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求めたもの 3
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柊さんが、仕掛けた?
「どういう事ですか?あのオヤジを誘ったのは、柊さんって事!?どうして!なんでだよ!なあ!」
俺は、横になっている柊さんの肩を強く掴んで問い詰める。
「・・・夏は、知らなくていい」
知らなくて・・・いい?
万里さんには話してるのに?
どうして・・・俺を信用してないから?
胸が張り裂けそうなくらい痛い。目頭が熱くなって、涙が溢れてきそうになった。
「湊、いつまで夏くんを子供扱いするつもりなんだ。お前は、ガキだと思ってるヤツに自分を抱かせてんのか?」
万里さんが言うと、俺の背後で緒方の「マジかよ」と溜息混じりの声が聞こえた。
「夏くんは、湊の全てを受け入れる覚悟があるって俺に言ったんだ。お前が思ってるより、子供じゃないよ」
「そうだな・・・」
万里さんの言葉に、重そうな瞼をゆっくりと持ち上げる柊さん。
「・・・長澤が」
俺とは目を合わさずに床を見つめた柊さんが途切れ途切れに言葉を並べていく。
「夏を・・・犯すって・・・そんなの、俺、耐えれなくて・・・」
は?
俺を、なんだって?
「この店は、個室に監視カメラ付いてるの、知ってたし・・・万里がここのオーナーと親しくて、俺もよく通ってたし、場所提供してもらって・・・・・・」
柊さんの話を要約するとこう。
俺を犯すと言った長澤に自分の体を差し出し、これで最後にしてくれるなら好きにしていい、と言って監視カメラで柊さんを抱いている所を記録し、映りが悪かった時の事を考えて、シウの生放送終わりに来てくれ、と事前に万里さんに目撃者役を頼んだ。
そして、長澤が俺に近付くようなら この趣味を家族にバラす、と脅したらしい。
この店のオーナーも、常連である長澤の横暴振りに困っていたらしく、柊さんに協力してくれたとの事。
「昔から、長澤は・・・若い男が好きなんだ。だから、夏も・・・って考えたら腹が立って、なんとかしなきゃいけないと思って・・・」
柊さんは不貞腐れたように片頬を膨らませる。
いくらあのオヤジが若い男が好きだからって、俺は中性的でもないし、柊さんみたいなか弱そうなタイプでもないし、犯すなんて・・・
それって、明らかに長澤の親父が柊さんを抱きたいがために言ったと思うんだけど・・・
「はは、湊は意外と・・・独占欲が強いらしい」
万里さんが笑う。
「自分でも知らなかったけど、そうみたいだ。まさかこんな目に遭うなんて思ってなかったけど」
何故か柊さんも笑い出す。
血が出るくらい酷い目に遭ったのに、何で笑ってるんだよ。
「にしても夏がここに来るのは想定外だった。緒方先生、またご迷惑をかけてしまいました。申し訳ないです」
「いえ。俺は何も・・・」
体を起こし、柊さんは緒方に頭を下げる。
緒方に、少し話したい、と言われ俺は個室を出た。
「お前達、そういう関係だったのか」
やべ・・・こんな関係世間に知れたら・・・
「俺が、柊さんを好きなんだよ!柊さんは悪くない!それに、手出してんのは俺の方だし!」
必死で弁解したいのに、取り繕う術を知らない俺はそれ以上の言葉が見つからない。
「ミナトが笑ってる顔なんて、初めて見たよ。負の感情しか無いやつだと思ってた。・・・だから俺は、ほっとけない、と思ったんだ。教師になって、この店に来る事がなくなってからもずっと、ミナトの事は気になってた」
ポン、と緒方の手が俺の頭の上に置かれる。
「お前の為なら笑えるんだな、ミナトは。誰にも言わないから安心しろ。俺だって人に言えない過去があるしな」
「緒方ありが・・・」
「あいつ、無事じゃなさそうだったな。・・・だから、礼は要らない。その代わり、これからはお前が守ってやれ。ミナトを笑顔にしてやってくれ。息子としてもな」
ニカッと笑う緒方の手は、大きくて温かくて、優しかった。「先に帰る」と言って緒方は店を出て行く。
俺は、大人は狡いって、残酷だって思ってた。
だけど、それだけじゃないのかもしれない。
「どういう事ですか?あのオヤジを誘ったのは、柊さんって事!?どうして!なんでだよ!なあ!」
俺は、横になっている柊さんの肩を強く掴んで問い詰める。
「・・・夏は、知らなくていい」
知らなくて・・・いい?
万里さんには話してるのに?
どうして・・・俺を信用してないから?
胸が張り裂けそうなくらい痛い。目頭が熱くなって、涙が溢れてきそうになった。
「湊、いつまで夏くんを子供扱いするつもりなんだ。お前は、ガキだと思ってるヤツに自分を抱かせてんのか?」
万里さんが言うと、俺の背後で緒方の「マジかよ」と溜息混じりの声が聞こえた。
「夏くんは、湊の全てを受け入れる覚悟があるって俺に言ったんだ。お前が思ってるより、子供じゃないよ」
「そうだな・・・」
万里さんの言葉に、重そうな瞼をゆっくりと持ち上げる柊さん。
「・・・長澤が」
俺とは目を合わさずに床を見つめた柊さんが途切れ途切れに言葉を並べていく。
「夏を・・・犯すって・・・そんなの、俺、耐えれなくて・・・」
は?
俺を、なんだって?
「この店は、個室に監視カメラ付いてるの、知ってたし・・・万里がここのオーナーと親しくて、俺もよく通ってたし、場所提供してもらって・・・・・・」
柊さんの話を要約するとこう。
俺を犯すと言った長澤に自分の体を差し出し、これで最後にしてくれるなら好きにしていい、と言って監視カメラで柊さんを抱いている所を記録し、映りが悪かった時の事を考えて、シウの生放送終わりに来てくれ、と事前に万里さんに目撃者役を頼んだ。
そして、長澤が俺に近付くようなら この趣味を家族にバラす、と脅したらしい。
この店のオーナーも、常連である長澤の横暴振りに困っていたらしく、柊さんに協力してくれたとの事。
「昔から、長澤は・・・若い男が好きなんだ。だから、夏も・・・って考えたら腹が立って、なんとかしなきゃいけないと思って・・・」
柊さんは不貞腐れたように片頬を膨らませる。
いくらあのオヤジが若い男が好きだからって、俺は中性的でもないし、柊さんみたいなか弱そうなタイプでもないし、犯すなんて・・・
それって、明らかに長澤の親父が柊さんを抱きたいがために言ったと思うんだけど・・・
「はは、湊は意外と・・・独占欲が強いらしい」
万里さんが笑う。
「自分でも知らなかったけど、そうみたいだ。まさかこんな目に遭うなんて思ってなかったけど」
何故か柊さんも笑い出す。
血が出るくらい酷い目に遭ったのに、何で笑ってるんだよ。
「にしても夏がここに来るのは想定外だった。緒方先生、またご迷惑をかけてしまいました。申し訳ないです」
「いえ。俺は何も・・・」
体を起こし、柊さんは緒方に頭を下げる。
緒方に、少し話したい、と言われ俺は個室を出た。
「お前達、そういう関係だったのか」
やべ・・・こんな関係世間に知れたら・・・
「俺が、柊さんを好きなんだよ!柊さんは悪くない!それに、手出してんのは俺の方だし!」
必死で弁解したいのに、取り繕う術を知らない俺はそれ以上の言葉が見つからない。
「ミナトが笑ってる顔なんて、初めて見たよ。負の感情しか無いやつだと思ってた。・・・だから俺は、ほっとけない、と思ったんだ。教師になって、この店に来る事がなくなってからもずっと、ミナトの事は気になってた」
ポン、と緒方の手が俺の頭の上に置かれる。
「お前の為なら笑えるんだな、ミナトは。誰にも言わないから安心しろ。俺だって人に言えない過去があるしな」
「緒方ありが・・・」
「あいつ、無事じゃなさそうだったな。・・・だから、礼は要らない。その代わり、これからはお前が守ってやれ。ミナトを笑顔にしてやってくれ。息子としてもな」
ニカッと笑う緒方の手は、大きくて温かくて、優しかった。「先に帰る」と言って緒方は店を出て行く。
俺は、大人は狡いって、残酷だって思ってた。
だけど、それだけじゃないのかもしれない。
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