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次の日も王子は私の所にやって来た。
シチューに入る野菜まで食べない野菜嫌い王子ならば野菜を食べさせられる嫌さに私に近付かないかもしれないと淡い期待を抱いていたのに…それよりも負けず嫌いが勝ってしまったようだ。不憫な子だ。
まぁ、私にとっては好都合。このまま毎日野菜を食べさせればきっと嫌われるだろうと後になって思い至った。それに自分でもみみっちいとは思うが王子に嫌いなものを食べさせて…ふふふ!とってもスッキリした!なんならいい気味とまで思ってしまった。
あーでもこれはいけないわね。やられたらやり返すなんて諍いの元だもの。



しかしながら…この偏食どうにかならないかしら。
どうやらこの王子嫌いなのは野菜だけでは無かったらしい。
「王子はフルーツもお嫌いなのですか?」
「………」
今日はフルーツがたっぷり練り込まれたパンとフルーツサラダメインはチキンのステーキ。
今日も今日でステーキにしか手を付けない王子。チキンの付け合せの野菜が肉に付いているのさえも上手に取っているのを私は見た。
スープも具材の野菜が口に入らないようにスープの部分だけを掬い飲んでいた。
「どうぞこちらもお召し上がりください」
私はそう言って昨日と同じように手付かずのサラダとパンを王子の前に押し出す。
「このフルーツは我が国の特産ですわ。国民が汗水流して育てた作物をこの国の王子が食べないなんて事…ありませんね?」

引きつった笑顔でサラダの皿を見つめる王子と据わった目でサラダの皿を押し出す私。

何このデジャブ感。

「付け合せの野菜とスープも全て召し上がって下さい」
サラダとパンで許されると思っていたのか私のその言葉に絶望したように一瞬目を見開いた。
しかしその後はまたうっすらと笑みを浮かべなから震える手で全てを食べた。
「王子…」
「なんですか?」
「……他にも嫌いな物ありますか?」
「…………」
あるなこれは。
笑顔で私から顔を背ける王子。
「王子がこんなに偏食なんて知りませんでしたわ。他の方がこんなご様子の王子を見たらガッカリされるのではありませんか」
「チッたまに口を聞いたと思ったら文句ばかりか」
…………。あまりの言い草に今度は私が目を見開いた。
目の前の王子を見るとその顔からいつもの笑顔が消えていた。
「お前も所詮王妃の座を狙っているだけだろう…ならば今のまま大人しくしていろ。そうすれば王妃の座が手に入るんだからな…二度と私に意見するな」
王子は私にしか聞こえないくらいの声でそう言って立ち上がった。

性格が悪いのは知っていたけど…とうとう本性を表したわね。
なんという性格の悪さ、しかも私が王妃の座を狙っているなんて…勘違いにも程があるわ。
私が貴方から逃げるのにどれだけ苦労しているかも知らないで。
…もうこうなったら手加減しないわ。相手も本性を見せたのだから遠慮する事もない。
あのお子様偏食王子の偏食を何としても直し嫌われに嫌われて婚約破棄に持ち込む!
目標も新たに昼の授業に向かった。
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