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歌を作ってみた
月のカオス:月命の場合
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廊下の端までやってきた颯茄はドーム型の天井を見上げ、物静けさにため息をつく。左にあるドアへ近づき、ノックした。
「月さん?」
中から返事が返ってきて、颯茄はドアを開くと、月明かりが煌々と差し込む部屋をのぞき込んだ。
「おや? 君ですか」
部屋の主――月命は椅子から立ち上がりもせずに、振り返っただけだった。所狭しと盆栽が置かれた部屋の中を進むと、新顔が現れた。
「あれ? サボテンも育て始めたんですか? 盆栽ばっかりだったのに」
「これは頂き物なんです~」
「花咲いてますね、綺麗です」
鮮やかなピンクやオレンジの花が月影にほのかに揺れている。妻はそれに見惚れてばかりで、話を切り出そうとはしなかった。
「何か用があってきたんではないんですか?」
「あ、そうでした」と言った颯茄の瞳から、サボテンの花は消え、月命のヴァイオレレットの瞳が映し出された。
「実は月さんをモデルにした曲を作ってきたので、聞かせようと」
颯茄は手に持っていた携帯電話を差し出した。
「おや? 僕にですか。とても嬉しいです」
ゆっくりとした少し重厚感のある曲が、幻想的な部屋に流れ出した。
【月のカオス】
紫の月 優しい風
何も変わらないのに
僕の心 見透かして
震えそうになる
誰が一人と決めたの
好きはくらべられない
神は赦すのだろうか
誰が異性と決めたの
好きには変わりはない
それとも罪なのか
二つの愛の火いつも灯る
僕はいったいどうしてしまったんだ
君も好き彼も好きずっと
渦巻くカオス 乱れて
髪が揺れる 頬をかすめ
何もかもが常で
僕の心 雪が荒ぶ
凍えそうになる
世界はひどく綺麗で
僕だけ不浄みたいで
神に懺悔をしようか
誰が何と言おうとも
愛なんだ恋なんだ
それでも罪なのか
青空の下で 居場所なくす
僕に影さす 無情の雨が降る
君も好き彼も好きずっと
渦巻くカオス 魅せられて
誰が一人と決めたの
好きはくらべられない
神は赦すのだろうか
誰が異性と決めたの
好きには変わりはない
それとも罪なのか
二つの愛の火いつも灯る
僕はいったいどうしてしまったんだ
君も好き彼も好きずっと
渦巻くカオス 乱れて
曲を聴き終えて、颯茄は身を乗り出した。
「月さんって、こんなふうに考えていましたか?」
「今頃、それを僕に聞くんですか~?」
「あはは」颯茄は照れたように頭に手をやって、「曲作る前にインタビューしておけって感じですよね」
「少しは当てはまるところがありますよ?」
「そうですか。実はこの曲名、ずっと前からあったんです」
「なぜ、今になってなんですか?」
「携帯電話のボイスメモに、頭に浮かんだメロディーを入れていたんですけど、どうもパッとしないものばかりで」
作曲というものは、部分で出来上がることもあるのだ。
「それで作らなかったんですか」
「はい。でも、いつの間にか、こんないい曲になりました」
「神のお陰かもしれませんね~」
「そうですね」
紫の大きな月を見上げ、二人とも神に感謝した。
「僕はコーラスで参加させていただけるんでしょうか?」
実は歌うのが好きな月命。プロの蓮からすれば、まだまだの実力だったが、練習に練習を重ねて、ユニットの一員になりつつある。
「蓮と光さんがオッケーを出せば、ありなんじゃないんですか?」
「そうしたら、僕は楽しみです」
「ただ、いつ発表されるかはわからないです。やっぱり人気商売なので、売り方の戦略を考えないといけないみたいで、どの曲がいつ出るかまではまだ決まってないです」
落ちてきてしまった髪を、月命は柔らかくかき上げた。
「他の方の曲も書いたんですか~?」
「はい。全員分書きました。結婚する前、こんな感じで想っていたのではと想像して」
「君は前のめりですね~。インタビューをせずに書くなんて」
「曲が先にどんどん思いついたんですよ。だから、みんなに聞く暇がありませでした」
神様からの電話がかかってくる時は、次々にかかってくることもあるのだ。
「僕はこの曲をとても気に入りましたよ」
「よかったです。喜んでもらえて」
「うふふふっ」
月命は珍しく嬉しそうに微笑んだ。
「月さん?」
中から返事が返ってきて、颯茄はドアを開くと、月明かりが煌々と差し込む部屋をのぞき込んだ。
「おや? 君ですか」
部屋の主――月命は椅子から立ち上がりもせずに、振り返っただけだった。所狭しと盆栽が置かれた部屋の中を進むと、新顔が現れた。
「あれ? サボテンも育て始めたんですか? 盆栽ばっかりだったのに」
「これは頂き物なんです~」
「花咲いてますね、綺麗です」
鮮やかなピンクやオレンジの花が月影にほのかに揺れている。妻はそれに見惚れてばかりで、話を切り出そうとはしなかった。
「何か用があってきたんではないんですか?」
「あ、そうでした」と言った颯茄の瞳から、サボテンの花は消え、月命のヴァイオレレットの瞳が映し出された。
「実は月さんをモデルにした曲を作ってきたので、聞かせようと」
颯茄は手に持っていた携帯電話を差し出した。
「おや? 僕にですか。とても嬉しいです」
ゆっくりとした少し重厚感のある曲が、幻想的な部屋に流れ出した。
【月のカオス】
紫の月 優しい風
何も変わらないのに
僕の心 見透かして
震えそうになる
誰が一人と決めたの
好きはくらべられない
神は赦すのだろうか
誰が異性と決めたの
好きには変わりはない
それとも罪なのか
二つの愛の火いつも灯る
僕はいったいどうしてしまったんだ
君も好き彼も好きずっと
渦巻くカオス 乱れて
髪が揺れる 頬をかすめ
何もかもが常で
僕の心 雪が荒ぶ
凍えそうになる
世界はひどく綺麗で
僕だけ不浄みたいで
神に懺悔をしようか
誰が何と言おうとも
愛なんだ恋なんだ
それでも罪なのか
青空の下で 居場所なくす
僕に影さす 無情の雨が降る
君も好き彼も好きずっと
渦巻くカオス 魅せられて
誰が一人と決めたの
好きはくらべられない
神は赦すのだろうか
誰が異性と決めたの
好きには変わりはない
それとも罪なのか
二つの愛の火いつも灯る
僕はいったいどうしてしまったんだ
君も好き彼も好きずっと
渦巻くカオス 乱れて
曲を聴き終えて、颯茄は身を乗り出した。
「月さんって、こんなふうに考えていましたか?」
「今頃、それを僕に聞くんですか~?」
「あはは」颯茄は照れたように頭に手をやって、「曲作る前にインタビューしておけって感じですよね」
「少しは当てはまるところがありますよ?」
「そうですか。実はこの曲名、ずっと前からあったんです」
「なぜ、今になってなんですか?」
「携帯電話のボイスメモに、頭に浮かんだメロディーを入れていたんですけど、どうもパッとしないものばかりで」
作曲というものは、部分で出来上がることもあるのだ。
「それで作らなかったんですか」
「はい。でも、いつの間にか、こんないい曲になりました」
「神のお陰かもしれませんね~」
「そうですね」
紫の大きな月を見上げ、二人とも神に感謝した。
「僕はコーラスで参加させていただけるんでしょうか?」
実は歌うのが好きな月命。プロの蓮からすれば、まだまだの実力だったが、練習に練習を重ねて、ユニットの一員になりつつある。
「蓮と光さんがオッケーを出せば、ありなんじゃないんですか?」
「そうしたら、僕は楽しみです」
「ただ、いつ発表されるかはわからないです。やっぱり人気商売なので、売り方の戦略を考えないといけないみたいで、どの曲がいつ出るかまではまだ決まってないです」
落ちてきてしまった髪を、月命は柔らかくかき上げた。
「他の方の曲も書いたんですか~?」
「はい。全員分書きました。結婚する前、こんな感じで想っていたのではと想像して」
「君は前のめりですね~。インタビューをせずに書くなんて」
「曲が先にどんどん思いついたんですよ。だから、みんなに聞く暇がありませでした」
神様からの電話がかかってくる時は、次々にかかってくることもあるのだ。
「僕はこの曲をとても気に入りましたよ」
「よかったです。喜んでもらえて」
「うふふふっ」
月命は珍しく嬉しそうに微笑んだ。
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