上 下
178 / 210

本命くんと愛人さん 2

しおりを挟む
 翌朝

「オイ、俺もう出るからな」

「うん」

 朝食を食べているオレの顎を持ち上げ、青が思いっきり唇を押し当ててくる。

「ぶぶっ!・・・口にもの入ってる時にちゅーすんな!」

「涼太」

 青の強い眼差しが向けられて、悪い事をしたわけでもないのに、一瞬怯んでしまう。

「な・・・んだよ」

「・・・・・・・・・仕事、気を付けて行ってこいよ」

 は?そんなに力込めて溜めてから言うこと?

「うん。つーかお前の方が気をつけろよ。車乗るんだから」

「ああ。じゃあ行ってくるな」

 どうしたんだ?あいつ。昨夜コンビニ行かせたの怒ってんのか?

 リビングを出ていく青のいつもと違う雰囲気になんだか心配になる。

 ・・・スニーカーお揃いを拒否した事、根に持ってんのかな。





 7時40分
 ほど近い職場へ向かうため、部屋を出てエレベーターに乗り1階のボタンを押す。

「ちょっと待った~」

 エレベーターが閉まる寸前に扉を掴む手が見えて、慌てて『開』のボタンを押した。

「は~、間に合った。お前、行くなら行くで声掛けろよ」

「掛けるわけないじゃないですか。おはようございます」

 エレベーターに乗ってきたのは、雄大さんだった。

「おはよ。一緒に出勤するっつったろ」

「約束はしてませんよ、オレ。・・・いひゃい!」

 いきなり両頬を左右に引っ張られて、痛くて咄嗟に雄大さんの手を強めに払い除けた。

「マジで生意気な口だな。キスで塞いでやりたいよ」

「朝から冗談キッツイです」

「じゃあ夜ならキスしていい?」

「良いわけないでしょう!青に怒られたくないんで!」

 朝からセクハラ全開だな、この人。会社に着くまでに疲れてしまいそうだ。

「あー。怒らせたら怖そうだもんな、彼」

 怖いっつーか・・・怒らせてばっかだとオレのからだ、どうなるかわかんねーし。

「・・・でも、怒らせたら一昨日みたいな涼太の声が毎日聞けるかもしれないな」

「オレの声ですか?」

 青が怒ってる声じゃなくて?

 1階に着いたエレベーターの扉が開き、雄大さんが先に降りる。

「泣きながら あん、とか 、やだやだ、とか言ってる涼太の声」

 ・・・・・・は?・・・ヤってる時の声、聞こえてた!?

「閉まるぞ、エレベーター」

 あまりの恥ずかしさに固まってしまったオレは、雄大さんにエレベーターから引っ張り出された。

「あーんな色気ある声、出るんだな」

 い、色気!?

「気持ち悪い事言わないでくださいよ!オレ、そんな声・・・」

 出してない、と断言できない。実際、自分でも気持ち悪いくらい喘いじゃう時あるし・・・。

 羞恥と動揺で赤くなっていいんだか青くなっていんだかわからない。
 もう冷や汗しか出ない。

「どうせなら、壁越しじゃない声、聞きたいんだけどな」

「え・・・」

 肩を掴まれ、雄大さんの顔が接近してくる。

「もちろん、俺の手で喘がせてる声な」

 わわっ!ちょ・・・


「いってぇ!!」

 身の危険を感じたオレは、雄大さんの脛を思い切り蹴っていた。
 足を抱えてその場に蹲る雄大さん。

 体を震わせて痛みを堪えている雄大さんを見ると、何だか申し訳ない気持ちになってくる。

「すみません、大丈夫ですか?」

「愛人にだってもっと優しくしろよ。痛くて涙出ただろ。俺は涼太と違って泣くシュミないのに~」

 前言撤回。申し訳なくない。完全な正当防衛だったわ。

「ふざけてないで出勤しましょうよ。遅刻したくないです」

 最中の声を聞かれていたかと思うといたたまれなくて、そのまま雄大さんを置いて、会社へと急いだ。





 とは言っても、デスクが向かい合っている以上、顔を合わせない訳にはいかない。
 非常に気まずい・・・。
 雄大さんは何事も無かったかのように、淡々と仕事をしている。

「佐々木~。新店の什器搬入、明後日だから小林のスケジュールも調整しといてくれよ」

「はい」

 部長に言われて、雄大さんはPCをいじり始めた。

「こんなもんかな。涼太、調整したからスケジュール見といて」

 調整されたスケジュールを確認すると・・・

「え!4日間ですか!?」

「そうだよ。あ、中川さん、明後日から3泊で4人分の宿取っといてもらえる?」

「了解しましたぁ」

 4人・・・。雄大さんと2人じゃないのか。助かった~!
 今回の出張は、堂々と青に言えそうだ。



 がしかし、この出張が波乱を呼ぶことになろうとは・・・。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[R-18] 奴隷のレッスン:騎士団所属の末っ子王子は、イケメン奴隷に身も心も奪われる

山葉らわん
BL
【縦読み推奨】 ■ 第一章(第1話〜第9話)  アラディーム国の第七王子であるノモクは、騎士団長ローエの招きを受けて保養地オシヤクを訪れた。ノモクは滞在先であるローエの館で、男奴隷エシフと出会う。  滞在初日の夜、エシフが「夜のデザート」と称し、女奴隷とともにノモクの部屋を訪れる。しかし純潔を重んじるノモクは、「初体験の手ほどき」を断り、エシフたちを部屋から追い返してしまう。 ■ 第二章(第1話〜第10話)  ノモクが「夜のデザート」を断ったことで、エシフは司祭ゼーゲンの立合いのもと、ローエから拷問を受けることになってしまう。  拷問のあと、ノモクは司祭ゼーゲンにエシフを自分の部屋に運ぶように依頼した。それは、持参した薬草でエシフを治療してあげるためだった。しかしノモクは、その意図を悟られないように、エシフの前で「拷問の仕方を覚えたい」と嘘をついてしまう。 ■ 第三章(第1話〜第11話)  ノモクは乳母の教えに従い、薬草をエシフの傷口に塗り、口吻をしていたが、途中でエシフが目を覚ましてしまう。奴隷ごっこがしたいのなら、とエシフはノモクに口交を強要する。 ■ 第四章(第1話〜第9話)  ノモクは、修道僧エークから地下の拷問部屋へと誘われる。そこではギーフとナコシュのふたりが、女奴隷たちを相手に淫らな戯れに興じていた。エークは、驚くノモクに拷問の手引き書を渡し、エシフをうまく拷問に掛ければ勇敢な騎士として認めてもらえるだろうと助言する。 ◾️第五章(第1話〜第10話)  「わたしは奴隷です。あなたを悦ばせるためなら……」  こう云ってエシフは、ノモクと交わる。 ◾️第六章(第1話〜第10話)  ノモクはエシフから新しい名「イェロード」を与えられ、またエシフの本当の名が「シュード」であることを知らされる。  さらにイェロード(=ノモク)は、滞在先であるローエの館の秘密を目の当たりにすることになる。 ◾️第七章(第1話〜第12話)  現在、まとめ中。 ◾️第八章(第1話〜第10話)  現在、まとめ中。 ◾️第九章(第一話〜)  現在、執筆中。 【地雷について】  「第一章第4話」と「第四章第3話」に男女の絡みシーンが出てきます(後者には「小スカ」もあり)。過度な描写にならないよう心掛けていますが、地雷だという読者さまは読み飛ばしてください(※をつけています)。  「第二章第10話」に拷問シーンが出てきます。過度な描写にならないよう心掛けていますが、地雷だという読者さまは読み飛ばしてください(※をつけています)。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

怖いお兄さん達に誘拐されたお話

安達
BL
普通に暮らしていた高校生の誠也(せいや)が突如怖いヤグザ達に誘拐されて監禁された後体を好き放題されるお話。親にも愛されず愛を知らずに育った誠也。だがそんな誠也にも夢があった。だから監禁されても何度も逃げようと試みる。そんな中で起こりゆく恋や愛の物語…。ハッピーエンドになる予定です。

純粋な男子高校生はヤクザの組長に無理矢理恋人にされてから淫乱に変貌する

麟里(すずひ改め)
BL
《あらすじ》 ヤクザの喧嘩を運悪く目撃し目を付けられてしまった普通の高校生、葉村奏はそのまま連行されてしまう。 そこで待っていたのは組長の斧虎寿人。 奏が見た喧嘩は 、彼の恋人(男)が敵対する組の情報屋だったことが分かり本人を痛めつけてやっていたとの話だった。 恋人を失って心が傷付いていた寿人は奏を試してみるなどと言い出す。 女も未体験の奏は、寿人に抱かれて初めて自分の恋愛対象が男だと自覚する。 とはいっても、初めての相手はヤクザ。 あまり関わりたくないのだが、体の相性がとても良く、嫌だとも思わない…… 微妙な関係の中で奏は寿人との繋がりを保ち続ける。 ヤクザ×高校生の、歳の差BL 。 エロ多め。

監禁されて愛されて

カイン
BL
美影美羽(みかげみう)はヤクザのトップである美影雷(みかげらい)の恋人らしい、しかし誰も見た事がない。それには雷の監禁が原因だった…そんな2人の日常を覗いて見ましょう〜

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

俺の番が変態で狂愛過ぎる

moca
BL
御曹司鬼畜ドS‪なα × 容姿平凡なツンデレ無意識ドMΩの鬼畜狂愛甘々調教オメガバースストーリー!! ほぼエロです!!気をつけてください!! ※鬼畜・お漏らし・SM・首絞め・緊縛・拘束・寸止め・尿道責め・あなる責め・玩具・浣腸・スカ表現…等有かも!! ※オメガバース作品です!苦手な方ご注意下さい⚠️ 初執筆なので、誤字脱字が多々だったり、色々話がおかしかったりと変かもしれません(><)温かい目で見守ってください◀

処理中です...