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心霊探偵はエレガントに〜karma〜
探偵は刑事を誘う/8
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昨日気絶してから一度も会っていなかった。崇剛がいるとも言っていなかった。千里眼の持ち主にはどんなふうに日常が映っているのか、ダルレシアンは気になった。
「審神者もできましたから、間違いありませんよ」
ここは結界も張っていない邪神界からはっきりと見える場所。間違った霊視をさせられる可能性は大だったが、天使が伝えきたので事実として確定だ。
「審神者をするんだね、キミはきちんと」
ダルレシアンは言いながら、シュトライツのネットで噂の占い師を思い浮かべた。彼らの無責任な発言に教祖としては警告を出したり、取り締まったりの業務も多々あった。
一流の聖霊師は「えぇ」と優雅に微笑み、
「ですから、名前にも屋敷にも覚えがあったというわけです。魂に記憶が刻まれていたのかもしれませんね」
「ってことは、ボクは元の場所へ戻ったのかな?」
ダルレシアンは後ろへ振り返り、遠ざかるベルダージュ荘を思い浮かべた。
「そうかもしれませんね」
神ならば、簡単にやってのけるだろうと、崇剛は納得した。運命的な出会いをしたふたりを乗せて、リムジンは山道を降ってゆく。
*
実りの秋である田園風景を抜けて、花冠国の首都にある中心街へとリムジンはやって来た。さっきまでは、順調に街頭の柱を見送っていたが、渋滞に巻き込まれ、進んでは止まりを繰り返している。
歩道を行き交う人を、聡明な瑠璃紺色の瞳はしばらく追いかけていたが、
「あ、着物だ!」他国からきたダルレシアンは物珍しそうに感激して、「可愛い」鮮やかな黄色の着物を着た女がリムジンの横を通り過ぎてゆく。
「女の子も可愛い。ふふっ」
崇剛の冷静な水色の瞳はついっと細められた。涼介の夢では男色家という話だったが、これは違っていたのかもしれない。そうすると、可能性の数値を変えなければ――
「あれは何ていう服?」
「どちらですか?」
ダルレシアンに呼ばれて、崇剛は車窓へと視線を移すと、交差点の歩道で、信号待ちをしている男を指差していた。
「あそこに立ってる男の人が着てる着物とちょっと違うもの」
シュトライツ国の人間にとっては、花冠国の独特の文化は興味がそそられるものばかり。
「あちらは、袴と言います」
「かっこいい」
精巧な頭脳に記録して、ダルレシアンはファッション雑誌でも眺めるようにしていたが、不意に信号が変わり、男が歩き出した。洋服とは違った布地の使い方で、特にスカートみたいに見えるところが、ダルレシアンの心を大きく揺すぶった。
「男の人もかっこいい」
国で一番大きな交差点を通過して、緩和された渋滞。ゆっくりと走り出すリムジンの外で、行き交う人々を瑠璃紺色の瞳は追いかけてを繰り返す。
「素敵な人がいっぱいいる」
白いローブの下で組んでいた足を、ダルレシアンはパタパタとリズムでも取るようにしながら、過ぎてゆく景色を堪能する。
「ふふ~♪」
ゴセック ガヴォット。
どこまでも続くお花畑。柔らかで暖かな風。妖精とともにスキップするような演奏記号――スタッカートが次々に紡がれる軽い曲調。
を鼻歌で歌い始めた元教祖の隣で、崇剛はあごに手を当て、男色家でもなくストレートでもなく、別の可能性があるのではとにらむ。そんなふたりを乗せて、リムジンは治安省へと向かっていった。
「審神者もできましたから、間違いありませんよ」
ここは結界も張っていない邪神界からはっきりと見える場所。間違った霊視をさせられる可能性は大だったが、天使が伝えきたので事実として確定だ。
「審神者をするんだね、キミはきちんと」
ダルレシアンは言いながら、シュトライツのネットで噂の占い師を思い浮かべた。彼らの無責任な発言に教祖としては警告を出したり、取り締まったりの業務も多々あった。
一流の聖霊師は「えぇ」と優雅に微笑み、
「ですから、名前にも屋敷にも覚えがあったというわけです。魂に記憶が刻まれていたのかもしれませんね」
「ってことは、ボクは元の場所へ戻ったのかな?」
ダルレシアンは後ろへ振り返り、遠ざかるベルダージュ荘を思い浮かべた。
「そうかもしれませんね」
神ならば、簡単にやってのけるだろうと、崇剛は納得した。運命的な出会いをしたふたりを乗せて、リムジンは山道を降ってゆく。
*
実りの秋である田園風景を抜けて、花冠国の首都にある中心街へとリムジンはやって来た。さっきまでは、順調に街頭の柱を見送っていたが、渋滞に巻き込まれ、進んでは止まりを繰り返している。
歩道を行き交う人を、聡明な瑠璃紺色の瞳はしばらく追いかけていたが、
「あ、着物だ!」他国からきたダルレシアンは物珍しそうに感激して、「可愛い」鮮やかな黄色の着物を着た女がリムジンの横を通り過ぎてゆく。
「女の子も可愛い。ふふっ」
崇剛の冷静な水色の瞳はついっと細められた。涼介の夢では男色家という話だったが、これは違っていたのかもしれない。そうすると、可能性の数値を変えなければ――
「あれは何ていう服?」
「どちらですか?」
ダルレシアンに呼ばれて、崇剛は車窓へと視線を移すと、交差点の歩道で、信号待ちをしている男を指差していた。
「あそこに立ってる男の人が着てる着物とちょっと違うもの」
シュトライツ国の人間にとっては、花冠国の独特の文化は興味がそそられるものばかり。
「あちらは、袴と言います」
「かっこいい」
精巧な頭脳に記録して、ダルレシアンはファッション雑誌でも眺めるようにしていたが、不意に信号が変わり、男が歩き出した。洋服とは違った布地の使い方で、特にスカートみたいに見えるところが、ダルレシアンの心を大きく揺すぶった。
「男の人もかっこいい」
国で一番大きな交差点を通過して、緩和された渋滞。ゆっくりと走り出すリムジンの外で、行き交う人々を瑠璃紺色の瞳は追いかけてを繰り返す。
「素敵な人がいっぱいいる」
白いローブの下で組んでいた足を、ダルレシアンはパタパタとリズムでも取るようにしながら、過ぎてゆく景色を堪能する。
「ふふ~♪」
ゴセック ガヴォット。
どこまでも続くお花畑。柔らかで暖かな風。妖精とともにスキップするような演奏記号――スタッカートが次々に紡がれる軽い曲調。
を鼻歌で歌い始めた元教祖の隣で、崇剛はあごに手を当て、男色家でもなくストレートでもなく、別の可能性があるのではとにらむ。そんなふたりを乗せて、リムジンは治安省へと向かっていった。
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