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私は待ちに待っていたこの瞬間を!
ここは学園の講堂。今まさに卒業式。
そして私は今から婚約者であるこの国の王子ダミアンから婚約破棄を言い渡されそうになっている。



私はこの国の筆頭貴族ウィスター家の娘ロゼ。
代々侯爵家のウィスター家は王家に嫁ぐ者も少なくは無い。
15年前この国の待望の第1王子が生まれ。
同じ年に私も生まれた。その時点で最早私は王子の婚約者候補の筆頭だった。
5歳の時、数人いる婚約者候補と王子が初めて出会う。そこで婚約者候補と交流をとり王子自ら婚約者を決めると言うことがあって……他にも積極的に婚約者になりたがっていた少女がいたのに何を血迷ったのか全く交流の無い私を…王子は婚約者にと望んだのだ。
まさか一目惚れでもあるまいし。
そうは思っていてもその頃は私もいたいけな少女だった訳で…王子は私が好きなんだわなんて思っていた私に3年後現実が突きつけられる。
そうあれは8歳の時。王妃教育で城に行った帰り……城の中庭に座る王子。
私は挨拶をしようと王子の背後から近付く、すると何やら話し声。他にも人がいるのだと思い背を向けたその時聞こえてしまった。
「何でロゼ様を選んだのです?…確かに可愛い子だとは思うけど…ちょっと大人しすぎないですか?」
「…それが良かったんだ。自分の主張を押し付けてくるやつは嫌だったんでな。あの中で1番大人しそうなやつを選んだ」
「…そんな理由で?」
「ああ、あいつなら私の言う事を大人しく聞くだろう」
………目の前が真っ暗になった。
そりゃ一目惚れとかでは無いだろうとは思っていたけど、いたけど…まさかそんな理由で選ばれたなんて…。
私だって王子との婚約、結婚に愛し愛されるなんて事を望んでいた訳では無いけれど、私も貴族の娘その位の事は分かっていたけれど、それでもやっぱり8歳の少女が聞くには耐えない話だったのもまた事実だった。

真実を知ってからは地獄のような日々だった。
確かに王子の言う通り私はは大人しい少女だったがそれでもあんな事を聞いた後に王子に会うのは嫌で…普通に出来る自信も無く、王妃教育で城に行く事があっても王子に会おうという気は起こらなかった。
それでも絶対に会わないといけない日というのは年に何回かあって、そんな年に何回かしかない日にまた王子が話しているのを聞いてしまう…タイミングの悪い少女、それが私。
あれは12歳になった時、その日は王子の母である王妃様のお誕生日の夜会。人の多さに疲れ果て城の休憩室に向かう途中、話し声が聞こえてくる。あの日の嫌な記憶が蘇り私は踵を返した途端ハッキリと聞こえてくる王子の声。
「確かに綺麗な顔だが私に向かってニコリともしない…ロゼほどつまらない女はいないだろうよ」
「王子だけですよあのロゼ様をそのように仰るのは」
私はその場から逃げ出した。
つまらない女?自分が自己主張の少ない大人しい女を選んだのではないの?
確かに私は8歳のあの日から王子の前で笑わなくなった、あんな理由で選ばれた婚約者が王子の前でどんな顔していればいいのか分からなかったから。
それなのに、それなのに!もう腹が立って腹が立って仕方が無かった。でもそれを王子本人に言えるはずもない。
その後私は急いで屋敷へと帰った。勿論王子に挨拶などしなかった。
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