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鳥籠の天翼
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突き上げられるたびに、全身が海面を跳ねる魚のように震える。
「あっ、んっ、待、って」
一番弱い箇所を相手の先端に潰され、激しい快感が電流となって背筋に流れる。一方的に与えられる性感と絶頂に、甘い雰囲気は纏っていない。満足感もない。
「口を開くな。黙っていろ」
逃げようとすると両肘を後ろに引っ張られ、エアルの背中はエビ反りの体勢になった。肩甲骨から生えた翼が潰されて痛い。ふと横を見れば、壁にかけられた鏡に映る自分と目が合う。
逞しい肉付きの腰が打ち付けられるたびに、華奢な体が飛び跳ねる。白い肌の上に浮いた汗と翼の羽根がベッドの上に散る。
なんにせよこの体勢は後から腰が痛むし、苦しくて好きじゃない。
後孔だけで繋がったまま、相手はガツガツとエアルの尻に腰を打ち付ける。体内で注挿を繰り返す欲望の硬さと膨らみ具合から、相手の果てが近づいていることを察する。この状態になれば、あともう少しの辛抱だ。
「ンっ、んん、ぁっ」
エアルは勝手に漏れてしまう声を喉奥に押し戻した。主の命令とあれば、自分に拒否権はないのだ。エアルは目を閉じる。こうしていると、時間が経つのがいくらか速くなるような気がする。
より一層腰の動きが激しくなるのと同時に、頭の後ろで「出すぞ……っ」と男の低い声が轟く。相手が今日一激しくエアルの中奥を突き立てたのは、次の瞬間だ。
「――……っ!」
男の欲望から熱いものが注がれ、強制的に絶頂を味合わされる。悔しいが、この瞬間だけは憎しみも憤りも忘れてしまう。エアルの小ぶりな中心からピュッピュッと白濁が飛ぶ。
極致の余韻に浸る体は、ビクビクと痙攣を止めない。拘束されていた両肘を解放され、後孔を泡が立つまでかき乱していた欲望が引き抜かれる。
支えを失くしたエアルは、頭から乱れたベッドの上に倒れた。朦朧とする意識を保ちつつ、上半身をなんとか起こす。枕の下に手を入れる。あらかじめ用意していた布で、精液にまみれた後孔を拭いた。
「主人より先に事後処理とは図が高いな」
乱れた息を整えながら見上げると、レイモンド王がこちらを冷たい目で見下ろしていた。
「申し訳ございません。今日は行為中に『出すな』とは命じられていませんでしたので」
「相変わらず口が達者な奴だ」
エアルは後ろを拭う手を止める。
「今から栓をしますか?」
「もうよい」
ここ最近の遊戯の一環として、レイモンドはエアルの中に放った精液を掻き出さないよう命じていた。人の男根を模した玩具や、複数のビーズが繋がれた棒状の物を使い、後孔に栓をされることもしょっちゅうだった。
栓を二回戦目で引き抜き、精液と愛液でぐしょぐしょに蒸れた穴を眺めるも良し。栓をしたまま、教育係の業務に戻されるエアルの反応を眺めるも良し。
旺盛だった二十代の頃に比べれば手粗さは落ち着いたが、まだまだ下の方は現役だ。しかもねちっこい。歴代の王の中でも、性欲の強さと性癖の偏りは群を抜いている。
エアルはザウシュビーク国の歴史の中で、未来の王である王子や王女たちの教育係をしてきた。それ以外にも、早くに妻や側室を亡くした王たちの性欲処理をしているのだ。
ザウシュビーク国の王族は男系で、君主は建国以来男しか即位したことがない。しかし王になった男は、みな早くに妻や側室を亡くす宿命を背負っている。そんな男やもめの欲を満たし、慰めること――それがエアルのもう一つの仕事なのだ。
レイモンドはエアルの横たわるベッドから離れると、ソファの背もたれにかけていたガウンを一枚だけ羽織った。窓際に用意されていた酒瓶からブランデーをグラスに注ぎ、透明ガラスを一気に口から体内へと流し込む。
レイモンドはローシュの実の父親であり、三十五歳にしてザウシュビーク国の現国王だ。実年齢より十も二十も老けて見えるのは、肉付きのいい全身を覆う濃い体毛と口周りに生やした髭だけのせいではないだろう。
エアルは体を拭うと、枕の位置を戻しローブを着た。襟元を押さえながらベッドを降りる。広々とした王の寝室から脱しようとドアに向かう。
「待て」
窓際に立つ王に呼び止められたのは、両開きの扉に手をかけようとしたときだ。
高圧的な重低音の声は、聞く者の身動きを封じる効果がある。切れ長の目と眉間に深く刻まれた皺は、よく言えば一国を担う王としての威厳があり、悪く言えば雪を被った鉄のような冷たさを感じさせるのだ。
それは使用人だけではなく、息子たちも感じているようだ。レイモンドの足音が渡り廊下から聞こえてくるだけで、それまで遊んでいたローシュとカリオの動きがピタッと止まる様を何度も見てきた。
「侍女に煙草を持ってこさせましょうか?」
呼び止めるだけ呼び止めた男に提案するが、レイモンドは「要らぬ」とだけ答えた。天井のシャンデリアが、窓から射し込む西日にきらきらと反射している。
「教育係から見て、あれはどうだ」
「『あれ』――ローシュ様のことでしょうか?」
レイモンドは二杯目のブランデーに口をつけて「そうだ」と肯定する。
「いずれこの国を担うだけの器なのか、それ相応の力量があるのか……今のおまえから見てどう考える?」
レイモンドが息子のことを気にかけるのは珍しかった。ローシュが生まれてこの方まったく関心を示さず、幼い我が子を一度も抱いたことがないはずだ。そんな男でも、息子の将来は心配するものなんだなと興味深かった。
「そうですね。大雑把な言い方になってしまいますが、悪くはないと思います」
エアルは忖度無しで答えた。ほう、とレイモンドがちらりとこちらに目をやる。
「覚えも速く、応用についてもご自分から積極的に難問へ挑戦されていると各教科の家庭教師から聞きます。剣技に関しては、先日騎士隊長から一本取ったそうで」
「騎士隊長――ガロン隊長に勝ったというのか?」
ガロン隊長は王族専属の騎士団員の中で一番の大男だ。
「はい。ローシュ様はまだ十一歳の身でありながら、彼に勝利するほどの実力をお持ちです。数年後には騎士団長さえも打ち負かすほどの腕前になると思われます。まさに王になるために生まれてきたお方かと」
反応がよかったのは最初だけだった。息子に対する高い評価を続けて聞かせても、それ以上の反応が返ってくることはなかった。レイモンドは表情を一切変えずに「そうか」と、空いたグラスをテーブルの上に置いた。
「飛行訓練については、もとはと言えば初手にミスをした私に責任があります。今後ローシュ様が苦手意識を無くし、克服できるまでご指導させていただければと」
とってつけたように飛行訓練の現状についても報告する。騎士隊長に勝ったこと以外は、レイモンドの興味を掻き立てることはなかったようだ。王は「おまえに任せる」と言い放ち、話を終わらせた。
ローシュは生意気でムカつくこともあるが、実際に飛行訓練以外での成績がいいのは本当だ。かつての王たちの少年期と比較すると、その差は歴然。あくまでもこのまま成長し、大人になればの話ではあるものの、王としての素質は誰よりも備わっているのではとエアルは感じている。
それは他の使用人たちも感じていることらしく、子どもながらローシュの評判は上々だ。
ローシュが大人になるのは九年後。二十歳になったら、ローシュは成年王族となる。今より背が伸び、声も低くなっているだろう。
数百年を生きる自分にとっては、九年という歳月はあまりにも短く、体や見た目にも変化はない。でも人間にとっては、一人の少年少女が次世代の命を生み出すほどに成長する年月なのだ。
そんなことを考えていたエアルだが、レイモンドの声で我に返った。
ふと横を見ると、いつの間にかレイモンドの顔が近くに来ていた。
「あれが十八の齢を迎えたら――わかっているだろうな」
頬に息を吹きかけられ、羽織ったばかりのローブをするりと脱がされる。青みがかったローブが床に落ち、先ほどレイモンドに吸われて赤い点を散らした白い肌があらわになる。首筋をブランデーのアルコールで熱くなった舌に舐め取られ、ぞわっとした。
「もちろん、です……っ。ずっと、やってきた、こと、ですから……っ」
鎖骨を舐められながら、レイモンドの指が胸の突起を指で弾いた。その瞬間、エアルは「あッ!」と甘い声で応えてしまった。
レイモンドの大きな手によって頭を上から押さえつけられ、エアルは無抵抗な膝を折って跪く。目の前に現れた屹立は、すっかり腹まで勃ち上がっている。グロテスクな見た目に気持ち悪さを感じつつも、求められるとすぐに興奮することができる自分に呆れる。
王の欲も満たし終えたことだし、ひと通りローシュの報告も済ませた。さすがにもう退散してもいいだろうと思っていたが甘かった。
「舐めて綺麗にしろ」
冷たい声が降る。何度も思い知るが、自分に拒否権などない。
これは業だ。この国に一人生き延びてしまったがゆえに与えられた仕事だ。人間に屈した罰でも、フリューゲルとしての矜持を捨てた罰でもない。淡々とこなすことが自分にとっての正しい道なのだとエアルは信じている。
エアルは手を伸ばし、男のそれを握った。自分は鳥籠に捕らわれたフリューゲルだ。
翼があったって、自由に飛ぶことは叶わない。
手に納まらないほど太い男自身に顔を近づける。エアルは唾を舌の上に集めてから、ゆっくりと口を開けた。
突き上げられるたびに、全身が海面を跳ねる魚のように震える。
「あっ、んっ、待、って」
一番弱い箇所を相手の先端に潰され、激しい快感が電流となって背筋に流れる。一方的に与えられる性感と絶頂に、甘い雰囲気は纏っていない。満足感もない。
「口を開くな。黙っていろ」
逃げようとすると両肘を後ろに引っ張られ、エアルの背中はエビ反りの体勢になった。肩甲骨から生えた翼が潰されて痛い。ふと横を見れば、壁にかけられた鏡に映る自分と目が合う。
逞しい肉付きの腰が打ち付けられるたびに、華奢な体が飛び跳ねる。白い肌の上に浮いた汗と翼の羽根がベッドの上に散る。
なんにせよこの体勢は後から腰が痛むし、苦しくて好きじゃない。
後孔だけで繋がったまま、相手はガツガツとエアルの尻に腰を打ち付ける。体内で注挿を繰り返す欲望の硬さと膨らみ具合から、相手の果てが近づいていることを察する。この状態になれば、あともう少しの辛抱だ。
「ンっ、んん、ぁっ」
エアルは勝手に漏れてしまう声を喉奥に押し戻した。主の命令とあれば、自分に拒否権はないのだ。エアルは目を閉じる。こうしていると、時間が経つのがいくらか速くなるような気がする。
より一層腰の動きが激しくなるのと同時に、頭の後ろで「出すぞ……っ」と男の低い声が轟く。相手が今日一激しくエアルの中奥を突き立てたのは、次の瞬間だ。
「――……っ!」
男の欲望から熱いものが注がれ、強制的に絶頂を味合わされる。悔しいが、この瞬間だけは憎しみも憤りも忘れてしまう。エアルの小ぶりな中心からピュッピュッと白濁が飛ぶ。
極致の余韻に浸る体は、ビクビクと痙攣を止めない。拘束されていた両肘を解放され、後孔を泡が立つまでかき乱していた欲望が引き抜かれる。
支えを失くしたエアルは、頭から乱れたベッドの上に倒れた。朦朧とする意識を保ちつつ、上半身をなんとか起こす。枕の下に手を入れる。あらかじめ用意していた布で、精液にまみれた後孔を拭いた。
「主人より先に事後処理とは図が高いな」
乱れた息を整えながら見上げると、レイモンド王がこちらを冷たい目で見下ろしていた。
「申し訳ございません。今日は行為中に『出すな』とは命じられていませんでしたので」
「相変わらず口が達者な奴だ」
エアルは後ろを拭う手を止める。
「今から栓をしますか?」
「もうよい」
ここ最近の遊戯の一環として、レイモンドはエアルの中に放った精液を掻き出さないよう命じていた。人の男根を模した玩具や、複数のビーズが繋がれた棒状の物を使い、後孔に栓をされることもしょっちゅうだった。
栓を二回戦目で引き抜き、精液と愛液でぐしょぐしょに蒸れた穴を眺めるも良し。栓をしたまま、教育係の業務に戻されるエアルの反応を眺めるも良し。
旺盛だった二十代の頃に比べれば手粗さは落ち着いたが、まだまだ下の方は現役だ。しかもねちっこい。歴代の王の中でも、性欲の強さと性癖の偏りは群を抜いている。
エアルはザウシュビーク国の歴史の中で、未来の王である王子や王女たちの教育係をしてきた。それ以外にも、早くに妻や側室を亡くした王たちの性欲処理をしているのだ。
ザウシュビーク国の王族は男系で、君主は建国以来男しか即位したことがない。しかし王になった男は、みな早くに妻や側室を亡くす宿命を背負っている。そんな男やもめの欲を満たし、慰めること――それがエアルのもう一つの仕事なのだ。
レイモンドはエアルの横たわるベッドから離れると、ソファの背もたれにかけていたガウンを一枚だけ羽織った。窓際に用意されていた酒瓶からブランデーをグラスに注ぎ、透明ガラスを一気に口から体内へと流し込む。
レイモンドはローシュの実の父親であり、三十五歳にしてザウシュビーク国の現国王だ。実年齢より十も二十も老けて見えるのは、肉付きのいい全身を覆う濃い体毛と口周りに生やした髭だけのせいではないだろう。
エアルは体を拭うと、枕の位置を戻しローブを着た。襟元を押さえながらベッドを降りる。広々とした王の寝室から脱しようとドアに向かう。
「待て」
窓際に立つ王に呼び止められたのは、両開きの扉に手をかけようとしたときだ。
高圧的な重低音の声は、聞く者の身動きを封じる効果がある。切れ長の目と眉間に深く刻まれた皺は、よく言えば一国を担う王としての威厳があり、悪く言えば雪を被った鉄のような冷たさを感じさせるのだ。
それは使用人だけではなく、息子たちも感じているようだ。レイモンドの足音が渡り廊下から聞こえてくるだけで、それまで遊んでいたローシュとカリオの動きがピタッと止まる様を何度も見てきた。
「侍女に煙草を持ってこさせましょうか?」
呼び止めるだけ呼び止めた男に提案するが、レイモンドは「要らぬ」とだけ答えた。天井のシャンデリアが、窓から射し込む西日にきらきらと反射している。
「教育係から見て、あれはどうだ」
「『あれ』――ローシュ様のことでしょうか?」
レイモンドは二杯目のブランデーに口をつけて「そうだ」と肯定する。
「いずれこの国を担うだけの器なのか、それ相応の力量があるのか……今のおまえから見てどう考える?」
レイモンドが息子のことを気にかけるのは珍しかった。ローシュが生まれてこの方まったく関心を示さず、幼い我が子を一度も抱いたことがないはずだ。そんな男でも、息子の将来は心配するものなんだなと興味深かった。
「そうですね。大雑把な言い方になってしまいますが、悪くはないと思います」
エアルは忖度無しで答えた。ほう、とレイモンドがちらりとこちらに目をやる。
「覚えも速く、応用についてもご自分から積極的に難問へ挑戦されていると各教科の家庭教師から聞きます。剣技に関しては、先日騎士隊長から一本取ったそうで」
「騎士隊長――ガロン隊長に勝ったというのか?」
ガロン隊長は王族専属の騎士団員の中で一番の大男だ。
「はい。ローシュ様はまだ十一歳の身でありながら、彼に勝利するほどの実力をお持ちです。数年後には騎士団長さえも打ち負かすほどの腕前になると思われます。まさに王になるために生まれてきたお方かと」
反応がよかったのは最初だけだった。息子に対する高い評価を続けて聞かせても、それ以上の反応が返ってくることはなかった。レイモンドは表情を一切変えずに「そうか」と、空いたグラスをテーブルの上に置いた。
「飛行訓練については、もとはと言えば初手にミスをした私に責任があります。今後ローシュ様が苦手意識を無くし、克服できるまでご指導させていただければと」
とってつけたように飛行訓練の現状についても報告する。騎士隊長に勝ったこと以外は、レイモンドの興味を掻き立てることはなかったようだ。王は「おまえに任せる」と言い放ち、話を終わらせた。
ローシュは生意気でムカつくこともあるが、実際に飛行訓練以外での成績がいいのは本当だ。かつての王たちの少年期と比較すると、その差は歴然。あくまでもこのまま成長し、大人になればの話ではあるものの、王としての素質は誰よりも備わっているのではとエアルは感じている。
それは他の使用人たちも感じていることらしく、子どもながらローシュの評判は上々だ。
ローシュが大人になるのは九年後。二十歳になったら、ローシュは成年王族となる。今より背が伸び、声も低くなっているだろう。
数百年を生きる自分にとっては、九年という歳月はあまりにも短く、体や見た目にも変化はない。でも人間にとっては、一人の少年少女が次世代の命を生み出すほどに成長する年月なのだ。
そんなことを考えていたエアルだが、レイモンドの声で我に返った。
ふと横を見ると、いつの間にかレイモンドの顔が近くに来ていた。
「あれが十八の齢を迎えたら――わかっているだろうな」
頬に息を吹きかけられ、羽織ったばかりのローブをするりと脱がされる。青みがかったローブが床に落ち、先ほどレイモンドに吸われて赤い点を散らした白い肌があらわになる。首筋をブランデーのアルコールで熱くなった舌に舐め取られ、ぞわっとした。
「もちろん、です……っ。ずっと、やってきた、こと、ですから……っ」
鎖骨を舐められながら、レイモンドの指が胸の突起を指で弾いた。その瞬間、エアルは「あッ!」と甘い声で応えてしまった。
レイモンドの大きな手によって頭を上から押さえつけられ、エアルは無抵抗な膝を折って跪く。目の前に現れた屹立は、すっかり腹まで勃ち上がっている。グロテスクな見た目に気持ち悪さを感じつつも、求められるとすぐに興奮することができる自分に呆れる。
王の欲も満たし終えたことだし、ひと通りローシュの報告も済ませた。さすがにもう退散してもいいだろうと思っていたが甘かった。
「舐めて綺麗にしろ」
冷たい声が降る。何度も思い知るが、自分に拒否権などない。
これは業だ。この国に一人生き延びてしまったがゆえに与えられた仕事だ。人間に屈した罰でも、フリューゲルとしての矜持を捨てた罰でもない。淡々とこなすことが自分にとっての正しい道なのだとエアルは信じている。
エアルは手を伸ばし、男のそれを握った。自分は鳥籠に捕らわれたフリューゲルだ。
翼があったって、自由に飛ぶことは叶わない。
手に納まらないほど太い男自身に顔を近づける。エアルは唾を舌の上に集めてから、ゆっくりと口を開けた。
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