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金子ヒロムが見つめられたら 1
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※この章は、金子ヒロム視点となります。
本編の章「見つめられたら」のスピンオフです。
「今日の撮影、一発本番で決めてくださいね」
「はあ?誰に言ってんのそれ」
「さっすが金子さん。リハ無し本番一発オッケーなんて、誰にでもできる事じゃないっすもんね!」
「ふっ、当然だろ。俺を誰だと思ってるんだよ。リハ無し本番一発オッケーなんて朝メシ前・・・・・・って、え!? ちょ・・・それってドライも無し・・・?」
「はい。監督にはもう言ってありますんで。金子さんが緊張感ある芝居に拘りたいっつー旨を伝えてあります」
もっちーは爽やかな笑顔を俺に向けている。
「ちょ、ちょっと待てよ・・・いくらなんでもカメリハくらいは・・・」
「あー、カメラ固定で撮るらしいっす。その方がリアル感出るだろうからって」
「でも・・・」
「そんなにシウさんと絡みたいんすか」
えっ?
「コレ」
目の前に出されたもっちーのスマホの画面。
薄目に涙を溜めて気持ち良さげに涎を垂らし、白いシーツを掴んでいる裸の・・・・・・俺じゃん!!
し、し、しかも、この腹に付いてる白っぽい液体は、もしかして自分の・・・
「シウさんに見せてもいいんすよ?あんたに手出そうとしてた男は俺が泣かせてやりましたよ、ってね」
「貸せ!!」
もっちーからスマホを奪おうとしたが、腕を高く上げられて、空振りする俺の手。
「消せ!!」
「嫌っすよ。大事な部分は写ってない。腹から上だし別にいいっしょ」
「良くねーよ!俺のっ、せ、せ、精液・・・が・・・」
語尾が小さくなるのは決して恥ずかしいからじゃない!目の前の変人メガネに恐怖を感じているからだ!
「金子さんがシウさんに近付くようなら、ソッコーこの画像晒しちゃうんで気を付けてくださいね」
高く掲げたスマホを振って、もっちーはポケットに入れる。
くそっくそぉ~!!なんなんだよコイツ!
はっ!まさかお前もか・・・・・・お前もシウ狙いなんだな!?
俺はなぁ、クアイルがデビューした時からの古参ペンなんだ。シウ一筋で推し変なんか一度もした事のない生粋のシウペンなんだよ。
しかも!シウのオフィシャルファンクラブにも登録済みなんだ。自分の所属事務所に金まで払ってんだぞ!
もっちーなんかに譲ってたまるかっての!!
だいたいなんで最近、同行が山田じゃねーんだよ。もっちーに だ、だ、抱かれてから気まずくってしょうがないのに。
昨日のスチル撮影だって、まるで監視してるみたいに じっと見てくるし。やりにくくってしょうがねぇ!
「えっと・・・・・・わかりました。じゃあ、セリフ合わせだけしてもらえませんか?」
俺がリハ無しだと告げると、困ったような顔で台本を握り、上目遣いで相
変わらず天使のようなシウ。
なんって真面目で熱心なんだ。そう、そうなんだよ。シウは人一倍努力するアイドルだった。本人はそれをファンには見せまいとしているのに、他のメンバーに暴露されちゃったりなんかして・・・。
そういう所も大好きだ!
だけど・・・今はシウに近付けない。あの画像を晒されてしまったら、俺は終わりだ。
悔しさを噛み締めて、シウを突き放す。
芝居に真剣に向き合おうとしているシウに・・・自分の保身の為に俺は、なんて事をぉぉぉ!
もっちーへの怒りと、自分がシウにとった態度の後悔とが混ざって、スタジオの隅にいるもっちーに詰め寄る。
「おい!倉持!これで満足か?てめぇ絶対に覚えてろよ!俺はなぁ、俺は・・・っ」
「言い付けを守るなんて偉いっすね、ヒロム先輩」
ヨシヨシ、と言って もっちーが俺の頭を撫でる。
「・・・・・・」
一瞬、ほんの一瞬だけど、トクン と胸が高鳴る。
俺は褒められる事にすこぶる弱い。例えばその相手がムカつく変人だとしても、素直に嬉しいと思ってしまう。
身長が同じくらいのもっちーの顔が、真っ直ぐに近付いてくる。
10センチ程先で止まって
「よくできました。その調子っすよ?」
「・・・お、おう」
優しく撫でられながら微笑まれて、不覚にもドキッとしてしまう。
よくできました、なんて何年ぶりに言われただろう。子供の頃は、母親からのこの言葉が聞きたくて必死で芝居に打ち込んだっけ・・・。
不意打ちだ、こんなの。変人メガネのくせに・・・狡いんだよ・・・。
絆されそうな俺を見たもっちーの口元が妖しく歪んだ事に、俺は気付かなかった。
本編の章「見つめられたら」のスピンオフです。
「今日の撮影、一発本番で決めてくださいね」
「はあ?誰に言ってんのそれ」
「さっすが金子さん。リハ無し本番一発オッケーなんて、誰にでもできる事じゃないっすもんね!」
「ふっ、当然だろ。俺を誰だと思ってるんだよ。リハ無し本番一発オッケーなんて朝メシ前・・・・・・って、え!? ちょ・・・それってドライも無し・・・?」
「はい。監督にはもう言ってありますんで。金子さんが緊張感ある芝居に拘りたいっつー旨を伝えてあります」
もっちーは爽やかな笑顔を俺に向けている。
「ちょ、ちょっと待てよ・・・いくらなんでもカメリハくらいは・・・」
「あー、カメラ固定で撮るらしいっす。その方がリアル感出るだろうからって」
「でも・・・」
「そんなにシウさんと絡みたいんすか」
えっ?
「コレ」
目の前に出されたもっちーのスマホの画面。
薄目に涙を溜めて気持ち良さげに涎を垂らし、白いシーツを掴んでいる裸の・・・・・・俺じゃん!!
し、し、しかも、この腹に付いてる白っぽい液体は、もしかして自分の・・・
「シウさんに見せてもいいんすよ?あんたに手出そうとしてた男は俺が泣かせてやりましたよ、ってね」
「貸せ!!」
もっちーからスマホを奪おうとしたが、腕を高く上げられて、空振りする俺の手。
「消せ!!」
「嫌っすよ。大事な部分は写ってない。腹から上だし別にいいっしょ」
「良くねーよ!俺のっ、せ、せ、精液・・・が・・・」
語尾が小さくなるのは決して恥ずかしいからじゃない!目の前の変人メガネに恐怖を感じているからだ!
「金子さんがシウさんに近付くようなら、ソッコーこの画像晒しちゃうんで気を付けてくださいね」
高く掲げたスマホを振って、もっちーはポケットに入れる。
くそっくそぉ~!!なんなんだよコイツ!
はっ!まさかお前もか・・・・・・お前もシウ狙いなんだな!?
俺はなぁ、クアイルがデビューした時からの古参ペンなんだ。シウ一筋で推し変なんか一度もした事のない生粋のシウペンなんだよ。
しかも!シウのオフィシャルファンクラブにも登録済みなんだ。自分の所属事務所に金まで払ってんだぞ!
もっちーなんかに譲ってたまるかっての!!
だいたいなんで最近、同行が山田じゃねーんだよ。もっちーに だ、だ、抱かれてから気まずくってしょうがないのに。
昨日のスチル撮影だって、まるで監視してるみたいに じっと見てくるし。やりにくくってしょうがねぇ!
「えっと・・・・・・わかりました。じゃあ、セリフ合わせだけしてもらえませんか?」
俺がリハ無しだと告げると、困ったような顔で台本を握り、上目遣いで相
変わらず天使のようなシウ。
なんって真面目で熱心なんだ。そう、そうなんだよ。シウは人一倍努力するアイドルだった。本人はそれをファンには見せまいとしているのに、他のメンバーに暴露されちゃったりなんかして・・・。
そういう所も大好きだ!
だけど・・・今はシウに近付けない。あの画像を晒されてしまったら、俺は終わりだ。
悔しさを噛み締めて、シウを突き放す。
芝居に真剣に向き合おうとしているシウに・・・自分の保身の為に俺は、なんて事をぉぉぉ!
もっちーへの怒りと、自分がシウにとった態度の後悔とが混ざって、スタジオの隅にいるもっちーに詰め寄る。
「おい!倉持!これで満足か?てめぇ絶対に覚えてろよ!俺はなぁ、俺は・・・っ」
「言い付けを守るなんて偉いっすね、ヒロム先輩」
ヨシヨシ、と言って もっちーが俺の頭を撫でる。
「・・・・・・」
一瞬、ほんの一瞬だけど、トクン と胸が高鳴る。
俺は褒められる事にすこぶる弱い。例えばその相手がムカつく変人だとしても、素直に嬉しいと思ってしまう。
身長が同じくらいのもっちーの顔が、真っ直ぐに近付いてくる。
10センチ程先で止まって
「よくできました。その調子っすよ?」
「・・・お、おう」
優しく撫でられながら微笑まれて、不覚にもドキッとしてしまう。
よくできました、なんて何年ぶりに言われただろう。子供の頃は、母親からのこの言葉が聞きたくて必死で芝居に打ち込んだっけ・・・。
不意打ちだ、こんなの。変人メガネのくせに・・・狡いんだよ・・・。
絆されそうな俺を見たもっちーの口元が妖しく歪んだ事に、俺は気付かなかった。
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