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マンションを出て駅へ向かう。
「行きたいとこがあるならタクシー呼べばいいのに」
「いいんですよ!電車で!」
学生に平気でタクシー使わせんなよな!
電車に乗るのが久しぶりだと言う柊さん。居心地が悪そうに席に腰を下ろす。
「ただでさえ柊さんに養われてて情けないのに・・・俺の事、あんまり甘やかさないでください」
息子って言われるのは面白くないけど、柊さんの収入で生活してるのは事実だし。
「俺の収入で養ってる訳じゃないよ。夏の学費はご両親が遺してくれたお金から出してるだろ」
「でも生活費は柊さん持ちじゃないですか。俺もバイトくらいしたいです」
「バイトは・・・してほしくない」
柊さんの表情が曇る。
「なんでですか?」
「・・・勝手だけど・・・俺の、そばから離れないでほしいから」
え!なにそれ・・・すげぇ甘えんぼ発言なんですけど。
「夏の家族になりたかったのは、きっと俺の方が寂しかったからだと思う。夏のためだって言いながら、俺は自分が孤独な事に辟易していたんだ」
俺も柊さんも、本当の家族と呼べる人は一人もいない。
俺は親戚にも見放されていたし、柊さんも同じような思いをしてたのかもしれないな。
「わかりました。柊さんが望むなら、バイトはしません」
「・・・うん。てかそれ、俺の真似?」
「バレましたか」
「夏って意外と、いい子じゃない。・・・意地悪だ」
「バレましたか」
柊さんがまた「大人をからかうな」って言ったけど、少しふくれっ面をしたこの人は、とても大人に見えなかった。
しばらく電車に揺られて降りた駅から見えたのは、大きな観覧車とジェットコースターのレール。
「遊園地?」
「はい。実は昨日、河森と行く予定だったんですけど、俺、遊園地行った記憶無くて。初めては柊さんと一緒がいいなって思って、途中で引き返したんです」
やべ。そういや河森から何件も着信あったの無視したまんまだ・・・。怒ってるよな、アイツ・・・。
「俺も初めてだよ。遊園地」
「え!マジですか!?」
やべー。すげぇ嬉しいかも。俺の初めての事が、柊さんにとっても初めてだなんて。
河森のことなんかどうでも良くなるな。
「学校休みの日でも、母親がいつも仕事でいなかったし、居ても男と一緒だったから」
なんか・・・気まずい・・・。
「ジェットコースター、1回乗ってみたかったんだよな」
柊さんが瞳を輝かせながら遊園地のゲートに向かって歩き出す。
良かった・・・。嫌な事思い出させたのかと思った。
柊さんの手が俺の手の甲を掠めて、なんだか堪らない気持ちになった。
「手、繋ぎませんか?」
「え、嫌だ」
柊さんは、ふいっ、と顔を背ける。
ガーン・・・!
男ふたり、しかも歳の差もあるし、恥ずかしいのもわかるけど、もうちょっとソフトに断ってくれてもいいじゃん。
「せっかく外に遊びに来たのに、夏に触ったらまた・・・疼いちゃうだろ」
顔を背けたままの柊さんの耳が赤い。
ああ、もうトイレにでも連れ込んで今すぐブチ犯したい。
だけど俺は、セックスだけが全てじゃないって、この人にわかって欲しい。
俺はまだ子供で・・・柊さんみたいな大人に、何か教えたり与えたりするのは、きっと簡単じゃない。
自分だって親の愛情を貰った記憶があるわけじゃない。
でも幸いにも俺は、シスターや施設の職員や仲間たちと一緒に過ごしてきた思い出がある。
柊さんは・・・もしかしたら俺より寂しい思いをして生きてきたのかもしれない。
知らない男とのセックスに金銭以外の意味を求めて、万里さんとの関係に縋って生きてきたんだろうか。
それを知りたいと思うのと同じくらい知りたくないとも思う。
「夏!あの1番デカいのに乗ってみない?すっげー速そう!」
子供みたいにはしゃいで、ゴーっと音を立てて走るコースターを指差す柊さん。
「いいですけど、遊園地初心者の俺達にはハードル高くないですか?もっとこう手頃なサイズから・・・」
「初心者だからこそだろ!小さいのに乗って怖かったら、デカいのに一生乗れないじゃん」
なんだその持論。
「わかりましたよ。乗りましょう・・・俺が気絶しても放置しないでくださいね」
「放置しないけど、思いっきり笑ってやる」
笑顔の柊さん。
家であんなにボロボロ泣いてたのに・・・。可愛すぎんだろこの大人。
「俺達って周りにどう見えてるんでしょうね?」
男どうしだけど・・・もしかしたらカップル?みたいな?
「う~ん・・・援交、かな?」
聞いた俺がバカだった・・・。
「どう見えてたっていいよ。夏が俺の大事な人だって、お前がわかってるならそれでいい」
『大事な人』・・・それって、息子からちょっと昇格したって思っていいのかな。
「行こ、夏」
柊さんに腕を引かれて、ぎゅうっと胸が苦しくなる。
触られて我慢できないのは、俺の方かもしれない。
「行きたいとこがあるならタクシー呼べばいいのに」
「いいんですよ!電車で!」
学生に平気でタクシー使わせんなよな!
電車に乗るのが久しぶりだと言う柊さん。居心地が悪そうに席に腰を下ろす。
「ただでさえ柊さんに養われてて情けないのに・・・俺の事、あんまり甘やかさないでください」
息子って言われるのは面白くないけど、柊さんの収入で生活してるのは事実だし。
「俺の収入で養ってる訳じゃないよ。夏の学費はご両親が遺してくれたお金から出してるだろ」
「でも生活費は柊さん持ちじゃないですか。俺もバイトくらいしたいです」
「バイトは・・・してほしくない」
柊さんの表情が曇る。
「なんでですか?」
「・・・勝手だけど・・・俺の、そばから離れないでほしいから」
え!なにそれ・・・すげぇ甘えんぼ発言なんですけど。
「夏の家族になりたかったのは、きっと俺の方が寂しかったからだと思う。夏のためだって言いながら、俺は自分が孤独な事に辟易していたんだ」
俺も柊さんも、本当の家族と呼べる人は一人もいない。
俺は親戚にも見放されていたし、柊さんも同じような思いをしてたのかもしれないな。
「わかりました。柊さんが望むなら、バイトはしません」
「・・・うん。てかそれ、俺の真似?」
「バレましたか」
「夏って意外と、いい子じゃない。・・・意地悪だ」
「バレましたか」
柊さんがまた「大人をからかうな」って言ったけど、少しふくれっ面をしたこの人は、とても大人に見えなかった。
しばらく電車に揺られて降りた駅から見えたのは、大きな観覧車とジェットコースターのレール。
「遊園地?」
「はい。実は昨日、河森と行く予定だったんですけど、俺、遊園地行った記憶無くて。初めては柊さんと一緒がいいなって思って、途中で引き返したんです」
やべ。そういや河森から何件も着信あったの無視したまんまだ・・・。怒ってるよな、アイツ・・・。
「俺も初めてだよ。遊園地」
「え!マジですか!?」
やべー。すげぇ嬉しいかも。俺の初めての事が、柊さんにとっても初めてだなんて。
河森のことなんかどうでも良くなるな。
「学校休みの日でも、母親がいつも仕事でいなかったし、居ても男と一緒だったから」
なんか・・・気まずい・・・。
「ジェットコースター、1回乗ってみたかったんだよな」
柊さんが瞳を輝かせながら遊園地のゲートに向かって歩き出す。
良かった・・・。嫌な事思い出させたのかと思った。
柊さんの手が俺の手の甲を掠めて、なんだか堪らない気持ちになった。
「手、繋ぎませんか?」
「え、嫌だ」
柊さんは、ふいっ、と顔を背ける。
ガーン・・・!
男ふたり、しかも歳の差もあるし、恥ずかしいのもわかるけど、もうちょっとソフトに断ってくれてもいいじゃん。
「せっかく外に遊びに来たのに、夏に触ったらまた・・・疼いちゃうだろ」
顔を背けたままの柊さんの耳が赤い。
ああ、もうトイレにでも連れ込んで今すぐブチ犯したい。
だけど俺は、セックスだけが全てじゃないって、この人にわかって欲しい。
俺はまだ子供で・・・柊さんみたいな大人に、何か教えたり与えたりするのは、きっと簡単じゃない。
自分だって親の愛情を貰った記憶があるわけじゃない。
でも幸いにも俺は、シスターや施設の職員や仲間たちと一緒に過ごしてきた思い出がある。
柊さんは・・・もしかしたら俺より寂しい思いをして生きてきたのかもしれない。
知らない男とのセックスに金銭以外の意味を求めて、万里さんとの関係に縋って生きてきたんだろうか。
それを知りたいと思うのと同じくらい知りたくないとも思う。
「夏!あの1番デカいのに乗ってみない?すっげー速そう!」
子供みたいにはしゃいで、ゴーっと音を立てて走るコースターを指差す柊さん。
「いいですけど、遊園地初心者の俺達にはハードル高くないですか?もっとこう手頃なサイズから・・・」
「初心者だからこそだろ!小さいのに乗って怖かったら、デカいのに一生乗れないじゃん」
なんだその持論。
「わかりましたよ。乗りましょう・・・俺が気絶しても放置しないでくださいね」
「放置しないけど、思いっきり笑ってやる」
笑顔の柊さん。
家であんなにボロボロ泣いてたのに・・・。可愛すぎんだろこの大人。
「俺達って周りにどう見えてるんでしょうね?」
男どうしだけど・・・もしかしたらカップル?みたいな?
「う~ん・・・援交、かな?」
聞いた俺がバカだった・・・。
「どう見えてたっていいよ。夏が俺の大事な人だって、お前がわかってるならそれでいい」
『大事な人』・・・それって、息子からちょっと昇格したって思っていいのかな。
「行こ、夏」
柊さんに腕を引かれて、ぎゅうっと胸が苦しくなる。
触られて我慢できないのは、俺の方かもしれない。
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