拗らせΩは恋を知らない

Hiiho

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運命 2

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12年ぶりに会った茜は、当時と変わらない容姿でそこにいた。少し大袈裟だけど、俺はそう感じた。

いや、やっぱり少し老けたかな?
どっちにしても茜を綺麗だと思った。

発情なんかしていなくても、抱けるものならすぐにでも抱きたい、とも。



高校生の完璧な茜からは想像もつかないほど乱雑に物が散らばった部屋。
荒れてはいるけど、ゴミが落ちていないのが茜らしい。

リビングの掃除をしていて見つけた抑制剤と特効薬。俺はそれをポケットにしまった。

もし茜の発情期が来たら、その時に俺がそばに居たら、抑制剤も特効薬も無い状態でαを求める茜を抱けるかもしれない。邪な俺がいた。


高校時代ろくに会話もしなかった茜と普通に話せている、それだけで舞い上がった。
俺にとって茜は初恋なのかもしれない。三十路でこんな気持ちになるなんて、初恋を拗らせまくってるな、俺・・・。

セックスももちろんしたいけど、茜と並んで歩いてみたい、できるなら手を繋いでみたい、叶うなら寄りかかって来て欲しい。欲望には果てがない。


買い物に託けて、茜を外へ連れ出す。

長期間引き篭っていたという茜は不安そうに俺の服の裾を掴んだ。その姿がただただ愛おしくて、思わず抱き締めたくなった。

でも我慢。
電話で佐藤さんが上手く繋げてくれたけど、担当チェンジを要請していたところを見ると、茜はαの俺に警戒しているはず。
12年越しの再会を無駄にする事だけは避けなきゃな。



我慢・・・

なんて言葉は、茜の発情でどこかへ行ってしまう。

脳ミソを溶かす甘ったるい匂いと熱っぽい瞳、白を薄紅に染めていく肌。

茜の顬から顎に向かって伝い落ちる汗を舐めたい。温度を上げて汗ばむ首筋に吸い付きたい。邪魔な服を剥ぎ取って、全てを暴いてやりたい。

一刻も早く二人きりになりたい。

そして、茜を、犯す。
・・・犯す、犯したい。犯す、犯す・・・

それだけしか考えられなくなってくる。

同じだ。卒業式の日と同じ。
違うのは、あの日 躊躇ったことを、俺はしようとしている。

犯して項を噛んで番にしてしまえば、茜は俺無しじゃ生きられなくなる。例えこいつが俺を嫌おうが憎もうが、体は俺しか求めなくなる。

本能に支配されていく中で、心が嫌だと駄々を捏ねる。茜に愛されたい、と。


歩けないほどに弱った茜を背負うと、本能に逆らおうとする僅かな心までもが崩れそうになった。

それでもどうにかマンションへ戻り、茜をバスルームに閉じ込めΩのフェロモンを遮断する。


「ねえ  あやき、欲しい・・・。頼むから、抱いて・・・」

冷静になろうとしている俺を嘲笑うかのような、ドア一枚向こうからの茜の誘惑。


抱きたいよ!こっちだって抱かせてくれって思ってんだよ!あーもう!


αがΩの誘惑に フェロモンに逆らうのがこんなにも辛く苦しい事だなんて、茜にはわからないだろうな。



俺はボトムスのポケットに手を入れて、くすねておいた特効薬のキャップを外しシャツの袖で見えないようにして隠し持つ。

「あやきの・・・せーし、ほしー・・・。孕んでもいい・・・からぁ」

・・・悶絶。こんな風に茜に言われる日が来るなんて(涙)・・・。しかも再会した初日に!!

好きだから抱きたい。
でも好きだから傷付けたくない。好きだから、同じ気持ちになって欲しい。

αだとかΩだとか・・・そんなの関係無い。
ただの男として、一人の人間として俺を好きになって欲しい。同じ気持ちで茜とひとつになりたい。


だから俺は、本能に任せて茜を抱くなんて、絶対にしない。










な      の      に      !!!

「なんなんだよ!あいつッッ!2回も!」

茜の精液で汚れた下着を洗面台で洗いながら、俺はだんだんと腹ただしくなってくる。

人の気も知らないで、無防備に俺の前で二度も発情なんかしやがって・・・!発情させたいんじゃなくて、惚れさせたいんだよ、俺は!

まあさっきのは俺が誘発したみたいなもんだけど。
でも俺は自分のフェロモンを制御できてるはず。αの匂いに反応したわけじゃなく、一昨日も今日も茜自身のヒートだ。

全く脈が無いワケでもないのか・・・?
茜も俺に惹かれてると期待してもいい?

あいつの匂いは甘すぎて、まるで俺を好きだと言っているようで。

・・・イヤ、あの物言いからして、それは無いか。

俺も俺でエロエロになった茜にメロメロになってしまうから、うっかり手を出さないように気を付けないきゃな・・・。
うっかりキスしてしまったし、うっかり服の上からチンコ扱いちゃったばっかだけど。あークソ、うっかり突っ込んじゃったりなんかしてーよ、マジで!




「あの、・・・綾木・・・」

行き場の無いイライラとムラムラを茜のパンツにぶつける俺の背後で、遠慮がちな声がする。

「なに?」

「あ、えっと・・・パンツ、とか    洗わせてしまって、すまない」

「いいよ、別に。俺にも責任はあるし、気にすんな」

振り返ると、真っ赤な顔で恥ずかしそうに組んだ手をモジモジさせている茜。


ねえ!! そーゆーの反則だから!!
パンツ手洗いされて、そんな可愛い反応する三十路男いる!?
あーもう好き。


高校の時よりも、もっともっと茜を好きになってる。会えない時間が愛を育てると言うのは嘘じゃないらしい。
あの頃は知らなかった茜がひとつずつ顔を出して来て、俺に気を許してるんだという優越感も「好き」に拍車をかける。


「い、いくらそれが綾木の仕事でも、友だちに、精子付きのパンツを洗ってもらうのは・・・やっぱり申し訳なくて・・・その、・・・は、は、恥ずかしいし」

あくまでも、友だち、か。
でもな、茜。友人には「男らしく抱け」や「孕んでもいい」なんてこと言わないんだぞ、普通。


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