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心霊探偵はエレガントに〜karma〜
Spiritual liar/6
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――現実世界で、元は崇剛の手に巻かれた包帯に視線を落として、ひどくぎこちなく説教に同意をした。
「あ、あぁ……そうですね」
(この人もおかしい。世の中、おかしいやつばかりだ)
崇剛の膝の上で寄り添う、ロイヤルブルーサファイアのカフスボタンは高貴な輝きを放っていた。
おかしい点がまだあります。
奥様が昨日亡くなられました。
ですが、恩田 元は悲しんでいるように見えない――です。
何か他に理由があるのかもしれませんね。
Spiritual liar――心の中の嘘。その人の本当の姿。真実でありながら虚偽。究極のカオス。
聞かれているとは思っていない依頼主。
と、
聞く力を持っている聖霊師。
ふたりにふと沈黙が訪れた。聞こえてくるのは風の音と鳥の鳴き声だけ。静かな診療室で、依頼主の心の声が聖霊師の霊感ににじむ。
「…………」
(夢の話と、前の妻の話はしなくていいか)
「…………」
(夢と、前の奥様の話……。見てみましょうか)
崇剛はいつの間にか、歌劇場の客席で優雅に足を組んでいた――。
左右、真正面のステージで一斉に赤い緞帳が上がり、別々の物語が始まった。
それぞれの女と元が主演で、全てが早回しで場面が流れていくが、ラストが同じ結末だった。
詳しいことは今のところ何とも言えませんが、転落死亡事故が三回。
転落事故が一回。
――その時、歌劇場のライトは一斉に消え、真っ暗闇に青白い顔をした幽霊が次々に浮かび上がった。
さらに、同じ夢を繰り返し見ているみたいです。
こちらの夢から、以下の事実が読み取れる。
古いフィルム映画を見ているように、針金のような縦線でノイズが入る。ところどころつぎはぎしたみたいに動きがぎこちなく、ホラー映画でも見ているようだった。崇剛は目をそらすことなく、ただ事実だけを拾い上げてゆく。
自分自身が斬られる。
うめき声と悲鳴が、男性と女性の声の両方で、複数聞こえてくる。
『返して……』と言われる。
体をつかまれる。
悲鳴と断末魔が、男性と女性の声の両方で、複数聞こえてくる。
血の匂いがした。
血で視界が真っ赤になる。
『いい……だ……』と言った――
――映像も終わり、暗闇に一人取り残された崇剛は、あごに神経質な指を当て、今までのデータで合致するものがないか、冷静な頭脳の中に膨大なデータを流し始めた。
四月二十一日、木曜日、二時十三分五十四秒過ぎ――。
私を襲って来た霊体が言っていた、『返して……』。
さらに、四月十八日、月曜日、十七時十六分三十五秒過ぎ――。
死装束の女の念。
そちらの影響で見た、二番目と三番目の場面――。
夜に断末魔が聞こえ、血の匂いがした。
落下速度を感じた。
四つのことが関係しているという可能性が89.72%――
――崇剛はいつの間にか、ラジュと背中合わせで荒野の中に立っていた。空は突き抜けるほど青く、風は吹き荒び、遠くには地平線が半円を描く。
従って、以下の事実が可能性の数値は違いながら、三つ出てきます。
恩田 元は全てと関係している――。
蜃気楼の向こうに、依頼主が黒い霧をまといながら佇んでいる。そこへ、白い着物を着た女が後ろに上からふんわりと降りてきた。
死装束の女が関係している。
少なくとも関係している人間が二百――。
非常に大きな事件です。
二対二で対峙していたが、ゆらゆらとフードを被った死神みたいな大鎌を持った幽霊が現れると、背後に山脈のような人垣ができた。
武器――大鎌を持った霊体もいました。
ですが、恩田 元は霊層が低く、天使レベルの邪神界の者を扱うことはできません。
従って、以下の可能性が89.74%で出てくる。
何かが原因で、非常に大きな力が動いている――
光を奪い去るように、あっという間に暗雲は広がり、空を引き裂くように雷光が縦に走り、崇剛の両脇には天使が何人も翼を羽ばたかせて降りてくる。
血のように赤い空が天変地異を物語っていて、大きな雨粒が乾いた大地を黒く染め出した。
正神界と邪神界が全面対決のように、両軍は動くこともせず、戦い前の静けさに武者震いをしているようだった。
「あ、あぁ……そうですね」
(この人もおかしい。世の中、おかしいやつばかりだ)
崇剛の膝の上で寄り添う、ロイヤルブルーサファイアのカフスボタンは高貴な輝きを放っていた。
おかしい点がまだあります。
奥様が昨日亡くなられました。
ですが、恩田 元は悲しんでいるように見えない――です。
何か他に理由があるのかもしれませんね。
Spiritual liar――心の中の嘘。その人の本当の姿。真実でありながら虚偽。究極のカオス。
聞かれているとは思っていない依頼主。
と、
聞く力を持っている聖霊師。
ふたりにふと沈黙が訪れた。聞こえてくるのは風の音と鳥の鳴き声だけ。静かな診療室で、依頼主の心の声が聖霊師の霊感ににじむ。
「…………」
(夢の話と、前の妻の話はしなくていいか)
「…………」
(夢と、前の奥様の話……。見てみましょうか)
崇剛はいつの間にか、歌劇場の客席で優雅に足を組んでいた――。
左右、真正面のステージで一斉に赤い緞帳が上がり、別々の物語が始まった。
それぞれの女と元が主演で、全てが早回しで場面が流れていくが、ラストが同じ結末だった。
詳しいことは今のところ何とも言えませんが、転落死亡事故が三回。
転落事故が一回。
――その時、歌劇場のライトは一斉に消え、真っ暗闇に青白い顔をした幽霊が次々に浮かび上がった。
さらに、同じ夢を繰り返し見ているみたいです。
こちらの夢から、以下の事実が読み取れる。
古いフィルム映画を見ているように、針金のような縦線でノイズが入る。ところどころつぎはぎしたみたいに動きがぎこちなく、ホラー映画でも見ているようだった。崇剛は目をそらすことなく、ただ事実だけを拾い上げてゆく。
自分自身が斬られる。
うめき声と悲鳴が、男性と女性の声の両方で、複数聞こえてくる。
『返して……』と言われる。
体をつかまれる。
悲鳴と断末魔が、男性と女性の声の両方で、複数聞こえてくる。
血の匂いがした。
血で視界が真っ赤になる。
『いい……だ……』と言った――
――映像も終わり、暗闇に一人取り残された崇剛は、あごに神経質な指を当て、今までのデータで合致するものがないか、冷静な頭脳の中に膨大なデータを流し始めた。
四月二十一日、木曜日、二時十三分五十四秒過ぎ――。
私を襲って来た霊体が言っていた、『返して……』。
さらに、四月十八日、月曜日、十七時十六分三十五秒過ぎ――。
死装束の女の念。
そちらの影響で見た、二番目と三番目の場面――。
夜に断末魔が聞こえ、血の匂いがした。
落下速度を感じた。
四つのことが関係しているという可能性が89.72%――
――崇剛はいつの間にか、ラジュと背中合わせで荒野の中に立っていた。空は突き抜けるほど青く、風は吹き荒び、遠くには地平線が半円を描く。
従って、以下の事実が可能性の数値は違いながら、三つ出てきます。
恩田 元は全てと関係している――。
蜃気楼の向こうに、依頼主が黒い霧をまといながら佇んでいる。そこへ、白い着物を着た女が後ろに上からふんわりと降りてきた。
死装束の女が関係している。
少なくとも関係している人間が二百――。
非常に大きな事件です。
二対二で対峙していたが、ゆらゆらとフードを被った死神みたいな大鎌を持った幽霊が現れると、背後に山脈のような人垣ができた。
武器――大鎌を持った霊体もいました。
ですが、恩田 元は霊層が低く、天使レベルの邪神界の者を扱うことはできません。
従って、以下の可能性が89.74%で出てくる。
何かが原因で、非常に大きな力が動いている――
光を奪い去るように、あっという間に暗雲は広がり、空を引き裂くように雷光が縦に走り、崇剛の両脇には天使が何人も翼を羽ばたかせて降りてくる。
血のように赤い空が天変地異を物語っていて、大きな雨粒が乾いた大地を黒く染め出した。
正神界と邪神界が全面対決のように、両軍は動くこともせず、戦い前の静けさに武者震いをしているようだった。
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