4 / 17
4
しおりを挟む
「お嬢様はどうやらご婚約者様の事だけ忘れておられるようです」
昼間お嬢様のお友達のカトリーヌ様が来た時の事をご主人様に報告する。
「!何と!」
「まあ!」
ご主人様と一緒におられる奥様はとても驚いておられた。私とてあの場にいてまさかと思ったのである、お2人が驚かれるのも無理は無い。
「記憶が無いのであれば2人を結婚させるのは無理だな」
ご主人様がそう言うのを聞いて奥様は信じられないという顔をする。
「そんな!あの子はヘクターの事を慕っていたんですよ?わたくし達の事を思い出したのですからヘクターの事も思い出すかもしれませんわ、もう少し様子を見て決めましょう?」
「…そうだな」
その後3人で話し合った結果あまり急激に思い出すのはお嬢様の負担になるので自然に思い出すまでもう暫く様子を見ようと言う事になった。
「では失礼致します」
私はご主人様の部屋を出てお嬢様の部屋へと向かう。寝ておられる事は分かっているが、どうも半年前のあの日からお嬢様の呼吸を確認しないと不安でたまらない。
「もう、婚約破棄してもいいと思うのに」
誰もいない廊下で誰にも聞こえない位の小さな声で呟く。
お嬢様が目を覚まされた日、私は確実にお嬢様の婚約者であるヘクター様にお嬢様が目を覚まされた事を伝えた。しかしながら今日で1週間ヘクター様からは何の音沙汰も無い。
正直不信感でいっぱいである。本当にお嬢様の事を心配しておられたのなら直ぐにでも飛んで来るはずだろう、だがあの婚約者は……。
この半年お見舞いには来ていたが、それも月に1回程。これは絶対に少ないだろう。
口では心配だと調子のいい事を言っていたあの男の事を私は以前から嫌いだった。だから先程ご主人様がヘクター様との結婚は無理だと言った時とても嬉しかったが、まあそう上手くはいかないか…。
それに私がヘクター様の事を大嫌いでも確かにお嬢様はヘクター様を慕っておられたのだ。
お嬢様の部屋の前。軽くノックをして暫く待つが返事は無い。当然だもう寝ている時間たのだから。
私はそっと扉を開けてお嬢様の寝顔を覗き込む。胸が上下して呼吸をしているのが分かる。この半年毎日やっている日課。
お嬢様が目覚めたのだからもう辞めないといけないと分かってはいるのだがもう少し辞められそうに無い。大概心配性だ。
はだけた布団をしっかり掛け直し私はお嬢様の部屋を出た。
翌日目が覚めるといつものようにメアリーが朝のお茶の支度をしてくれていた。
「おはようございますお嬢様」
「おはよう」
いつものメアリーのように見えるが…。
「何か怒っている?」
私はメアリーに訊ねる。いつものように笑っているように見えるがやはり何処か不機嫌そうだ。じっとメアリーの顔を覗き込むとメアリーは1つため息をついた。
「お嬢様には敵いませんね」
そう言っていつもの笑顔に戻ったメアリーは私の前に一通の手紙を差し出す。
?またカトリーヌかしら?
差出人の名前を見るとそこにはヘクターと綴られていた。
「何故ヘクターが私に手紙を?」
私は頭の中にヘクターの事を思い浮かべる。
顔は分かる、分かるが…ほとんど話をしたことなど無かったはずなのに。そりゃ挨拶ぐらいはしただろうが…はっ!もしかして自分の婚約者の友達として相応しいか見に来るとか?
えー?ヘクターって奥さんを束縛するタイプ?
何だか素直にカトリーヌとの事祝福出来ないかも…そんな明後日の方向の心配をこの時の私はしていた。
昼間お嬢様のお友達のカトリーヌ様が来た時の事をご主人様に報告する。
「!何と!」
「まあ!」
ご主人様と一緒におられる奥様はとても驚いておられた。私とてあの場にいてまさかと思ったのである、お2人が驚かれるのも無理は無い。
「記憶が無いのであれば2人を結婚させるのは無理だな」
ご主人様がそう言うのを聞いて奥様は信じられないという顔をする。
「そんな!あの子はヘクターの事を慕っていたんですよ?わたくし達の事を思い出したのですからヘクターの事も思い出すかもしれませんわ、もう少し様子を見て決めましょう?」
「…そうだな」
その後3人で話し合った結果あまり急激に思い出すのはお嬢様の負担になるので自然に思い出すまでもう暫く様子を見ようと言う事になった。
「では失礼致します」
私はご主人様の部屋を出てお嬢様の部屋へと向かう。寝ておられる事は分かっているが、どうも半年前のあの日からお嬢様の呼吸を確認しないと不安でたまらない。
「もう、婚約破棄してもいいと思うのに」
誰もいない廊下で誰にも聞こえない位の小さな声で呟く。
お嬢様が目を覚まされた日、私は確実にお嬢様の婚約者であるヘクター様にお嬢様が目を覚まされた事を伝えた。しかしながら今日で1週間ヘクター様からは何の音沙汰も無い。
正直不信感でいっぱいである。本当にお嬢様の事を心配しておられたのなら直ぐにでも飛んで来るはずだろう、だがあの婚約者は……。
この半年お見舞いには来ていたが、それも月に1回程。これは絶対に少ないだろう。
口では心配だと調子のいい事を言っていたあの男の事を私は以前から嫌いだった。だから先程ご主人様がヘクター様との結婚は無理だと言った時とても嬉しかったが、まあそう上手くはいかないか…。
それに私がヘクター様の事を大嫌いでも確かにお嬢様はヘクター様を慕っておられたのだ。
お嬢様の部屋の前。軽くノックをして暫く待つが返事は無い。当然だもう寝ている時間たのだから。
私はそっと扉を開けてお嬢様の寝顔を覗き込む。胸が上下して呼吸をしているのが分かる。この半年毎日やっている日課。
お嬢様が目覚めたのだからもう辞めないといけないと分かってはいるのだがもう少し辞められそうに無い。大概心配性だ。
はだけた布団をしっかり掛け直し私はお嬢様の部屋を出た。
翌日目が覚めるといつものようにメアリーが朝のお茶の支度をしてくれていた。
「おはようございますお嬢様」
「おはよう」
いつものメアリーのように見えるが…。
「何か怒っている?」
私はメアリーに訊ねる。いつものように笑っているように見えるがやはり何処か不機嫌そうだ。じっとメアリーの顔を覗き込むとメアリーは1つため息をついた。
「お嬢様には敵いませんね」
そう言っていつもの笑顔に戻ったメアリーは私の前に一通の手紙を差し出す。
?またカトリーヌかしら?
差出人の名前を見るとそこにはヘクターと綴られていた。
「何故ヘクターが私に手紙を?」
私は頭の中にヘクターの事を思い浮かべる。
顔は分かる、分かるが…ほとんど話をしたことなど無かったはずなのに。そりゃ挨拶ぐらいはしただろうが…はっ!もしかして自分の婚約者の友達として相応しいか見に来るとか?
えー?ヘクターって奥さんを束縛するタイプ?
何だか素直にカトリーヌとの事祝福出来ないかも…そんな明後日の方向の心配をこの時の私はしていた。
59
お気に入りに追加
2,978
あなたにおすすめの小説
【完結】名ばかり婚約者だった王子様、実は私の事を愛していたらしい ~全て奪われ何もかも失って死に戻ってみたら~
Rohdea
恋愛
───私は名前も居場所も全てを奪われ失い、そして、死んだはず……なのに!?
公爵令嬢のドロレスは、両親から愛され幸せな生活を送っていた。
そんなドロレスのたった一つの不満は婚約者の王子様。
王家と家の約束で生まれた時から婚約が決定していたその王子、アレクサンドルは、
人前にも現れない、ドロレスと会わない、何もしてくれない名ばかり婚約者となっていた。
そんなある日、両親が事故で帰らぬ人となり、
父の弟、叔父一家が公爵家にやって来た事でドロレスの生活は一変し、最期は殺されてしまう。
───しかし、死んだはずのドロレスが目を覚ますと、何故か殺される前の過去に戻っていた。
(残された時間は少ないけれど、今度は殺されたりなんかしない!)
過去に戻ったドロレスは、
両親が親しみを込めて呼んでくれていた愛称“ローラ”を名乗り、
未来を変えて今度は殺されたりしないよう生きていく事を決意する。
そして、そんなドロレス改め“ローラ”を助けてくれたのは、名ばかり婚約者だった王子アレクサンドル……!?
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください
迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。
アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。
断るに断れない状況での婚姻の申し込み。
仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。
優しい人。
貞節と名高い人。
一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。
細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。
私も愛しております。
そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。
「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」
そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。
優しかったアナタは幻ですか?
どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。
(完)婚約解消からの愛は永遠に
青空一夏
恋愛
エリザベスは、火事で頬に火傷をおった。その為に、王太子から婚約解消をされる。
両親からも疎まれ妹からも蔑まれたエリザベスだが・・・・・・
5話プラスおまけで完結予定。
殿下の婚約者は、記憶喪失です。
有沢真尋
恋愛
王太子の婚約者である公爵令嬢アメリアは、いつも微笑みの影に疲労を蓄えているように見えた。
王太子リチャードは、アメリアがその献身を止めたら烈火の如く怒り狂うのは想像に難くない。自分の行動にアメリアが口を出すのも絶対に許さない。たとえば結婚前に派手な女遊びはやめて欲しい、という願いでさえも。
たとえ王太子妃になれるとしても、幸せとは無縁そうに見えたアメリア。
彼女は高熱にうなされた後、すべてを忘れてしまっていた。
※ざまあ要素はありません。
※表紙はかんたん表紙メーカーさま
貴方に私は相応しくない【完結】
迷い人
恋愛
私との将来を求める公爵令息エドウィン・フォスター。
彼は初恋の人で学園入学をきっかけに再会を果たした。
天使のような無邪気な笑みで愛を語り。
彼は私の心を踏みにじる。
私は貴方の都合の良い子にはなれません。
私は貴方に相応しい女にはなれません。
伝える前に振られてしまった私の恋
メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。
そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。
今から婚約者に会いに行きます。〜私は運命の相手ではないから
毛蟹葵葉
恋愛
婚約者が王立学園の卒業を間近に控えていたある日。
ポーリーンのところに、婚約者の恋人だと名乗る女性がやってきた。
彼女は別れろ。と、一方的に迫り。
最後には暴言を吐いた。
「ああ、本当に嫌だわ。こんな田舎。肥溜めの臭いがするみたい。……貴女からも漂ってるわよ」
洗練された都会に住む自分の方がトリスタンにふさわしい。と、言わんばかりに彼女は微笑んだ。
「ねえ、卒業パーティーには来ないでね。恥をかくのは貴女よ。婚約破棄されてもまだ間に合うでしょう?早く相手を見つけたら?」
彼女が去ると、ポーリーンはある事を考えた。
ちゃんと、別れ話をしようと。
ポーリーンはこっそりと屋敷から抜け出して、婚約者のところへと向かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる