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「ロゼ様は…本当に婚約破棄されたがっているのでは?」
唐突にそんな事を言い出す側近。
「…そんなはずないだろう…このままいけば未来の国母だぞ?国のナンバー2になれるんだぞ?…そんな立場をみすみす手放す訳がないだろう」
「うーん、まぁ、普通ならそうなんですけどねぇ………なんせあのロゼ様ですから……いやーだってあんなにも王子の嫌いな野菜ばっかり…正真正銘嫌がらせですよね」
と悩み出した。
そうだあの女は………変だ。はっきり言って変わっている。普通の令嬢なら私の機嫌を損ねないように気を遣いすぎるほど遣っているのにあの女はそもそも気遣いどころか態度が大きすぎる。口の利き方もなってないし人の嫌いな物ばかり食べさせてくるし…………一体なんだというんだ……。それに…事ある毎に婚約破棄して欲しいと言い出す始末。
「それかが分かっていて止めないお前もお前だけど…」
「いやーそこはまぁ我々としても王子の野菜嫌いには手を焼いていたので好都合かなって」
「………………………」
こいつ…そろそろ1回殴りたい。
「本当に王子に嫌われようとしてる…とか?」
「はっ?」
「…婚約破棄して欲しい…みたいな事を言ってらっしゃるんですよね?しかも今日は新しい婚約者を探せと言われて妹君まで勧められた」
「…ああ」
「……………1度思い切って…婚約破棄しよう……と言ってみますか?」
「………………」
「だって王子が言う通りロゼ様が王子の気を引きたくてこんな事をやっているのであれば…………今回の事で王子も流石に気付いたと思いますけど…絶対に婚約破棄しないとか言っちゃって……正直ロゼ様の思うツボですよ!王子チョロ過ぎますよ!」
お前…そんな事思ってたのか。
「………………」
「ロゼ様が本当は婚約破棄したくないって思っててあれをやってるなら……王子が婚約破棄を言い出したら多少なりとも慌てたりするんじゃないですか?」
「……じゃあこのまま直ぐに婚約破棄しましょう!って言われたらどうするんだ……」
「…………それは……その時考える………とか?」
「「……………………………」」
嬉嬉として婚約破棄を受け入れそうなロゼを想像して思わず黙ってしまった…。
きっと側近も同じような想像をしたのだろう…同じように黙っていた。
いや!私があいつと婚約破棄したくないとか思っている訳では無い!断じて無い!ただあいつが本当に婚約破棄したがっているなら!いや!そんな事有り得ないだろうが!あいつの思い通りになるのが癪なだけで……………取り敢えず安易に婚約破棄を言い出すのはやめようとその場で決めた。



いやーやっちゃったわ。
いつまでもいつまでも何か企んでる企んでるってしつこいから思わず言っちゃったよ。
……まぁでもここまで言えば流石に私が本気で婚約破棄したがっているという事ぐらいは伝わっただろう。
「絶対に婚約破棄しない!」とか悔し紛れで言っていたけど、後々冷静に考えれば私って相当不敬だし側近の方もそろそろ婚約破棄した方がいいんじゃないかとか言ってくれるかも! 
野菜嫌いにもかなり改善の兆しが見えて来たし…あの豆パンも最初はかなり渋々口に入れていたけど1度食べたらその後は…まあ、不満げだったけど黙って食べていたし…。王子は今まで嫌なものを食べないで嫌だと思っていただけの食わず嫌いだと思うのよね、だって食べたら美味しいって顔してるし、うん。
王子だから無理して食べろと言って来る人がいなかっただけで今まで避けていたものも食べたら美味しかったみたいなものがまだまだあると思う………よし!こうなったら乗りかかった船!私が婚約破棄されるまでどの位の期間があるか分からないけど次の婚約者になる方の為に少しでも王子の好き嫌いを減らしておいてあげよう!

王子にやってしまった反省をしていたはずなのにいつの間にか婚約破棄されるまでの王子偏食削減作戦に移行していた事に気付かないロゼは次は王子に何のフルコースを食べさせようか、その事ばかり考えるのだった。
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