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二人見つめあい踊る。
殿下は流石に慣れているようでとてもリードが上手い。
私も特訓したが何せ長年引きこもっていたのでとても怪しい。
ステップが怪しくなり下を向きかけたとき
「こら、下を向くな。しっかりリードしてやる私だけ見ていろ」
と言われ普段と違う殿下の意外な男らしさに不覚にもドキッとしてしまった。あまりの恥ずかしさに
「す、すみません殿下。他に誘いたいご令嬢がいらっしゃったのでは?」
と言うと、とろけるような笑みで
「いや、ミリアと踊れて嬉しいよ」
って!うわ~!どうした?殿下!
甘い!甘いですよ!
これはあれだ天然スケコマシ!
こんなの殿下を好きなご令嬢が見たら卒倒するレベル!
あ~美形って怖い!
そんな事を考えつつ何とも言えない恥ずかしさを誤魔化しているとあっといつ間に一曲終わっていた。
その場で二人お辞儀をしてダンスを終えると会場からは割れんばかりの拍手。殿下と微笑みあっていると、殿下の周りにはご令嬢。私の周りにはご令息達。次は私と踊って下さいと誘われる。私と殿下はそれぞれ離れてそれから何人もとダンスを踊った。
あれから五人と踊って流石に疲れた私はダンスで火照った身体を冷ますべくバルコニーへと出た。
「はぁー、流石にこれだけ踊ると疲れたわ」
でも、何とも言えぬ高揚感もあり不思議な感覚だ。
バルコニーの手すりに背中を合わせ会場に続くガラス扉から会場をぼんやり眺める。色とりどりのドレスが綺麗だ。これは前世には無かったものだなぁ。
おっ!殿下が踊っているのが見える。
あらあら、相手のご令嬢の顔。もう、殿下にメロメロ(古)そりゃ只でさえ皇太子殿下だし、あれだけ綺麗な顔していていたらご令嬢なんてイチコロ(古)だろう。
殿下もここで出会ったご令嬢と仲良くなって婚約とかするのかもしれないな。
「いいなぁ」
ぽつり私の口から溢れた。私には婚約者見付かるのかな?
でも、折角殿下と仲良くなったけどお互い婚約者が出来たらこうしてしょっちゅう会うとかは出来なくなるのか~。それは少し寂しいかもな。
ぶんぶんぶん!
私はちょっとしんみりした気持ちを切り替えるように首を振る。
「でも、きっと殿下が選ぶ人だし素敵な人だろうし私とも仲良くなって下さるかも!」
さぁ中に戻ろうと私が思った時、会場に続くガラス扉が開き人が出て来る。
逆光で顔は見えないが男女が二人寄り添って出て来る。向こうからは暗くて私には気付いてないようだ。
私は仲の良いカップルの邪魔をしてはいけないと思い音を立てないようそっとその場を離れようとする。
「……ふふっ殿下ったら」
楽しそうなご令嬢の声。
今、殿下って。私はそっと二人を振り返る。するとそこには楽しそうに微笑む殿下と私の知らないとても可憐なご令嬢いた。
言い知れぬモヤモヤ感を感じながら私は足早にその場を離れた。
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