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心霊探偵はエレガントに〜karma〜

Time of judgement/14

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「それでは、カミエの右肩を狙って放ちます~。彼を狙います~。負ける可能性が高くなりますからね、うふふふっ」

 味方を狙うと宣言をしたのに、シズキは銃口をはずした。

「それでいい」

 俺様天使はそう言うと、ラジュの右肩の上で、拳銃を横向きに構えた。

 シズキは決して気短な性格ではなかったが、いつまで経っても、ラジュの武器が準備完了にならないため、

「もたもたするな、早くしろ!」

 拳銃は再びラジュの頭に突きつけられ、人質を取っているように催促された。

 それは蚊帳の外で、ラジュは片手を口に添えて、ヤッホーと叫ぶように、聞こえないほど遠くにいる合気の達人に忠告する。

「カミエ~、避けないと怪我をしますよ~? シズキは本気です~」

 武器の使用をずっとさけてきた金髪天使。ダガーを投げたが、飛距離がまったくなく、敵に到達する前に落ちそうになった。

 シズキはラジュの右肩越しに、慣れた感じで拳銃を横向きに構え、引き金を力一杯絞った。

「俺のフロンティアの弾丸の前にひれ伏すがいい!」

 スバーンッ!!

 荒野を銃声が蹂躙じゅうりんするように駆け抜けた。ラジュが放ったダガーの柄の先端に銃弾が後押しするように当たり、

 ビュンッ!!

 硬いものが目にも留まらぬ速さで当たったような、鋭い金属音が歪んだ。

 飛距離と速度が爆発的に伸び、次々と合気で敵の動きを封じている、背丈が高く骨格のしっかりとした白い袴へ向かって、ダガーの銀色をした線が光の速度ほどで伸びてゆく。

(くる! 後方、右肩。 殺気――シズキ!)

 気の流れを読む武術――合気の達人――カミエは振り向かなくともわかった。向かってくる武器がラジュのもので、シズキが手を加えたのだと。

 右肩を艶やかに左下へ落とし、手を日本刀の柄にかけた。その刹那、シズキの撃った弾丸は深緑色の短髪をかすかにかすめ、積み重なっていた敵たちに爆発を起こすように当たり広がった。

「うわぁぁぁっっっ!!!!」

 浄化し始める。隙ができた。それと同時に、日本刀は鞘からすうっと抜き取られ、居着くことなく流れるような仕草で、カミエは縮地を使う。

 ドーナツ化現象を起こしている敵。日本刀の刃先を腰の横で後ろ向きに構える。そうして、カミエは目にも止まらぬ速さて、時計回りに氷上を滑るが如し円を描き走り、重い鉄の塊が早く動く計り知れない破壊力を持って、敵を斬りつけた。

「ぐわぁぁぁぁあっっっっ!!!!」

 凄まじい断末魔があたりに炸裂し、水面に落ちた滴のように、敵全員が外側へ反り返り倒れた。銃と剣、そうして、武術の合わせ技の前に、敵の数を一気に減らしたのだった。

 ラジュが右手をすっと背後へ引くような仕草をすると、敵の陣地から銀色の光が、宙を横滑りしてきた。まるで引力でもあるかのように、ラジュの綺麗な手に収まると、さっき投げたダガーだった。

「参謀が陣地を離れるわけにはいきませんからね~。きちんと自身のところへ戻ってきますよ?」

 もっともらしいことを言ったが、シズキは超不機嫌顔で真っ向から否定した。

「違う。崇剛のようにダガーを分身させられるのに、貴様が練習をおこたっているからだ。少しは見習ったらどうだ?」

 敵の目を釘付けにしながら、ダガーを太ももにある鞘へしまう。ラジュの動きはふと止まり、珍しく寂しげな顔をする。

「そう……ですね」

 触れてはいけないところに触れてしまったと気づき、シズキはラジュとは反対側へ神経質な顔を向け、

「もういい。この話は終わりだ」

 戦場という緊迫した中だったが、妙な沈黙がラジュとシズキの間に流れた。

 邪神界という悪烈な集団を前にして、金と銀の髪はしばらく荒野を吹き抜けてくる風に揺れていたが、ラジュはいつものニコニコの笑みに戻った。

「そうでした~、もうひとつ、失念していました~」
「貴様、きちんと仕事をしろ。何のために、俺が今ここにいる? 俺の行動を無にしたら、貴様のその頭、フロンティアでぶち抜いてやる」
「うふふふっ。それでは、飛ばしますよ~」

 ラジュが右手を上へ向かって押し出すようにすると、金の光がすうっと上空へ登り、どこかへ向かってシューっと飛んでいったが、

「おや? 間違った人へ飛ばしてしまいました~」

 ラジュの口から出てきたのは思いっきり嫌な予感がする言葉だったが、シズキの超不機嫌極まりない男性的で奥深さのある声で、

「貴様の口は嘘をつくためについているんだな」
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