上 下
44 / 58

狩られる 1

しおりを挟む
※この章は 柊視点になります。ご注意ください※



夏に打ち合わせだと言って、ある人に指定された場所へ向かう。
そこは、俺にとっては懐かしくもあり、二度と戻りたく無かった場所。

歓楽街にあるハプニングバー。

男女構わずヤリたいヤツらが集まって、適当な相手を見つけてそういう行為をする場所。


俺は昔、この場所で客を漁っていた。
年齢を偽って店に入り、誘ってきた男との事後に「実は未成年だった」と打ち明け、口止め料として金を払ってもらう、そんな事を繰り返していた。
相手が気に入ってくれれば、別の日にホテルでまた体を買ってもらう。

これが俺のウリの手段だった。



バーに入り、カウンターで約束の相手に言われた名前を告げると、バーの奥の個室へと通された。

待ち構えていたのは、夏が怪我をさせてしまった相手の父親。
俺の昔の客だった。

「待っていたよ。あの教師と違って、君はなかなか利口なようだ」

「長澤さん」

「思い出してくれたのか?」

「・・・ええ」

正直、忘れていたかったけど・・・
貰った名刺と、汚い記憶の中からなんとか引き摺り出して、このオヤジがどんなヤツだったかを思い出した。


「座りなさい」

丸いテーブルを囲む大きな半円形のソファに手を置いた長澤に、横に座るように促される。

俺はソファの中央に座る彼から離れた 端の方に腰を下ろす。

「ふん、経営者にもなると随分ふてぶてしくなるもんだな。必死で男の股ぐらに縋りついていた頃の君が懐かしい」

「思い出話をしに来たのではありませんよね。さっさと本題に入りませんか?」

「まあ待ちなさい。せっかくの運命の再会だったんだ。時間を有意義に使いたい」

客との再会が運命だというなら、俺には数え切れないくらいの運命がある。・・・そんなのを運命なんて呼んでたまるか。

「勘違いなさらないでください。息子に手を出さないと言う条件で最後に一度だけ、と仰るから来たんです」

「もちろん、約束は守るよ。あの頃の君は震えながらも一生懸命で可愛らしかった。だけど今の、洗練されて凛とした君も知りたくなってね。・・・もうそろそろかな」

ウイスキーが入ったグラスを口へ運びながら、長澤は腕時計をチラリと見る。

夏に手を出されるなんて冗談じゃない。
何故ならコイツは・・・


ドアが開き、部屋に入ってくるスーツ姿の中年男性が二人。

「揃ったな。懐かしい顔触れだろう?」

そう言われても、思い出せない。
いや、思い出したくない。

「ああ、そう言えば、三人同時に相手をするのは初めてかな?以前は二人が限界だったようだけど・・・もう立派な大人だから手加減はいらないだろう?」

気持ちの悪い薄ら笑いを浮かべて、長澤がジャケットを脱いでネクタイを緩めた。

それを見た他の二人も同じ様にスーツを脱ぎ始める。

「ミナト、お前も脱ぎなさい。それとも昔のように脱がせて欲しいか?」

コイツは、1人じゃ何もできない卑怯者だった。
こんなヤツらに、夏が何かされるなんて・・・考えただけで反吐が出る。

「自分で脱ぎます」

俺がまいた種で 夏を苦しめるなんて、もう二度としたくない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

お人好しは無愛想ポメガを拾う

蔵持ひろ
BL
弟である夏樹の営むトリミングサロンを手伝う斎藤雪隆は、体格が人より大きい以外は平凡なサラリーマンだった。 ある日、黒毛のポメラニアンを拾って自宅に迎え入れた雪隆。そのポメラニアンはなんとポメガバース(疲労が限界に達すると人型からポメラニアンになってしまう)だったのだ。 拾われた彼は少しふてくされて、人間に戻った後もたびたび雪隆のもとを訪れる。不遜で遠慮の無いようにみえる態度に振り回される雪隆。 だけど、その生活も心地よく感じ始めて…… (無愛想なポメガ×体格大きめリーマンのお話です)

永遠の快楽

桜小路勇人/舘石奈々
BL
万引きをしたのが見つかってしまい脅された「僕」がされた事は・・・・・ ※タイトル変更しました※ 全11話毎日22時に続話更新予定です

私の彼氏は義兄に犯され、奪われました。

天災
BL
 私の彼氏は、義兄に奪われました。いや、犯されもしました。

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

僕が玩具になった理由

Me-ya
BL
🈲R指定🈯 「俺のペットにしてやるよ」 眞司は僕を見下ろしながらそう言った。 🈲R指定🔞 ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体等とは一切関係ありません。 ※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨 ので、ここで新しく書き直します…。 (他の場所でも、1カ所書いていますが…)

首輪 〜性奴隷 律の調教〜

M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。 R18です。 ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。 孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。 幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。 それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。 新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。

処理中です...