マネジメント!

Hiiho

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閉じ込めたい 1

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  ヒロムとのダブル主演映画がクランクアップし、滞っていたCMの契約も全て受け順調に撮影が進む中、「シウを少し休ませてやれ」との社長命令でスケジュールをゴリゴリに調整してねじ込んだ休みを前にして、興奮を抑えられないシウがリビングの床にゴロゴロと転がっている。


「オフ、オフ!しかも3日も~!ああぁぁ、夢みたい」

「掃除の邪魔になってんぞ。可哀想に」

  床に転がるシウにセンサーが反応して、不規則に動き回るロボットクリーナー。

「なんで俺の方が邪魔者なの。雇われの身で偉そうに、こいつ!おらおらぁ」

  わざとロボットクリーナーの行く手を阻むように転がるシウ。

  綺麗を維持してくれるお掃除機ロボットと仲良くできないから部屋が汚くなるんだろうな、こいつは。


「万里~、ね、ね、オフになったら遊園地行こ!」

「おまえがオフでも俺は仕事だ」

「マジで!?  ねえ!嘘でしょ!?」

「大マジだっつーの。シウにくっついてるだけが仕事じゃねーの、俺は」

  オフにした分のスケジュールの調整もしなきゃならないし、CM契約先の企業にも顔を出さなければならない。

「つまんない・・・。万里が仕事じゃ、結局俺マンションにいるだけじゃん」

  ロボットクリーナーに喧嘩を売るのに飽きたシウは、今度はソファに寝転がる。

「派手な行動しなきゃいい。外出はもう禁止してないだろ」

「はあ?俺をひとりで外に出すの?何かあったらどーすんの、大事な体なんだからな」

  自分で言うか。

「たまには万里と一緒に仕事以外のお出かけしたい」

  クッションを抱えて唇を尖らせる。

「諦めろ。そしてゆっくり休んで日頃の疲れを取る事だけに専念してろ。オフ明けは仕事かっ詰まってんだから」

「・・・はぁい」

  やけに素直。こんな時はたいてい、俺が譲歩するまで駄々を捏ねるのが定石のヤツなのに。

  まあ、素直な方が扱いやすくて助かるけど。







「行ってらっしゃい、万里、んむぅ」

  オフ初日、出勤前に玄関で、まだパジャマ姿のシウからの熱烈な行ってらっしゃいのキス。
  珍しく早起きしたと思ったら、また新婚ごっこか。鬼カワイイかよ。

「行ってきます。・・・つーか、おまえが自主的に早起きするなんて、なんか企んでんじゃねぇだろーな?」

「俺だって早く起きる事もあるよ。そういうのを失礼って言うんだぞ、知らないの?」

  訝しむ俺を睨むシウ。・・・可愛いだけだな。

「ならいいけど。いつも頑張り過ぎてるんだから、ちゃんと休めよ」

「うん。お腹空かして待ってるから、早く帰って来いよな」

「遊園地、連れてってやれなくてごめんな」

「しょうがないよ。仕事だもん」

  寝癖がついたシウの髪を撫でた俺の指をぎゅっと握り、少し浮腫んだ顔で笑う。

  男二人で遊園地っつーのもどうなんだよ と思ったが、連れて行ってやれないとなると申し訳ない気持ちにもなる。
  シウと出掛けたいという思いは少なからず俺にもあるけれど、プライベートでは中々難しい。

  一緒にいたい気持ちを引き摺りながらも俺は事務所へと向かう。






  オフ明けのスケジュールを調整し各メディアに連絡を入れ、企業を回り事務所へ戻ると既に20時過ぎ。

  昼は出前でも取れってシウに言っておいたけど、さすがに夕飯は待ってるよな。すぐ帰ってやらないと・・・

  焦る気持ちを嘲笑うかのようにスマホが震え、父からの着信。なんか、嫌な予感しかしないんですけど。


「・・・はい」

『お前まだ事務所か?』

「・・・はい」

『丁度いい。そのまま河口湖の別荘まで来い』

「今からですか!?」

『今からだと着くのは22時頃か?待ってるぞ。安全運転で急いで来い。あんまり待たせると先方が機嫌を損ねるからな。お前にどうしても会いたいらしい』

「あっ!ちょ親父、先方って・・・」

  強制終了される通話。折り返しても電話に出ない父。
  ここまで来ると、自分は嫌な予感を的中させるプロなんじゃないかとまで思えてくる。


  取り急ぎシウに電話をかけるが、何度コールしても出ない。仕方なく『仕事で帰れないから、ちゃんとメシ食え』とメッセージを入れて、山梨へと車を走らせる。







  別荘に着くと、部屋の灯りが付いていて誰かが居るのだとうかがえる。
  父と『先方』なのだろうか。俺に会いたいなんて、どんな人なんだろう。


  玄関ドアを開けると、真新しそうなスポーツブランドのスニーカーが一足だけ。父はスニーカーを履かない。『先方』一人で待ってるのか?
  そして、このサイズからして『先方』は男・・・一体誰なんだよ。


「すみません。お待たせしてしまいました」

  リビングで待つ人物を確認する前に、頭を下げ待たせた事を詫びる。

  顔を上げると同時に体当たりされた衝撃が体に走って、ふわっと香る嗅ぎなれた匂いが鼻を擽る。

「おかえり、万里!」

「・・・シウ!?」

  なんでおまえがここに?『先方』は・・・?

「万里にも休みくれなきゃもう働かないって社長に言ったら、秘書の人がここまで連れてきてくれたんだ~」

  腰に手を当てて得意げな顔をするシウ。

  俺の事は扱き使う癖に、なんでシウには甘いんだよ親父!

「安心して万里。ちゃんと有給休暇にしてもらったから。これで一緒に行けるな、遊園地!」

  シウは両目を挟むように左右にVサインを作り、目を閉じて愛嬌顔をする。

  親父を意のままに操作してしてしまうシウに、ただただ唖然とするばかりだ・・・。

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