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王子について行って辿り着いた先は学園に在学中の王族の為に用意されている部屋だった。
普段は使われる事は無いが…まぁ、王族だし色々知られちゃいけない事がある時とか有事の際とかそんな時に使われる。
王子が鍵を開ける後ろ姿を見ながら思う………。
ここ、今使うとこ?
え?入って大丈夫?
てかなんか話大事になりそう。
確かにここなら誰も邪魔は入らないだろう。
でも!正直恐れ多いわ!
いや、1回ぐらい中を見たいと思った事もあった…あったけど!違うの見学位で良かったの!扉の外から中を覗く位で良かったんだよ!
……入りたくないなぁ~。
「……さっさとしろ」
私が扉の前でうだうだ考えている間に王子はさっさと中に入っていた。
「…私が入っても大丈夫なんですか?」
その言葉に王子はちょっと上を見て考える素振りを見せた。
お願い!ダメだと言って!
「大丈夫だろ」
……祈りは虚しくも届かなかった。
いつまでもここに居てもしょうがない…ていうかいつまでもここにいた方が目立つ。
渋々部屋の中へ足を進める。
「お邪魔します」
ほぉ~こうなってるのか……。うん、意外と地味だな。
「おい、今意外と地味だとか思っただろう」
「……そんな事ありませんよ」
「「………………………」」
しばし流れる沈黙………………。
「ゴホン、でこんな所に連れて来てなんのお話ですか?婚約破棄やっとする気になりましたか?そうでしょうそうでしょう!私でなくても他にもっと王子にふさわしいご令嬢は沢山いると思いますわ。分かりました!では謹んで婚約破棄を承りますわ。今までお世話になりました、いえ、今までお世話させて頂きました。では新しい婚約者の方とお幸せに!ではこれで失礼致します」
私は一気にそう言うと扉に向かって歩き出す。
やったわ!これで晴れて自由の身よ!
「待て」
何だか待てとか言われたような気がするけれどきっと絶対聞き間違いでしょう。
ドアノブに手を掛けた所で王子に手を掴まれる。
「待て」
………聞き間違いじゃ無かったようだ。
「何でしょうか?」
「私は婚約破棄をする気は無い」
「…………この期に及んでまだそんな事を仰っているのですか?」
「少しでいいから話をさせてくれ」
いつになく真摯な態度の王子にいやいやながらも少し話を聞く事にした。
「分かりました…ただし手短にお願いします」
「…分かった」

私達はテーブルを挟んで向かい合って座る。
「で?どういう事でしょうか…婚約破棄しないとは」
「…お前が本当に婚約破棄したいと思っていることは分かっている…」
「やっと分かって頂けたのですね」
「理解は出来ないがな」
おい、一言余計ですよ。
「別に理解して頂かなくても大丈夫です。で本気で婚約破棄したいと分かって頂けたのに婚約破棄しないとは……やはり嫌がらせですか?」
「私はそんなに暇では無い」
「そうですか?」
「…………………兎に角、私は嫌がらせなどはしない」
「……………………そういう事にしておきましょう。で?嫌がらせでなければ何なのですか?」
「婚約破棄は学園を卒業する日まで待って欲しい」
「…………………………は?」
「在学中にお前と婚約破棄をしてしまってはこれからの学園生活が全て鬱陶しい令嬢達に囲まれて終わってしまう、しかしお前が婚約者だと思われている間は鬱陶しい奴らも寄って来ないだろう」
「私に王子の女避けになれ……そう仰るのですね」
「ああ、まあ言い方は悪いが平たく言うとそう言う事だ」
「…………それ私に何かメリットあります?正直私と婚約破棄した後の王子の学園生活なんて私にはこれっぽっちも興味も関係もないんですけど」
「………このまま婚約破棄せず結婚してもいいんだぞ…」
「!」
王子め…結婚で脅しをかけてきた…なんて卑怯な。
「私はいいんだぞこのまま婚約破棄せずにいても。他の鬱陶しい令嬢達の相手をするぐらいならまだお前の相手をしている方がマシだからな。……このまま学園にいる間だけ婚約者を続ければ…卒業の日には婚約破棄される…。さぁ、どっちを選ぶ?」
「………………分かったわ。ただしちゃんと卒業と同時に婚約破棄すると文章で残して貰うわ」
「いいだろう」


そうして私達は学園を卒業する日まで婚約者として過ごす事になった。
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