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社長令息の苦悩 2
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考えれば考えるほどわからない。
・・・わからないんじゃない。シウはまるで、ゲイの俺に宛てがわれたとしか考えられない。
マネージャーとして新人の俺が、元トップアイドルのシウを管理しろと言われたのは・・・初めから俺がシウに夢中になる、と父は確信していたからじゃないのか?
もしそうなら、シウは知っていた?
・・・いや、それはきっと無い。はず。
あれ、でも思い返せばあいつは最初から恥ずかしげもなくチンポ出してなかったっけ?
え、まさかシウも親父に買収されてる?好きだと言ったのも本気じゃない?
ああもう!混乱する!
自宅を後にした俺は、レコーディングスタジオへは行かず、父がいる事務所へと向かった。
談話スペースで、ベテランのタレントマネージャーと談笑する父の姿。
「親父!!」
俺の剣幕に、「お疲れさまです」とそそくさとその場を立ち去るベテランマネージャー。
「どうした?シウの尻の具合が良くないか?」
「・・・っ!」
問い詰める前に、父が先手を打ってくる。
やっぱり親父が仕掛けたのか。
「シウは、俺の性欲処理のために?」
「身も蓋もない言い方だな。シウのビジュアルに不満でもあるか?」
あるわけないだろ。
「シウは同意の上で・・・」
「ははっ、そんなわけないだろう。誰が好き好んで世間知らずのボンボンに尻を差し出すんだ」
シウは、親父に利用されただけか。
「櫻子との結婚だけで、遊び歩いていたお前が大人しくなるなんて端から思ってない。湊くんとでもひっそり関係を持ってる程度なら見逃したけどな」
「湊とのこともリサーチ済みかよ。過保護過ぎるのもいい加減にしてくれ」
「そうそう、シウは丁度いいところに現れただけだ。転落した韓ドルなら、金にならなくともお前に与えるオモチャとしては都合が良かった、それだけだ」
顔色ひとつ変えない父が恐ろしく思える。
「親父と俺の体裁を保つために、シウを犠牲にするつもりだったんだな」
「私達だけの問題じゃない。お前の不祥事は会社の不祥事だ。ここを守るためならどんな犠牲も厭わん。・・・だが誤算だったよ。シウの需要がここまでとは思わなかった」
くくっ、と肩を上げて笑う父。
「お前のオモチャにするには勿体無い逸材だった。もう手を付けたなら、嫌というほど大事にしてやるんだな。シウのマネジメントはお前の仕事だからな」
父は悪びれる様子もなく、俺の傍らをすり抜けその場を立ち去る。
クソ・・・。何時だってそうだ。昔からずっと、俺は父の思い通りに生きてきた。
逆らうつもりもなかったし、それが楽だった。
だけど俺は、自分がゲイだと気付いたとき、初めて親父に支配されない部分が自分の中にあると知って、少しだけ安堵していた。
それなのに・・・
「結局は、親父の手の上か・・・」
拳を作る事すら煩わしいほどの虚無感。
「マネージャー!どこ行ってたんだよ!」
スタジオへ戻るなり、シウの怒声を浴びせられる。
「俺の許可無くどこにも行かない約束だろ!」
「悪い。事務所に用事があって」
「ならそう言えよな!ほんっと使えない!」
ぷいっ、と横を向いて片頬を膨らませるシウ。
『使えない』か・・・。そう思うならいっそマネージャーを解任してくれよ。
そうすればシウは、俺達親子の犠牲にならずに済む。
「・・・なにやってんの?」
「なにって?」
「こうやって俺が怒ってるんだから、機嫌とるのがマネのお仕事だろ!」
横を向いたままのシウが不機嫌そうに言う。
「ああ、そうだな」
『嫌というほど大事にしてやるんだな』
父の言葉が頭を過る。
俺はシウを大事にしたい。それはもう『商品』としてじゃない。
だけどもし、シウが真実を知ったら・・・俺の行為全てが嘘になってしまう。シウを想う気持ちも全て『マネージャーの仕事』として片付けられてしまう。
俺は、シウにどう接したらいいんだ・・・。
「ばんり」
「おい、仕事中は名前で呼ぶな」
「じゃあ、ちゃんと慰めてよ。彼氏のくせにほっとくつもり?」
「彼氏じゃない。マネージャーだろ」
ズキ、と胸が軋んだ。何も知らずに俺の傍に置かれたシウが酷く哀れに思えてくる。
遠慮がちに頭を撫でると、シウは口元を緩ませる。
「仕事中は、だろ。でも少しくらい、いいじゃん。本当は抱きつきたいの、我慢してるんだからな」
シウは緩んだ口元を結び直し、俺のシャツの裾を寂しそうに摘んでくる。
なんでおまえは親父の事務所を選んでしまったんだ。どうして俺なんかを好きになった。
どうして、こんなに愛しくて堪らないんだ。
仕事なんてどうでもいい。今すぐシウを連れてここから逃げてしまえたら・・・
なんて、そんな勇気は俺には無い。
「シウさん、今日はもうOKだそうです。すみません、ミックスダウンに時間かかっちゃって。お疲れさまでした」
「とんでもないです。ありがとうございます。お疲れさまでした」
声を掛けて来たディレクター、プロデューサー達に挨拶をしてスタジオを出る。
スタジオ近くのパーキングに停めてある車のドアを開け、シウが乗り込んだのを確認してノブを引く。
瞬間、シウに腕を思いっきり引かれて、ゆっくりとスライドするドアの隙間に体を滑り込ませる。
「あ!っぶねぇだろ!・・・っ」
バランスを崩して覆い被さる形になった俺の顔を引き寄せて、シウは唇を重ねてくる。
「・・・、シウ!」
「少しだけ。お願い」
離れようとした俺は、強くしがみついてくるシウを振り解けなくなってしまう。
「ばんりが忙しいのわかってる。でもさ、もっと俺のこと見てよ」
「・・・一緒にいれるだけでいいんじゃなかったっけ?」
「そんなのイイコぶっただけに決まってんじゃん。ばんりとキスしたいセックスしたい。そう思ってるの俺だけ!?」
泣きそうなシウの顔に、俺は抑えていた感情が溢れ出そうになる。
・・・わからないんじゃない。シウはまるで、ゲイの俺に宛てがわれたとしか考えられない。
マネージャーとして新人の俺が、元トップアイドルのシウを管理しろと言われたのは・・・初めから俺がシウに夢中になる、と父は確信していたからじゃないのか?
もしそうなら、シウは知っていた?
・・・いや、それはきっと無い。はず。
あれ、でも思い返せばあいつは最初から恥ずかしげもなくチンポ出してなかったっけ?
え、まさかシウも親父に買収されてる?好きだと言ったのも本気じゃない?
ああもう!混乱する!
自宅を後にした俺は、レコーディングスタジオへは行かず、父がいる事務所へと向かった。
談話スペースで、ベテランのタレントマネージャーと談笑する父の姿。
「親父!!」
俺の剣幕に、「お疲れさまです」とそそくさとその場を立ち去るベテランマネージャー。
「どうした?シウの尻の具合が良くないか?」
「・・・っ!」
問い詰める前に、父が先手を打ってくる。
やっぱり親父が仕掛けたのか。
「シウは、俺の性欲処理のために?」
「身も蓋もない言い方だな。シウのビジュアルに不満でもあるか?」
あるわけないだろ。
「シウは同意の上で・・・」
「ははっ、そんなわけないだろう。誰が好き好んで世間知らずのボンボンに尻を差し出すんだ」
シウは、親父に利用されただけか。
「櫻子との結婚だけで、遊び歩いていたお前が大人しくなるなんて端から思ってない。湊くんとでもひっそり関係を持ってる程度なら見逃したけどな」
「湊とのこともリサーチ済みかよ。過保護過ぎるのもいい加減にしてくれ」
「そうそう、シウは丁度いいところに現れただけだ。転落した韓ドルなら、金にならなくともお前に与えるオモチャとしては都合が良かった、それだけだ」
顔色ひとつ変えない父が恐ろしく思える。
「親父と俺の体裁を保つために、シウを犠牲にするつもりだったんだな」
「私達だけの問題じゃない。お前の不祥事は会社の不祥事だ。ここを守るためならどんな犠牲も厭わん。・・・だが誤算だったよ。シウの需要がここまでとは思わなかった」
くくっ、と肩を上げて笑う父。
「お前のオモチャにするには勿体無い逸材だった。もう手を付けたなら、嫌というほど大事にしてやるんだな。シウのマネジメントはお前の仕事だからな」
父は悪びれる様子もなく、俺の傍らをすり抜けその場を立ち去る。
クソ・・・。何時だってそうだ。昔からずっと、俺は父の思い通りに生きてきた。
逆らうつもりもなかったし、それが楽だった。
だけど俺は、自分がゲイだと気付いたとき、初めて親父に支配されない部分が自分の中にあると知って、少しだけ安堵していた。
それなのに・・・
「結局は、親父の手の上か・・・」
拳を作る事すら煩わしいほどの虚無感。
「マネージャー!どこ行ってたんだよ!」
スタジオへ戻るなり、シウの怒声を浴びせられる。
「俺の許可無くどこにも行かない約束だろ!」
「悪い。事務所に用事があって」
「ならそう言えよな!ほんっと使えない!」
ぷいっ、と横を向いて片頬を膨らませるシウ。
『使えない』か・・・。そう思うならいっそマネージャーを解任してくれよ。
そうすればシウは、俺達親子の犠牲にならずに済む。
「・・・なにやってんの?」
「なにって?」
「こうやって俺が怒ってるんだから、機嫌とるのがマネのお仕事だろ!」
横を向いたままのシウが不機嫌そうに言う。
「ああ、そうだな」
『嫌というほど大事にしてやるんだな』
父の言葉が頭を過る。
俺はシウを大事にしたい。それはもう『商品』としてじゃない。
だけどもし、シウが真実を知ったら・・・俺の行為全てが嘘になってしまう。シウを想う気持ちも全て『マネージャーの仕事』として片付けられてしまう。
俺は、シウにどう接したらいいんだ・・・。
「ばんり」
「おい、仕事中は名前で呼ぶな」
「じゃあ、ちゃんと慰めてよ。彼氏のくせにほっとくつもり?」
「彼氏じゃない。マネージャーだろ」
ズキ、と胸が軋んだ。何も知らずに俺の傍に置かれたシウが酷く哀れに思えてくる。
遠慮がちに頭を撫でると、シウは口元を緩ませる。
「仕事中は、だろ。でも少しくらい、いいじゃん。本当は抱きつきたいの、我慢してるんだからな」
シウは緩んだ口元を結び直し、俺のシャツの裾を寂しそうに摘んでくる。
なんでおまえは親父の事務所を選んでしまったんだ。どうして俺なんかを好きになった。
どうして、こんなに愛しくて堪らないんだ。
仕事なんてどうでもいい。今すぐシウを連れてここから逃げてしまえたら・・・
なんて、そんな勇気は俺には無い。
「シウさん、今日はもうOKだそうです。すみません、ミックスダウンに時間かかっちゃって。お疲れさまでした」
「とんでもないです。ありがとうございます。お疲れさまでした」
声を掛けて来たディレクター、プロデューサー達に挨拶をしてスタジオを出る。
スタジオ近くのパーキングに停めてある車のドアを開け、シウが乗り込んだのを確認してノブを引く。
瞬間、シウに腕を思いっきり引かれて、ゆっくりとスライドするドアの隙間に体を滑り込ませる。
「あ!っぶねぇだろ!・・・っ」
バランスを崩して覆い被さる形になった俺の顔を引き寄せて、シウは唇を重ねてくる。
「・・・、シウ!」
「少しだけ。お願い」
離れようとした俺は、強くしがみついてくるシウを振り解けなくなってしまう。
「ばんりが忙しいのわかってる。でもさ、もっと俺のこと見てよ」
「・・・一緒にいれるだけでいいんじゃなかったっけ?」
「そんなのイイコぶっただけに決まってんじゃん。ばんりとキスしたいセックスしたい。そう思ってるの俺だけ!?」
泣きそうなシウの顔に、俺は抑えていた感情が溢れ出そうになる。
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