マネジメント!

Hiiho

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嫁=最強 1

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「ねえ~!いいでしょ?」

「ダメだっつってんだろ。無理。絶対。死んでも嫌だ」

「お願い、1回だけでいいからぁ」

「・・・なに? そんなに足りねえの?しょうがねぇな・・・」

「あっ! 違・・・っ、待って待って!そうじゃな・・・・・・・・・んっ、・・・ひぁっ、あ───・・・」


  ・・・また失敗。





  万里の鉄壁のガードと俺が快楽に弱いせいで、昨夜もタチポジションを取れなかった・・・。

  なんで万里はあんなに頑なに拒むんだろう。好きな人とセックスするのにそんなに攻めか受けかなんて重要?

  俺だって男なんだから、好きな人に挿れたいって思う。他の誰でもなくて、万里にそう思うのに。


「疲れてないか?」

  仕事を終えてマンションへ向かう車の中で、万里が進行方向を向いたまま聞いてくる。

「なんで?」

「イヤ、なんかいつもより静かだし、・・・昨日は結構無理させたからな」

  ほんとだよ。もう出ない、って言ってんのにしつこく弄ってきてペニス真っ赤になっちゃったし、お尻も腰もめちゃくちゃ痛いんだからな。

「疲れてはない。けど、万里のせいでしばらくお尻は使えない」

「・・・悪かったよ」

「悪いと思ってんなら、今度は俺に挿れさせてよね」

  こんなに大変な思いしてんのが俺だけなんて不公平。

「・・・それは無い。いつも言ってんだろ、俺はネコは無理だって。いい加減しつこいぞ」

  バックミラーに映る万里の目は俺を見ることも無く不機嫌になる。


  なんなの、その感じ・・・。すっごくムカついて来た。

「万里は、俺の体が大事じゃないの?・・・っていうか俺の事ほんとは好きじゃないんだろ!?」

「・・・は?」

  ミラーに映る瞳が、更に不機嫌さを増す。

  だけど、万里より 虫の居所が悪い俺は引かない。

「だってそうじゃん。俺は万里が好きだから、痛くっても辛くっても受け入れてるんだよ? なのに万里は全っ然挿れさせてくんないじゃん!」

  ようやくミラー越しにシートに寄り掛かる俺を見て、目が合うと「はあ」とわざとらしく溜息を吐いて前方へ視線を向ける万里。

「な・・・に、それ。なんで万里が怒ってるみたいになんの?」

「・・・別に。最近はマンション以外ではちゃんと切り替え出来てたのになーと思っただけ」

  なにそれ、なにそれ!話を振ってきたのは万里の方なのに!


  片側3車線の中央、赤信号で車は停まる。

  俺は後部座席のスライドドアを開けて

「もういい!万里なんて大っ嫌い!! ばぁか!!」

  車を降り、停車する車の隙間を抜けて歩道まで走る。

「あっ!! コラ危な・・・」

  開いたままのドアの向こうで万里の声がしたけど、怒りが収まらない俺は、振り返らずにマンションとは反対の方向へ早足で歩く。

  信号が青になり並んで停まっていたたくさんの車が進み始め、交通量の多い車線の中央を走っていた万里の車はUターンできるはずがない。

  遠ざかる黒のミニバンの後ろを歩きながら振り返る。


  万里なんて、もう知らないんだからな!





  あてもなく街を歩いて、時々遠巻きに視線を感じてスマホを向けられたり、話しかけられそうになるのをなんとか躱して・・・気付けば、いま自分がどこにいるのかすらわからなくなっていた。

  どうしよう。財布もスマホもバッグごと万里の車に置いてきてしまった。
  所持品は着けたままのマスクとビーニーだけ。

  コンタクトもつけていなければメガネも無い。瞳の色が隠せなくて、俺だと気付く人達が結構いる。せめて鍔のある帽子だったら良かったのに~。

  とにかく人が多い場所から離れなくちゃ・・・



  細い路地を抜けると、タクシーが並ぶ大通りに出た。

  良かった。タクシーに乗ってマンションへ帰って後で支払えば・・・

  と思ったけど、部屋のキーも持ってないし、車を飛び降りておいて、インターホンで万里に鍵を開けてもらうのも何だか気まずい・・・。俺から謝るのも何となく嫌だ。

  腹が立って咄嗟に飛び出したけど、これからどうしよう、マジで。

  歩き疲れた俺は、ガードパイプに腰掛け俯き、途方に暮れる。



「・・・シウさん?」

  項垂れた頭の上から女性の声がして、思わず顔を上げる。

  すぐ目の前に立つ女性との距離の近さに、慌てて立ち上がり軽く頭を下げて立ち去ろうとしたけど

「待って!あの、覚えていらっしゃらないかもしれないですけど・・・」

  腕を掴まれて振り返ると、どこかで見覚えのある綺麗な女性。

  ・・・この人

「私、河森の妻です」

  そうだ。
  紺のワンピースを着ていて、以前見た着物姿とは印象がだいぶ違うけど、この人、万里の奥さんだ・・・。

「・・・こんにちは」

  何を話していいかわからず、とりあえず頭を下げる。

「ふふ、こんにちは。おひとりだし、違ったらどうしようと思ったんですけど・・・隠しきれてないオーラがあったから」

  上品な仕草で肩までの髪を耳に掛け、優しく笑う綺麗な人。
  近くで見ると万里より歳上には見えるけど、色が白くて線が細くて、男が守ってあげたくなるような日本美人。

「撮影・・・じゃなさそうですね。万里さんは?」

「えっ?・・・・・・とぉ」

  奥さんは万里と俺の関係を知っているはず。マネージャーとタレント以上だってこと。
  つまり、この状況は・・・本妻と不倫相手が顔を突き合わせてるってこと。








    
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