32 / 37
32
しおりを挟む
「考え直せとは……」
「言葉のままそのままに、是非考え直して頂きたいなぁと思いまして」
「……無理ですね」
「そこを何とか」
そう言ってへらりと笑う側近の方の顔を見て私はため息を一つ。
「貴方も知っている筈ですよね。私が何故王子に婚約者として選ばれたか」
「はい、勿論」
側近の方は頷く。それはそうだろう、まだ幼かったあの日に私を婚約者に選んだ理由を聞かせていたのがこの方なのだから知らない筈が無い。
「正直な所、あんな下らない理由で選ばれた婚約者に王妃とか務まらないと思います」
「そうですか?」
「そうでしょう。あの地位が誰がなっても良いという地位では無いことなんて王子の側近である貴方で無くても、それこそ子供でも知っていますわ」
「そうですねぇ」
「はい、ですから。あんな理由で選ばれて、しかも本人にその気も意欲も無いのですから一刻も早く私との婚約を破棄して他のその地位にふさわしい方を選ばれた方が良いと思います。一からの王妃教育となればまた時間も掛かるでしょうし」
「そうなんですけどねぇ……」
それきり黙り込む側近の方。私の方は言いたい事を言ったしこれ以上何か言われるのも嫌だったので私は早口で捲し立てる。
「と、言うことで、貴方様からも一刻も早い婚約破棄を王子にお願いして下さい。用件がそれだけなのであれば私はこれで失礼致します」
言いたい事は全て伝えた。
あとはあの人が王子にどう伝えてくれるか。
あぁ、それにしても緊張したぁ。もう心臓がバクバクしてる!
私は元々大人しい性格なの!本当なら目立ちたく無い!それなのに王子があんな下さない理由で私を婚約者に選んだりするから!
王子相手なら怒りが勝るから最近は開き直って言いたい事が言えるようになったけど……親しくもない人と二人で話すなんて。
そもそもあんな貴族のご令嬢みたいな話し方無理~!精一杯笑顔も作ったけど全然キャラじゃ無いよ~!
私は一人羞恥に悶えながら教室へと急ぐのだった。
明日もきっと来るであろう王子のお弁当をピーマンの次に嫌いな豆にしてやろうと思いながら。
そんな二人を見ている影。
それは明日の昼食がロゼの手により嫌いな豆づくしになるとはこの時は露ほども思わない王子だった。
「言葉のままそのままに、是非考え直して頂きたいなぁと思いまして」
「……無理ですね」
「そこを何とか」
そう言ってへらりと笑う側近の方の顔を見て私はため息を一つ。
「貴方も知っている筈ですよね。私が何故王子に婚約者として選ばれたか」
「はい、勿論」
側近の方は頷く。それはそうだろう、まだ幼かったあの日に私を婚約者に選んだ理由を聞かせていたのがこの方なのだから知らない筈が無い。
「正直な所、あんな下らない理由で選ばれた婚約者に王妃とか務まらないと思います」
「そうですか?」
「そうでしょう。あの地位が誰がなっても良いという地位では無いことなんて王子の側近である貴方で無くても、それこそ子供でも知っていますわ」
「そうですねぇ」
「はい、ですから。あんな理由で選ばれて、しかも本人にその気も意欲も無いのですから一刻も早く私との婚約を破棄して他のその地位にふさわしい方を選ばれた方が良いと思います。一からの王妃教育となればまた時間も掛かるでしょうし」
「そうなんですけどねぇ……」
それきり黙り込む側近の方。私の方は言いたい事を言ったしこれ以上何か言われるのも嫌だったので私は早口で捲し立てる。
「と、言うことで、貴方様からも一刻も早い婚約破棄を王子にお願いして下さい。用件がそれだけなのであれば私はこれで失礼致します」
言いたい事は全て伝えた。
あとはあの人が王子にどう伝えてくれるか。
あぁ、それにしても緊張したぁ。もう心臓がバクバクしてる!
私は元々大人しい性格なの!本当なら目立ちたく無い!それなのに王子があんな下さない理由で私を婚約者に選んだりするから!
王子相手なら怒りが勝るから最近は開き直って言いたい事が言えるようになったけど……親しくもない人と二人で話すなんて。
そもそもあんな貴族のご令嬢みたいな話し方無理~!精一杯笑顔も作ったけど全然キャラじゃ無いよ~!
私は一人羞恥に悶えながら教室へと急ぐのだった。
明日もきっと来るであろう王子のお弁当をピーマンの次に嫌いな豆にしてやろうと思いながら。
そんな二人を見ている影。
それは明日の昼食がロゼの手により嫌いな豆づくしになるとはこの時は露ほども思わない王子だった。
20
お気に入りに追加
4,529
あなたにおすすめの小説
女性慣れしていない、の本当の意味は、そういうことでしたか
四季
恋愛
領地持ちのそれなりに裕福な家に生まれたアメリア・フルレスクは、十八になった春、両親の知り合いの息子であるカゼインと婚約した。
しかし、彼には秘密の趣味があって……。
もうすぐ、お別れの時間です
夕立悠理
恋愛
──期限つきの恋だった。そんなの、わかってた、はずだったのに。
親友の代わりに、王太子の婚約者となった、レオーネ。けれど、親友の病は治り、婚約は解消される。その翌日、なぜか目覚めると、王太子が親友を見初めるパーティーの日まで、時間が巻き戻っていた。けれど、そのパーティーで、親友ではなくレオーネが見初められ──。王太子のことを信じたいけれど、信じられない。そんな想いにゆれるレオーネにずっと幼なじみだと思っていたアルロが告白し──!?
やり直し令嬢は本当にやり直す
お好み焼き
恋愛
やり直しにも色々あるものです。婚約者に若い令嬢に乗り換えられ婚約解消されてしまったので、本来なら婚約する前に時を巻き戻すことが出来ればそれが一番よかったのですけれど、そんな事は神ではないわたくしには不可能です。けれどわたくしの場合は、寿命は変えられないけど見た目年齢は変えられる不老のエルフの血を引いていたお陰で、本当にやり直すことができました。一方わたくしから若いご令嬢に乗り換えた元婚約者は……。
お望み通り、別れて差し上げます!
珊瑚
恋愛
「幼なじみと子供が出来たから別れてくれ。」
本当の理解者は幼なじみだったのだと婚約者のリオルから突然婚約破棄を突きつけられたフェリア。彼は自分の家からの支援が無くなれば困るに違いないと思っているようだが……?
その言葉はそのまま返されたもの
基本二度寝
恋愛
己の人生は既に決まっている。
親の望む令嬢を伴侶に迎え、子を成し、後継者を育てる。
ただそれだけのつまらぬ人生。
ならば、結婚までは好きに過ごしていいだろう?と、思った。
侯爵子息アリストには幼馴染がいる。
幼馴染が、出産に耐えられるほど身体が丈夫であったならアリストは彼女を伴侶にしたかった。
可愛らしく、淑やかな幼馴染が愛おしい。
それが叶うなら子がなくても、と思うのだが、父はそれを認めない。
父の選んだ伯爵令嬢が婚約者になった。
幼馴染のような愛らしさも、優しさもない。
平凡な容姿。口うるさい貴族令嬢。
うんざりだ。
幼馴染はずっと屋敷の中で育てられた為、外の事を知らない。
彼女のために、華やかな舞踏会を見せたかった。
比較的若い者があつまるような、気楽なものならば、多少の粗相も多目に見てもらえるだろう。
アリストは幼馴染のテイラーに己の色のドレスを贈り夜会に出席した。
まさか、自分のエスコートもなしにアリストの婚約者が参加しているとは露ほどにも思わず…。
それは報われない恋のはずだった
ララ
恋愛
異母妹に全てを奪われた。‥‥ついには命までもーー。どうせ死ぬのなら最期くらい好きにしたっていいでしょう?
私には大好きな人がいる。幼いころの初恋。決して叶うことのない無謀な恋。
それはわかっていたから恐れ多くもこの気持ちを誰にも話すことはなかった。けれど‥‥死ぬと分かった今ならばもう何も怖いものなんてないわ。
忘れてくれたってかまわない。身勝手でしょう。でも許してね。これが最初で最後だから。あなたにこれ以上迷惑をかけることはないわ。
「幼き頃からあなたのことが好きでした。私の初恋です。本当に‥‥本当に大好きでした。ありがとう。そして‥‥さよなら。」
主人公 カミラ・フォーテール
異母妹 リリア・フォーテール
忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】
雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。
誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。
ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。
彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。
※読んでくださりありがとうございます。
ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。
婚約破棄のお返しはお礼の手紙で
ルー
恋愛
十五歳の時から婚約していた婚約者の隣国の王子パトリクスに謂れのない罪で突然婚約破棄されてしまったレイナ(侯爵令嬢)は後日国に戻った後パトリクスにあててえ手紙を書く。
その手紙を読んだ王子は酷く後悔することになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる