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20 親子の会話

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「フランツ……」
私はお茶会の後フランツを探して屋敷を回った。
最近はアマンダから仕事を任される事もありあちこち忙しく動き回っていると執事から聞いてはいたがこんなに忙しいとは、結局執務室で待ち伏せしてやっと出会う事が出来た。
「母上、どうされたのですか?」
以前と同じように話しかけてくれるフランツに先程アマンダから言われた言葉が本当だったと思わず泣きそうになってしまったが、今はそんな事をしんみり思っている場合では無い。
「貴方、好きな人がいるって!どういう事なの?アマンダがいるのに!そりゃ貴方達は本当の夫婦では無いのかもしれないけれど!上手くやっているじゃ無いの!アマンダの何処が気に入らないの!そりゃちょっと気が強すぎるかもしれないけれど!貴方にはあれくらいの子の方が良いわよ!」
「ちょっと待ってください!」
「何を待つと言うの!どこの馬の骨なの!はっきりと私に言ってみなさい!」
「アマンダです!」
「えっ?」
「だからアマンダなんです!私の好きな人は!」
「……………………………」
目の前のフランツの真っ赤な顔を見てそれが嘘ではないと確信はしたが……じゃあアマンダは何故あんな事を……?
「フランツ……アマンダは貴方の気持ちを知っているの?」
私は恐る恐るフランツにそう尋ねる。
……もしアマンダがフランツのこの気持ちを知っていて…私にあんな風に言ってきたとしたら……それはアマンダにとってこの子の気持ちが迷惑であると言うことなのだろう。アマンダは自分がこの屋敷を去った後と言っていたし……。
「いえ、その……アマンダには好きな人が出来た事は言ったのですが……」
フランツの何やら煮え切らない様子と返事を怪訝に思い尋ねる。
「貴方……アマンダに一体どう言ったの?ちゃんと気持ちを伝えたの?」
そしてフランツが語ったお粗末な告白とも呼べぬ告白に頭を抱えるしか無かった。
「アマンダは貴方がアマンダ以外の人が好きだと誤解しているわよ」
私がそう言うとフランツは項垂れながら…
「知っています」
と一言だけ言った。
「ちゃんと気持ちを伝えないと、あんな言われ方ではアマンダの方も誤解してしまうわよ!ちゃんと君が好きだ!とはっきり言わないと」
私がつい熱弁してしまったのを不思議そうな顔でフランツは見ていて……。
「どうしたの?」
私がそう聞くと。
「いえ、別に母上は…そのアマンダの事をあまり良くは思っていないのではないかと…思っていたもので」
「ああ、その事ね。と、いうか自分達の自業自得でこうなってしまった侯爵家の立て直しを誰よりも真剣に考えてくれているアマンダに感謝こそすれ、悪く思うなんて罰当たりな事出来るはずないでしょう!」
私がそう言うとフランツは嬉しそうに顔を綻ばせた。
「そうですよね!良かったです!母上もアマンダの事を良く思ってくれていて。正直心配もあったのです、私はアマンダの事を好きになってしまったから気の強いアマンダを悪く思ったりはしませんが…もしかしたらあんなに気が強い嫁なんて願い下げよ!と反対されたりするのかもしれないと思っていたので……」
「そう、そうだったのね。貴方の心配はわかったわ。でもそれとあの不甲斐ない告白とは話が別です!」
こうして私はあんな保険をかけるような情けない告白をした不甲斐ない息子に今更ながら説教する羽目になった。




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