174 / 210
同じ屋根の下に 1
しおりを挟む
今日は土曜日で仕事は休み。
青が仕事のため、オレは暇を持て余していた。
「買い物でもしてくるか・・・。暇すぎるな」
マンションのエントランスを出ると、道路沿いに引越し業者のトラックが停まっていた。
・・・新しい入居者かな?
ウチのマンションは15階建ての小さめのマンションで、オフィス街に近いため部屋の間取りは家族で入居するには少し狭い。
収入に余裕がある単身者か、同棲もしくは新婚さんかな?
そういや、ウチの隣空いてたよな。もしかしてそこに越してきたりすんのかな。死人が出た部屋の隣が嫌で出てったっきり誰も借り手がいないって青の兄ちゃんが言ってたけど・・・。
なんて思いつつ、少し歩いたところにある商店街へ向かう。
「よお、色男!今日はいい金目入ってるよ!」
たまに行く鮮魚店のおっちゃんに声をかけられて、店に入った。
「金目鯛かぁ・・・」
青、和食好きだし、煮付けにしようかな。
「じゃあそれもらう。おっちゃん、おろしといて。後で取りに寄るから」
支払いを先に済ませ、商店街をひと回りして野菜や肉を買って、また鮮魚店へ戻る。
「ほい。こんな色男にメシ作ってもらってる奥さんは幸せもんだなぁ」
おろした金目鯛が入った袋を受け取る。
「奥さん、だったらいいんだけどね」
「なんだなんだ、まだ結婚してねぇのか。あんまり待たせて逃げらんねぇようにしろよ~」
逃げらんない、のはオレの方なんだけどな。
でも、考えてみれば、青に逃げられるって可能性も無くはない。
今までだって、突き放されるのはオレの方じゃなかったっけ・・・?
オレ、ゲイでもないのに、こんな体になっちゃって、青に捨てられたらマジでどうなるんだろう。
女とは上手くいく気しねぇ。他の男求めるようになんのかな。考えたくねーな。
マンションに帰ると、引越し業者は隣の空き部屋に出入りしていた。
「すみません。しばらくバタバタしてると思うんですけど・・・」
業者の男性が部屋に入ろうとするオレに頭を下げてくる。
「全然気になんないんで大丈夫ですよ」
オレもペコッと頭を下げた。
部屋に入って買ってきたものを片付けて、ソファに横になる。
にしても、いくら幽霊とか見た事ないにしても、よく人が死んでた部屋借りれるよな、青。
まあ、そこに住んでるオレもオレだけど。
病院で働いてたら、そういう事も珍しくないから、気にしてないのかな。
そもそも非科学的なもの、信じるようなヤツじゃねーか。オレもだけど・・・。
ぼーっと考えているうちに、睡魔に襲われソファに意識ごと体を預けた。
ピンポーン
ピンポーン
いつの間にか寝てしまったオレは、インターホンの音で目を覚ます。
青が帰る時間にしてはまだ早い。
もしかして、隣の人かな。挨拶しに来た?
「はい」
ドアを開けて、ぎょっとした。
「やほ、涼太」
「ゆ、雄大さん・・・。どうしたんですか」
なぜ雄大さんがここに・・・?エントランスの鍵は開けてないはず。
「これ、引越しの挨拶がわり」
この包み・・・、会社の女性陣がおいしいって言ってた予約しないと食べれないミートパイ・・・!
「涼太、肉好きだろ?」
ミートパイの箱に釘付けになっているオレに気付いた雄大さんが、にっこり微笑む。
「好き、ですけど・・・」
じゃねえだろ、オレ!
「つか、雄大さん休日になんか用ですか?」
雄大さんが訪ねて来たなんて、青が知ったら・・・
「引越しだっつってんじゃん。今日からお隣さんだからよろしくな」
「引越し・・・お隣さん・・・」
もしかして・・・隣に引っ越して来たのって・・・
「雄大さん・・・ですか・・・?」
「月曜から一緒に出勤しような、涼太」
雄大さんは、呆然と立ち尽くすオレの手にミートパイの箱をのせて、「じゃあな」と笑顔で手を振り隣の部屋に入って行った。
・・・嘘だろ。
嘘だろ~!!
青が仕事のため、オレは暇を持て余していた。
「買い物でもしてくるか・・・。暇すぎるな」
マンションのエントランスを出ると、道路沿いに引越し業者のトラックが停まっていた。
・・・新しい入居者かな?
ウチのマンションは15階建ての小さめのマンションで、オフィス街に近いため部屋の間取りは家族で入居するには少し狭い。
収入に余裕がある単身者か、同棲もしくは新婚さんかな?
そういや、ウチの隣空いてたよな。もしかしてそこに越してきたりすんのかな。死人が出た部屋の隣が嫌で出てったっきり誰も借り手がいないって青の兄ちゃんが言ってたけど・・・。
なんて思いつつ、少し歩いたところにある商店街へ向かう。
「よお、色男!今日はいい金目入ってるよ!」
たまに行く鮮魚店のおっちゃんに声をかけられて、店に入った。
「金目鯛かぁ・・・」
青、和食好きだし、煮付けにしようかな。
「じゃあそれもらう。おっちゃん、おろしといて。後で取りに寄るから」
支払いを先に済ませ、商店街をひと回りして野菜や肉を買って、また鮮魚店へ戻る。
「ほい。こんな色男にメシ作ってもらってる奥さんは幸せもんだなぁ」
おろした金目鯛が入った袋を受け取る。
「奥さん、だったらいいんだけどね」
「なんだなんだ、まだ結婚してねぇのか。あんまり待たせて逃げらんねぇようにしろよ~」
逃げらんない、のはオレの方なんだけどな。
でも、考えてみれば、青に逃げられるって可能性も無くはない。
今までだって、突き放されるのはオレの方じゃなかったっけ・・・?
オレ、ゲイでもないのに、こんな体になっちゃって、青に捨てられたらマジでどうなるんだろう。
女とは上手くいく気しねぇ。他の男求めるようになんのかな。考えたくねーな。
マンションに帰ると、引越し業者は隣の空き部屋に出入りしていた。
「すみません。しばらくバタバタしてると思うんですけど・・・」
業者の男性が部屋に入ろうとするオレに頭を下げてくる。
「全然気になんないんで大丈夫ですよ」
オレもペコッと頭を下げた。
部屋に入って買ってきたものを片付けて、ソファに横になる。
にしても、いくら幽霊とか見た事ないにしても、よく人が死んでた部屋借りれるよな、青。
まあ、そこに住んでるオレもオレだけど。
病院で働いてたら、そういう事も珍しくないから、気にしてないのかな。
そもそも非科学的なもの、信じるようなヤツじゃねーか。オレもだけど・・・。
ぼーっと考えているうちに、睡魔に襲われソファに意識ごと体を預けた。
ピンポーン
ピンポーン
いつの間にか寝てしまったオレは、インターホンの音で目を覚ます。
青が帰る時間にしてはまだ早い。
もしかして、隣の人かな。挨拶しに来た?
「はい」
ドアを開けて、ぎょっとした。
「やほ、涼太」
「ゆ、雄大さん・・・。どうしたんですか」
なぜ雄大さんがここに・・・?エントランスの鍵は開けてないはず。
「これ、引越しの挨拶がわり」
この包み・・・、会社の女性陣がおいしいって言ってた予約しないと食べれないミートパイ・・・!
「涼太、肉好きだろ?」
ミートパイの箱に釘付けになっているオレに気付いた雄大さんが、にっこり微笑む。
「好き、ですけど・・・」
じゃねえだろ、オレ!
「つか、雄大さん休日になんか用ですか?」
雄大さんが訪ねて来たなんて、青が知ったら・・・
「引越しだっつってんじゃん。今日からお隣さんだからよろしくな」
「引越し・・・お隣さん・・・」
もしかして・・・隣に引っ越して来たのって・・・
「雄大さん・・・ですか・・・?」
「月曜から一緒に出勤しような、涼太」
雄大さんは、呆然と立ち尽くすオレの手にミートパイの箱をのせて、「じゃあな」と笑顔で手を振り隣の部屋に入って行った。
・・・嘘だろ。
嘘だろ~!!
0
お気に入りに追加
285
あなたにおすすめの小説
僕達の過ち
真田晃
BL
『鈴、好きだ』
『…ん、僕も……』
『なら、一緒に遠くへ行こうか……』
まだ中学生の僕達は
……駆け落ちした
その先には、夢のような生活が待っていると思っていた…
でもそれは、浅はかな考えだったと
直ぐに思い知らされた
TS陸上防衛隊 〝装脚機〟隊の異世界ストラテジー
EPIC
SF
陸上防衛隊のTS美少女部隊(正体は人相悪い兄ちゃん等)と装脚機(ロボット歩行戦車)、剣と魔法とモンスターの異世界へ――
本編11話&設定1話で完結。
たまには働かないと、格好がつかないし、ね?
氷室ゆうり
恋愛
さて、今回は異形化、というか融合系ですね。少しばかり男体化要素もあるかなぁ?杏理君はなんだかんだ私の小説では頑張ってくれます。ちょっとばかり苦手な人もいるかもしれませんが、なるべくマイルドに書いたつもりです。…たぶん。
ああ、ダークにはしていないのでそこはご安心ください。
今回も、r18です。
それでは!
どいつもこいつもかかって来やがれ4th season
pino
BL
頭悪し口悪しのヤンキー絶体絶命!?夏休み中に伊織と浮気をしてしまったが、その時の現場を何者かに盗撮されていて、浮気シーンが写った数々の写真が学校中にばら撒かれてしまう。新学期早々生徒指導室に呼び出されて、今度こそ退学か!?面倒くさがりな貴哉に今回降りかかる面倒事は過去最大級だった。
「誰だよ犯人!見つけ出してぶん殴ってやる!」
出席日数ギリギリの貴哉は無事退学を免れる事が出来るのか!?
他にも球技大会もある二学期編スタートです!
青春ドタバタラブコメディ。
貴哉総受け。総愛され。
他にもカップル出てきます。
BLです。
今回の表紙は、学校一の問題児の一条紘夢くんです。
こちらは4th seasonとなっております。
前作の続きとなっておりますので、より楽しみたい方は、完結している『どいつもこいつもかかって来やがれ』『どいつもこいつもかかって来やがれ2nd season』『どいつもこいつもかかって来やがれ3rd season』を先にお読み下さい。
貴哉視点の話です。
※印がついている話は貴哉以外の視点での話になってます。
今作は途中、視点が色々な人物に変わる時があります。読みにくくなってしまうかもですが、ご了承ください( ; ; )
気弱な男子と強気な女性が入れ替わる話。
氷室ゆうり
恋愛
うーん、最近人気がちょっぴり減ったかもですね。鉄板の入れ替わりで逆転を図ります!
男女の入れ替わりは大人気なはずなので、今後に期待します!
ああ、r18ですので、どうぞよろしく!
それでは!
ゲイの修羅場に鉢合わせてしまいまして。
ミヒロ
BL
大学も休みの昼下がり。カフェで優雅に過ごしていた孝介は隣の席のゲイの修羅場に鉢合わせ。見て見ぬふりしていよう、と考えていた筈なのに。
※表紙イラスト as-AIart- 様(素敵なイラストありがとうございます!)
キセキなんか滅んでしまえ!〜ようやくドロドロに溶けた肉体が戻ったと思ったら、美少女と肉体が入れ替わっている〜
マグローK
青春
かつて体が溶ける不運に見舞われたぼっち体質の主人公遠谷メイト(とおたにめいと)は、クラスだけでなく学校でも浮いている美少女、成山タレカ(なりやまたれか)と肉体が入れ替わってしまう!
過去の伝手を頼り、今回も本人の願いが歪んだ形で叶ってしまうキセキだと判明。
願いを処理してタレカを元の体に戻るため、メイトはタレカの願いを叶えようと奔走する。
果たして、二人は元の体に戻れるのか!?
この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません
この小説は他サイトでも投稿しています。
菊松と兵衛
七海美桜
BL
陰間茶屋「松葉屋」で働く菊松は、そろそろ引退を考えていた。そんな折、怪我をしてしまった菊松は馴染みである兵衛に自分の代わりの少年を紹介する。そうして、静かに去ろうとしていたのだが…。※一部性的表現を暗喩している箇所はありますので閲覧にはお気を付けください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる