拗らせΩは恋を知らない

Hiiho

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ポメラニアンのちオオカミ 2

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触れるか触れないかの指先に ぞわっ と悪寒に似た感覚が襲う。

「前から思ってたけど、茜のパンツってなんで白なんだよ。中透けて見える。えろ」

「なっ!?えろ!? これはっ、高校の時にセバスがプレゼントしてくれて履き心地が良かったから・・・それ以来ずっとこのブランドの白ボクサーしか買ってないし履いていない」

「にしても白一択って。俺が違う色買ってやるから、もう白は履くな」

「えー・・・」

白の何が悪い。スタンダードだし清潔感もあるし、いいと思っていたんだが。

はっ、まさか綾木は、俺がセバスチョイスの下着を履いていることにまで嫉妬しているのか?

「茜には白よりダークカラーの方が似合う!今度から俺が選んだやつ履けよ」

ぶっきらぼうな言い方が、あからさまな嫉妬心を際立たせている。

「返事は?」

「えー・・・、わかった」

下着一枚で何を気にしているんだか。
綾木がこんなに嫉妬深いとは本当に誤算だった。


「早く脱げよ。ホラ、尻振って?」

「わかってる! あっ、触るなっ。そして俺に指図するな!」

下着の裾から入ってくる綾木の指をぎゅっと掴む。

「黙ってその指咥えて見てろ!」

前屈みになって少し脚を開き、小さく尻を左右に振ってみせる。耐え難い屈辱だ。
けれど、やると断言したからにはやり遂げてやる!

「改めて見るとちっせー尻だな。こんなんでよく俺の入ってるよな。可愛い」

か・・・『可愛い』・・・。
綾木からそう言われると、どうも俺の体は勝手に喜んでしまうようだ。
腰の辺りがうずうずして、無意識に きゅ と窄まりが締まる。

恐る恐る両手を履き口に掛け腿まで引き下ろすと、下着に引っかかってしまった屹立が反動をつけて跳ねた。

「うーわ、今の、めっちゃやらしー。ぴょこ、って。ぴょこ、って!」

興奮気味の綾木。

い、いちいち感想を挟むなぁっ!そしてオノマトペはやめてくれ。いかにも小さいと言わんばかりの擬音で表現するんじゃない!


下だけ脱ぐというのも滑稽だと思い、トップスを脱ぎ捨てると

「乳首も立ってんの? 茜って何にでも感じるんだな」

黙らない綾木は逐一俺の体についてのリポートをしたがる。

確かに何にでも感じてしまうのは否定できない。しかしこれは廊下が肌寒いだけで・・・

「後ろ濡れてる」

と追い討ちをかけられ言い訳さえできない。

こんなの、屈辱で羞恥しか感じないはずなのに・・・自分の体を舐めるように見ているのが綾木だと言うだけで、ゾクゾクと悦が背中を駆け下半身が疼く。

見られているだけでは足りなくて、やっぱりその指で触れて欲しい。

「あやき・・・触っ、て。もう・・・」

両手で尻を左右に拡げる。
が、俺の手に重なった綾木の手は円を描くように動き、触れてほしい場所は拡げられたり窄められたりを繰り返すだけ。

それなのに蜜液は内腿に伝うほど溢れてきてしまう。

「ぅ・・・、なん    で・・・」

「期待ハズレのショー見せといてご褒美貰えると思ってんの? これだからお坊ちゃま育ちは困るよな」

「お、俺なりに、頑張ったんだぞ!この歳まで童貞だったのに、その気にさせる術を知っているはずないだろう!」


『欲しい』『好きだ』『抱いてくれ』
口にするのは簡単だ。
ボディランゲージで誘うことがこれほどに難しいとは思わなかった。俺にはその才能は無いようだ・・・


「茜がそんなの知ってたら、もっと困るだろ」

ぐっ と左右に拡げられた窄まりに、ひたっ と生暖かい何かが触れる。指では無い感触。
股の間から見た綾木の顔の位置で、触れた感触は舌なのだと悟る。

「やだっ、綾木、」

ちろちろと小刻みに動き、今度は襞を撫でるようにゆっくりと這う。
ぴちゃぴちゃと水音を立てたかと思えば、じゅるじゅると吸い付くような音が立つ。

触覚にも聴覚にも刺激が強すぎるこの行為が、俺は苦手だ。


全身が粟立ち膝が震える。立っているのが困難になって、折れた膝を床に着いてもなお、体勢を変えた綾木は窄まりを舐り続ける。
両手を捕まえられた俺は、頭を下げ床に押し当て額で上半身を支える。

「ぅあ・・・ッ、やだやだやだぁ、もお、やだッ」

身を捩り体を横に倒そうとしたその時

「暴れんな」

「ひぁ・・・っ」

渇いた音と共に右臀部を痛みが襲い、腰が大きく跳ね上がってしまう。
突然のことで一瞬何が起きたのかわからなかったが、ジンジンと臀部に残った余韻で『綾木に尻を叩かれたのだ』と理解した。


「ぼ・・・うりょくは反・・・対、だと」

大人になって、こんな折檻を受けたのは初めてだ。いや、子供の頃だって経験などしていない。

こんな、こんな・・・

「辱しい?」

はずかしい・・・

「でも茜、軽くイッてる」

「ち・・・・・・っ」

違わない。認めたくは無いが、不覚にも今の衝撃で少し白濁を漏らしてしまったのだ。

綾木になら何をされてもいいと思っていたのは確かだが、こういう意味じゃない。
これではまるで俺が、へ・・・変態、みたいじゃないか・・・。自分にこんな被虐的な部分があったなんて知りたくなかった・・・。


じわりと涙が浮かんで床に体を横たえると、綾木は赤くなった俺の臀部を大きな手のひらで包むように撫でる。

その温かさに ほっと安心する。
これ以上自分でも知らない内側を晒すのは怖い。綾木と一緒にいるだけでは満足出来なくなるのは怖い。
綾木は優しい方がいい。αらしくなくても、俺はお前のそんなところが・・・


としみじみ思っていると、いつの間にかベルトで両手をがっちりと背中で拘束されていることに気付き

「え、あや・・・、ぅんッ」

さっきよりも軽めの痛みが再び臀部を襲う。

「茜が感じてるなら、これは暴力にはなんないよな?」

綾木の胡座の上を横切るようにうつ伏せに上半身を乗せられ、彼の右手にあやされるかの様に尻をぺちぺちと緩く叩かれる。

それに合わせて ひくひく と反応してしまう自分の尻が心底恨めしい。


「嫌だっ、綾木やめて・・・・・・ぁうッ、」

ぱんっ と音を立て叩かれ、腰が浮くと同時に片足も後ろに蹴り上げる格好になると

「本当に嫌なら、前も後ろもこんなに濡らすなよ」

俺の尻を撫でながら綾木は言う。

「う・・・っ、やだぁ。こんなの、俺じゃない・・・」

痛いのに感じて、辱めを受けていることにも感じて。最早、Ωだからと言い訳ができない、ただの性癖ではないか。

ぎゅっと目を閉じると、溜まった涙が頬に流れ落ちる。右手で尻を撫で続ける綾木が、左手で俺の頬を包んで指で涙を拭う。

「もっと茜の感じてるとこ見せて? 藤くんより俺がいいって顔、させたいから」


ああ、やはり嫉妬とは恐ろしいものだ。俺の被虐性だけでなく、綾木の嗜虐性まで露わにしてしまうのだから。



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