初夜で君を愛さないと言われたので大喜びしたところ何故か夫が絡んで来て面倒臭い！

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「だ、だが！君は昨夜言っていた！政略結婚なのだから後継を作る義務も付いて回ると」
「ええ、言いました。だから？」
「いや、え、だから、君は昨夜その気だったんだろう？なのに本当の夫婦になるつもりは無いとはどういうことなんだ！後からこんな大事な事を言い出すなんてそれは紛れも無い詐欺だろう！」
その言葉に私はため息をつく。
「後から？いいえ、こちらの方が先に言っています、ちゃんと契約書も有るのですから。理解もされず適当にサインをし、ちゃんと説明しておくように言ってあったにも関わらずそんな簡単な事もされず……どちらかと言えば侯爵様に騙されたのは私の方だと思いますよ？」その言葉に侯爵は何も言えずただ俯くだけ。
「だが！そんな大事な事！本来なら君の口からも説明するべきだろう？」
珍しくまともな事を言って来たフランツ。
だが、責める相手を間違っているわね。
「だから、そこを私は話し合いたかったと何度も言っていますよね？侯爵夫人には婚約者時代に邪魔をされ続け、初夜の席で話そうにも勘違いした貴方は妻を三時間も放置、挙句君を愛することは出来ないと言われ本来なら政略結婚とはこういう物だと説明しただけ。本当にびっくりしましたわ、本来侯爵様からきちんと説明を聞いていれば私との初夜に心配なんて無いと分かっているはずなのにフランツがそんな事を言い出すんですから、全くこの婚姻の本当の意味を理解されてないのだなぁと……で息子の貴方がそんなのだからきっと侯爵夫人も理解なさっていないだろうと思いまして…まあそうですよね、しっかりご理解されていれば婚約中からでも私にあんな態度取れないですものね。私もここまで侯爵様が愚かだとは思わず、考えが足りなかったですわ」
私のそんな発言にフランツも侯爵夫人も顔を真っ赤にしてワナワナと震えていた。
「ついでに言うのであれば使用人達もなんの疑問も無く初夜の準備をして、翌朝私がフランツとの初夜を行っていないと分かった途端態度を変えて私を見下して来た事から全く説明されていないから自分達の状況が分かっていないのだと理解しました」
そこまで言うと朝私を見下して嫌味を言った使用人はガタガタと震え出した。
「そんなに震えないで？……私は優しいでしょう？だって本来であれば私がわざわざ貴方達にちゃんと説明しなければならない義務も無いのだから私の勝手でこの家から手を引いても良かったのですよ？そこの無礼な使用人にしても…その場で直ぐに辞めさせたとしても誰に文句を言われる立場でもないのに…こうしてきっちりと説明してあげているのだから……ね？優しいわよね？」
そう言って優しく微笑んだ私に使用人達はますます震え上がったようにその顔色を真っ青にして涙まで流し始めた。
……失礼な。
「で？今度こそしっかりとご理解頂けましたでしょうか？」
その言葉に頷いたのはフランツだけだったけれど、終始俯く侯爵とその隣で赤いのか青いのか分からない顔色をしている夫人もきっと自分が置かれている状況ぐらいは理解したのだろう。流石に言い返して来ることも無かった。
「さて、フランツ。ここからは貴方と話しをします。もう正直侯爵様の事は信用出来ませんし、侯爵夫人と仲良く……と言うことも考えられませんので。……貴方は私の話に耳を傾けようとする姿勢はあるようですし…馬鹿では無い。しかし、今まで侯爵家の事にもその他の事にも無関心過ぎたと思うし、無知過ぎる」
フランツは私の言葉を黙って聞いていたが「どうすればいいのだろうか」とぽつりと漏らす。
その言葉に私は口元に笑みを浮かべる。
「貴方にその気があるのなら私は協力を惜しまないわ。でも、甘やかすことはしないわ、本当に貴方がこの状況をどうにかしたいと思うのならば血が滲むほどの努力が必要よ。貴方はそれ程に今まで甘えて暮らして来たと思うし、侯爵家の義務にも無関心過ぎたわ。その事を肝に銘じて頑張りなさい」