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αのキミとΩの僕 1
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「綾木っ!すまないっっ!」
定刻通りにやって来た綾木を、俺は玄関を上がったすぐの所で深く土下座をしながら迎える。
「は!?・・・ちょ、おい、やめろよ茜っ」
綾木は慌てた様子で俺の肩を掴んで上半身を起こそうとしてくる。
「いいや やめない!俺は、Ωだという事を隠し続け、さも偉そうな顔をしたαを気取って、お前や同級生達を欺き続けていたんだ!経歴詐称もいいとこだ。犯罪者も同然の男なんだ。本当に申し訳ない!!」
綾木が許してくれるまで、いや、許してくれなくとも俺はこの頭を床から離すまい・・・!
と思っていたのに、蹲ったままの体制で体が宙に浮いて、俺は大きな荷物のように綾木にリビングまで運ばれてしまう。
「仕事に来た早々なんなんだよいきなり。つーかお前、αはさも偉そうな顔してるって思ってたの?傷付くわ~」
ソファの上に土下座のままの俺を置いて、綾木は大きく息を吐く。
「いやあの・・・一昨日お前に迷惑をかけてしまった事と、高校時代の俺の悪行を詫びたくて・・・」
「知ってた」
「だからすまないと・・・・・・って、え」
今こいつ、「知ってた」と言わなかったか?
「茜がΩだって、知ってたよ」
「・・・それは、でも、部屋で薬を見つけたからだろ?」
「高校の時から知ってた」
こっ、こここっ、高校時代から俺がΩだと、ここ、こいつは知っていたと!?
「嘘だ。だって、俺を典型的αだったと、いい言ったじゃないか!」
ガバッと頭を上げ綾木を見ると、シレッとした顔で俺を見下ろしている。
「その方が茜が喜ぶかと思って。依頼主の機嫌を損ねないようにすんのがプロってもんだろ?」
プロ・・・?
それもハウスキーパーの仕事のうちだと?
「ま、今回はお互い様ってことでいーじゃん。洗濯物あんだろ?俺、先に仕事すっから」
と言って綾木はリビングを出て行ってしまう。
知ってたって・・・? 高校の時から? そんなはずはない。俺はいつだって完璧なαを演じていたはず。
卒業式の日までは発情期も来ていなかったし、だからこそαの綾木が同じクラスにいても平気だった。
う~~~~~ん・・・
どれだけ考えてみても、綾木にいつ気付かれたのか思い当たらない。
「それよかさー、茜って、すっげぇ肌キレイなのな」
「・・・は?」
「Ωって、αやβに比べて歳食っても綺麗で若く見えるって聞くけど、お前はなんか別格って感じだよな」
「・・・・・・・・・は」
リビングへと戻って来た綾木に唐突に言われ、一昨日裸を見られてしまったんだという羞恥と、「綺麗」と言われた嬉しさで、ソファの上 正座のまま真っ赤になって固まってしまう俺。
「体毛なんか全然無かったし、傷もシミもホクロも無い。乳首もアソコも・・・」
「いいい、いちいちっ!言わなくてもいい!」
仕事に来た早々になんなんだ、はこっちの台詞だ!
なんなんだいきなり。
元々Ωは髭も生えないし、首より下は体毛など生えない。ホクロは個体によるらしいが俺にはひとつも無い。
それに、性器も人並みよりは小さ・・・とこれはセンシティブな事だから伏せておこう。
「言いたくなるほど綺麗だったんだって」
「それが、Ωの普通、だ」
もうそれ以上俺を褒めるのはやめろ綾木。
「うっかり襲いそうになるくらい、魅力的だったぞ」
「・・・・・・・・・」
頼むからもうやめて。
体が熱くなって来るから!また変に発情してしまうから!
恥ずかしさなのか何なのかわからず悶える俺をからかうようにニヤニヤ顔で見て、綾木はキッチンカウンターに立ち俺が使いっぱなしにしていた食器を洗い始める。
「ちゃんとメシ食べてくれたんだ?」
「・・・ああ。出前より美味かった。ありがとう」
「仕事だし、別に礼なんか」
そうだ。これは綾木の仕事であって、決して厚意でしてくれてる事じゃない。
もしかしたら良い友人になってくれるかも、などと考えていたのが少し寂しく思える。
「あの、綾木・・・。ひとつ頼みがあるんだが・・・」
「んー?」
三十路の男が言うのは少々気恥しいけれど、俺は、綾木と
「友だちに、なりたい」
「えっ?」
「俺は綾木と、友だちになりたい」
「ヤダ」
はうっっっ!
カウンターの向こうから即答する綾木に、短距離弾道ミサイルを的確に撃ち込まれてしまう俺。
勇気を出して言ったのに、やはりΩの俺なんかじゃ相手にもされないんだろうか。
うう~・・・ショック・・・
「茜」
再び土下座のような体制で蹲る俺の傍に来た綾木が床に腰を下ろす。
「友達、じゃなくてもよくね?」
「どういうことですか」
それは、依頼主と派遣されて来たハウスキーパーの関係で十分だろう、という意味ですか。
「なんで急に敬語・・・いいけど。俺はαだし茜はΩ。例えばだけど、恋人、になったら俺は茜を満たしてやれると思うんだけど?」
・・・恋人、だと?
「綾木っ!すまないっっ!」
定刻通りにやって来た綾木を、俺は玄関を上がったすぐの所で深く土下座をしながら迎える。
「は!?・・・ちょ、おい、やめろよ茜っ」
綾木は慌てた様子で俺の肩を掴んで上半身を起こそうとしてくる。
「いいや やめない!俺は、Ωだという事を隠し続け、さも偉そうな顔をしたαを気取って、お前や同級生達を欺き続けていたんだ!経歴詐称もいいとこだ。犯罪者も同然の男なんだ。本当に申し訳ない!!」
綾木が許してくれるまで、いや、許してくれなくとも俺はこの頭を床から離すまい・・・!
と思っていたのに、蹲ったままの体制で体が宙に浮いて、俺は大きな荷物のように綾木にリビングまで運ばれてしまう。
「仕事に来た早々なんなんだよいきなり。つーかお前、αはさも偉そうな顔してるって思ってたの?傷付くわ~」
ソファの上に土下座のままの俺を置いて、綾木は大きく息を吐く。
「いやあの・・・一昨日お前に迷惑をかけてしまった事と、高校時代の俺の悪行を詫びたくて・・・」
「知ってた」
「だからすまないと・・・・・・って、え」
今こいつ、「知ってた」と言わなかったか?
「茜がΩだって、知ってたよ」
「・・・それは、でも、部屋で薬を見つけたからだろ?」
「高校の時から知ってた」
こっ、こここっ、高校時代から俺がΩだと、ここ、こいつは知っていたと!?
「嘘だ。だって、俺を典型的αだったと、いい言ったじゃないか!」
ガバッと頭を上げ綾木を見ると、シレッとした顔で俺を見下ろしている。
「その方が茜が喜ぶかと思って。依頼主の機嫌を損ねないようにすんのがプロってもんだろ?」
プロ・・・?
それもハウスキーパーの仕事のうちだと?
「ま、今回はお互い様ってことでいーじゃん。洗濯物あんだろ?俺、先に仕事すっから」
と言って綾木はリビングを出て行ってしまう。
知ってたって・・・? 高校の時から? そんなはずはない。俺はいつだって完璧なαを演じていたはず。
卒業式の日までは発情期も来ていなかったし、だからこそαの綾木が同じクラスにいても平気だった。
う~~~~~ん・・・
どれだけ考えてみても、綾木にいつ気付かれたのか思い当たらない。
「それよかさー、茜って、すっげぇ肌キレイなのな」
「・・・は?」
「Ωって、αやβに比べて歳食っても綺麗で若く見えるって聞くけど、お前はなんか別格って感じだよな」
「・・・・・・・・・は」
リビングへと戻って来た綾木に唐突に言われ、一昨日裸を見られてしまったんだという羞恥と、「綺麗」と言われた嬉しさで、ソファの上 正座のまま真っ赤になって固まってしまう俺。
「体毛なんか全然無かったし、傷もシミもホクロも無い。乳首もアソコも・・・」
「いいい、いちいちっ!言わなくてもいい!」
仕事に来た早々になんなんだ、はこっちの台詞だ!
なんなんだいきなり。
元々Ωは髭も生えないし、首より下は体毛など生えない。ホクロは個体によるらしいが俺にはひとつも無い。
それに、性器も人並みよりは小さ・・・とこれはセンシティブな事だから伏せておこう。
「言いたくなるほど綺麗だったんだって」
「それが、Ωの普通、だ」
もうそれ以上俺を褒めるのはやめろ綾木。
「うっかり襲いそうになるくらい、魅力的だったぞ」
「・・・・・・・・・」
頼むからもうやめて。
体が熱くなって来るから!また変に発情してしまうから!
恥ずかしさなのか何なのかわからず悶える俺をからかうようにニヤニヤ顔で見て、綾木はキッチンカウンターに立ち俺が使いっぱなしにしていた食器を洗い始める。
「ちゃんとメシ食べてくれたんだ?」
「・・・ああ。出前より美味かった。ありがとう」
「仕事だし、別に礼なんか」
そうだ。これは綾木の仕事であって、決して厚意でしてくれてる事じゃない。
もしかしたら良い友人になってくれるかも、などと考えていたのが少し寂しく思える。
「あの、綾木・・・。ひとつ頼みがあるんだが・・・」
「んー?」
三十路の男が言うのは少々気恥しいけれど、俺は、綾木と
「友だちに、なりたい」
「えっ?」
「俺は綾木と、友だちになりたい」
「ヤダ」
はうっっっ!
カウンターの向こうから即答する綾木に、短距離弾道ミサイルを的確に撃ち込まれてしまう俺。
勇気を出して言ったのに、やはりΩの俺なんかじゃ相手にもされないんだろうか。
うう~・・・ショック・・・
「茜」
再び土下座のような体制で蹲る俺の傍に来た綾木が床に腰を下ろす。
「友達、じゃなくてもよくね?」
「どういうことですか」
それは、依頼主と派遣されて来たハウスキーパーの関係で十分だろう、という意味ですか。
「なんで急に敬語・・・いいけど。俺はαだし茜はΩ。例えばだけど、恋人、になったら俺は茜を満たしてやれると思うんだけど?」
・・・恋人、だと?
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