂きたいのです。
主人共々お2人に来て頂ける事を楽しみにしておりますっと、うん。こんなもんかな?
私は夫の両親への手紙を読み返す。
あの馬鹿のやっている事を知っていたら私からの誘いは断れないでしょう。
私は手紙を封筒に入れる。

夫と結婚して早いもので1ヶ月が経とうとしていた。屋敷の使用人達とはもうすっかり打ち解けた。皆気のいい人達ばかりで今では夫と私の心配をしてくれている。
・・・それもそうだろうこの1ヶ月で夫が屋敷に帰って来たのは5日程。と言っても一緒に食事する訳でもなく自分の部屋へ入って暫くしたら出ていく。・・・お金かしらね?
まぁ、仕事さえしてくれたら文句は無いわ。生活を保証するのも契約内容のうちですものね。
そんな事を考えていたら心配そうなメイドの顔が見えた。
「奥様、大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫よ。ちょっと考え事していだけ」
私の前にお茶を出してくれる。
「ありがとう」
私がそう言って微笑むと嬉しそうに彼女も笑った。
「それにしても旦那様も何を考えておられるのでしょうね。新婚である奥様を放ったらかしにして」
「・・・・・・貴方がそう言って怒ってくれるだけで嬉しいわ」
「奥様・・・」
「あらあら、そんな顔しないで。貴方は元気に笑っていてね」
そう言うと困ったような嬉しいような顔をして笑っていた。
メイドが部屋を出て行く。
・・・きっと彼女が言ってくれるでしょう。
奥様はとても良い方だ!旦那様は奥様を放っておいて他の女の所。このままじゃ奥様が可哀想!と。そしてまた使用人達の旦那様への株が爆下がりするわね。
ふん!当然でしょ!そもそも私は何も明言していない。噂は勝手に憶測で広まるものよ。
何も屋敷の中に限った事では無い。そろそろ外でも夫と私の噂が広まっているだろう。
侯爵は結婚したばかりなのに家に全然帰っておらず結婚する前から付き合っていた女とまだ続いている、と。
・・・うん、1つも嘘は無いわ。
でも外での噂、どういう感じで流れているか知りたいわね。


「奥様、お手紙が届いております」
そう言って執事が手紙を差し出す。
手紙は2通。先日出した夫の両親への手紙の返事、それと私の弟からの物。
まずは夫の両親からの手紙を読む。
私の誘いが嬉しい。準備などもあるだろうから半月先にこちらに来ると書いてある。
まぁ、息子の嫁に仲良くしたい、と言われ邪険にする親もそうそう居ないだろう。ましてやあのご両親は息子に早く結婚しろと言っていたのだし。概ね予想通りの内容だった夫の両親からの手紙はそこそこに、私は本命とも言える弟からの手紙を開ける。
弟には私が夫から契約結婚を申し込まれた事を全て伝えてある。
弟はいくら払ってでも婚約解消するべきだと言ってくれていたが、親に心配掛ける訳にはいかないと私がそれを押し切った。それならば俺は姉さんの手伝いをすると言ってくれた。我が弟ながらいい子だ。・・・弟も彼とは小さい頃よく遊んでいたから、慕っていた兄のような存在の男が姉にそんな仕打ちをする事が許せなかったようだ。・・・裏切られた気分になったのかも。彼との婚約を結構喜んでいるようだったし。契約結婚の話を知るまでは・・・だけど。

弟には外で私達夫婦がどのように言われているか調べて貰った。まぁ、調べるまでもなく結構な感じに広まってはいたようだ。
「旦那に見向きもされない可哀想な妻」
世間の私に対する目はそうらしい。
うーん、やっぱり夫の方が外に出でいるだけあって私への可哀想な女イメージが強いわね。まぁ、可哀想と思われてるだけまだましかしら?
不細工だから、愛嬌もないから、仕事も出来ないから当たり前だとか言われていたら屈辱だったけど・・・。いや、今でも十分屈辱的か。

よし、取り敢えず今はお義父様とお義母様のお迎え準備をしないとね。
あー、これから楽しくなりそう。


まずは夫にご両親が来ることを伝えないといけないわ。
彼女さんに手紙を書けばいいかしらね?
うちの旦那、1度家に返して下さいって。
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