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父への恋心

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あれから、なぜか柊さんと上手く話せない。
好きだと自覚すると、目も合わせられなくて、柊さんに対して素っ気ない態度を取ってしまっている。

「おはよう、夏」

「・・・おはようございます」

「今日は接待で遅くなるから、夕飯ひとりだけど大丈夫そう?」

「はい。だいじょうぶです」

「じゃあ、行ってきます」

「いってらっしゃい」

ああ~、こんな態度取りたいわけじゃないのに、本当は、いってらっしゃいのハグとかしたいくらいなのに!

柊さんは、俺の態度になんの疑問も無さそうだし・・・思春期とでも思ってんだろうな。俺って、やっぱガキだ・・・



「おっはよ、夏くん」

出た。河森千里かわもりちさと
入学式の翌日から馴れ馴れしくしょっちゅう話しかけてくる女。
ちょっと見た目がいいからって、誰もがお前と仲良くなりたいと思ってんじゃねえよ。

「イケメンのお兄ちゃん、社長なんだってね?いいなぁ、わたしもあんなお兄ちゃん欲しいなぁ」

こうやって、柊さんの事ばっか聞いてくるとこもなんかムカつく。

「兄貴じゃねえよ。俺の父親だから」

「あはは、夏くんておもしろいね。今度お兄さん、紹介してね♡」

しねえし!なんなんだよ、あの女。

・・・やっぱ柊さんて、女から見たら、すっげーいい男に見えるんだろーな・・・




「ただいまぁ」

「おかえりなさい。うわ、酒くせえ!・・・また飲んだんですね、ほんと、酒弱いくせに飲み過ぎですよ」

「俺だって飲みたくないよ?飲みたくないけど、これが大人の付き合いってやつなのー!」

大人の・・・俺にはまだ、わからない世界。

「そうですか。風呂湧いてるんで早く入ってきてください」

「はーい」

はあ、大人か・・・

「夏ー、悪い、シャンプー新しいの取ってくれる?」

「ちょっと待っててください」

戸棚から新しいシャンプーを出し、バスルームへ持っていく。

バスルームのドアのすぐ脇にシャンプーを置いて、柊さんに声をかける。

「ここ置いときますね」

・・・

あれ?返事がない。

「柊さん?」

・・・

やっぱりない。

ガチャ

「柊さん?・・・柊さん!」

ドアを開けると、柊さんがバスタブにもたれかかって倒れていた。

「ちょっと!柊さん!」

俺は慌てて服が濡れるのも構わず、倒れている柊さんの体を起こす。

寝てるし・・・
もー!だから飲みすぎだって・・・

寝てるだけとわかって安心した途端、柊さんの濡れた体が目に飛び込んでくる。

俺より白くて、俺より細くて、大人のくせに俺より頼りない体。

体の真ん中がズクッと痛くなる。

やば、マジで笑えねえ。男の人の裸見て勃つなんて。

「ちょ、柊さん!起きてください!風邪引きますって!」

「う・・・ん。ごめん。うっかり寝てた・・・」

「ちゃんと起きて!ちゃんと洗って出てきてくださいね!ほんとに!」

「うん。ごめん。夏、濡れちゃったな。風邪ひくなよ?」

「こっちのセリフですよ!」

柊さんが起き上がったことを確認して、バスルームを出た。

はぁ。ダメだ。柊さんが、好きだ。
どうしよう。



俺は、世界で一番好きになってはいけない人に、恋をしていた。
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