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最後の恋は神さまとでした
真面目にやりやがれ/3
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都心部にある大きな屋敷。その玄関のチャイムを明引呼が鳴らすと、すぐに扉が開いた。中からカーキ色のくせ毛とピンクの瞳を持つ男が出てきた。
「おう」
「やあ、待っていました」
片手を上げて、にっこり微笑む火炎不動明王の腕を、明引呼はぱしんと叩いた。
「待ってたじゃねえよ。少しは驚けよ」
まともに話が進んでいきそうだったが、
「僕はこういうことは、全然ノーリアクションなんで」
「ノープロブレムだろうが、そこはよ。少しは真面目にやりやがれ」
火炎不動明王は気まずそうに咳払いをした。
「んんっ! ちょっと緊張しているんです」
「てめえでもするってか? ボケ倒しまくりだった、てめえがよ」
「君から――」
火炎不動明王がノリノリで話を続けようとしたが、明引呼が鋭い言葉のカウンターパンチを放った。
「黙れや、少し」
「…………」
明引呼はポケットから裸のシルバーリングを取り出し、
「オレと結婚しろや。待たせたな」
親指で火炎不動明王に向けて弾き飛ばした。
十四年だ。いつの間にか愛はお互いの心の中に育っていて、普通の結婚を求めたばかりに、言い出せずじまい。
顔の横でパシンとリングを受け取り、火炎不動明王はいつもと違って、少しだけ男の色香が匂い立つ笑みを浮かべた。
「やはり気づいていましたか」
「あんな言い方されて気づかねえほうがどうかしてんだろ」
言われたのは、夏休みのテーマパークでのことだ。もう十年以上も前の話。それも、その時一度きり。後にも先にもない。明引呼の立場を理解していた火炎不動明王だからこそ、あれ以来何も言動を起こさなかったのだ。
「そんな君を僕は愛しちゃったんです」
火炎不動明王は自身と違って勘の鋭い男を大切に想っていた。長い年月が通り過ぎる頃には、チャンスもめぐってくるかもしれない。急いで傷つけるよりは、待った方がいいのだと自分に言い聞かせて生きてきた。
のんきに指輪を自分ではめている火炎不動明王の腕を、明引呼はドアをノックするようにトントンと叩いた。
「そんなことはいいからよ、返事はどうしやがった?」
「僕と妻の個室はありますか?」
突然出てきた質問に、明引呼は驚かずに答える。
「家は地球一個分あるからよ、きちんとあるぜ」
「なら、受けます」
「心配するとこ、そこってか?」
明引呼はあきれた顔をした。相変わらず、人と一本違う道をゆく、個性の強さを持つ男だった。
「個人の自由は結婚には大切な要素のひとつです」
「まあな。一緒になったからこそ、てめえの時間っつうのは必要だな」
「僕はタキシードの色は何色にすればいいんでしょ?」
先日行った、明引呼の結婚式では、新婦たちは全員白いウェディングドレスだったが、新郎たちはそれぞれのイメージカラーのタキシードを着ていた。あの中に混じるのだから、自身のに会う色を是非とも選び――
「話早すぎなんだよ。まずは、光秀さんに挨拶だろ」
ボケをかましまくり。これが毎日これから続くようになる。しかしそれも、面白いものだと、明引呼は思った。
「懐かしいです。まさかこんなことになる何で思っていませんでした。お義父さん……」
火炎不動明王は感慨深く言った。
「そんなことはいいんだよ、ガキどもは納得すんのか?」
家族と家族が結婚をするのだ。子供ひとりひとりの気持ちも大切にしなければいけない。火炎不動明王はにっこりと微笑んで、
「前から言っていたんです。他の家族と一緒になることがあるかもしれない、と」
「何つってたんだよ?」
「うちは八人兄弟なので、サッカーチームが作れるねと大喜びでした」
「親に似たんだな。そういう脳天気なとこはよ……」
明引呼は珍しく笑顔になった。前向きな子供たち。本当にサッカーで遊び出すのももうすぐだろう。
「おう」
「やあ、待っていました」
片手を上げて、にっこり微笑む火炎不動明王の腕を、明引呼はぱしんと叩いた。
「待ってたじゃねえよ。少しは驚けよ」
まともに話が進んでいきそうだったが、
「僕はこういうことは、全然ノーリアクションなんで」
「ノープロブレムだろうが、そこはよ。少しは真面目にやりやがれ」
火炎不動明王は気まずそうに咳払いをした。
「んんっ! ちょっと緊張しているんです」
「てめえでもするってか? ボケ倒しまくりだった、てめえがよ」
「君から――」
火炎不動明王がノリノリで話を続けようとしたが、明引呼が鋭い言葉のカウンターパンチを放った。
「黙れや、少し」
「…………」
明引呼はポケットから裸のシルバーリングを取り出し、
「オレと結婚しろや。待たせたな」
親指で火炎不動明王に向けて弾き飛ばした。
十四年だ。いつの間にか愛はお互いの心の中に育っていて、普通の結婚を求めたばかりに、言い出せずじまい。
顔の横でパシンとリングを受け取り、火炎不動明王はいつもと違って、少しだけ男の色香が匂い立つ笑みを浮かべた。
「やはり気づいていましたか」
「あんな言い方されて気づかねえほうがどうかしてんだろ」
言われたのは、夏休みのテーマパークでのことだ。もう十年以上も前の話。それも、その時一度きり。後にも先にもない。明引呼の立場を理解していた火炎不動明王だからこそ、あれ以来何も言動を起こさなかったのだ。
「そんな君を僕は愛しちゃったんです」
火炎不動明王は自身と違って勘の鋭い男を大切に想っていた。長い年月が通り過ぎる頃には、チャンスもめぐってくるかもしれない。急いで傷つけるよりは、待った方がいいのだと自分に言い聞かせて生きてきた。
のんきに指輪を自分ではめている火炎不動明王の腕を、明引呼はドアをノックするようにトントンと叩いた。
「そんなことはいいからよ、返事はどうしやがった?」
「僕と妻の個室はありますか?」
突然出てきた質問に、明引呼は驚かずに答える。
「家は地球一個分あるからよ、きちんとあるぜ」
「なら、受けます」
「心配するとこ、そこってか?」
明引呼はあきれた顔をした。相変わらず、人と一本違う道をゆく、個性の強さを持つ男だった。
「個人の自由は結婚には大切な要素のひとつです」
「まあな。一緒になったからこそ、てめえの時間っつうのは必要だな」
「僕はタキシードの色は何色にすればいいんでしょ?」
先日行った、明引呼の結婚式では、新婦たちは全員白いウェディングドレスだったが、新郎たちはそれぞれのイメージカラーのタキシードを着ていた。あの中に混じるのだから、自身のに会う色を是非とも選び――
「話早すぎなんだよ。まずは、光秀さんに挨拶だろ」
ボケをかましまくり。これが毎日これから続くようになる。しかしそれも、面白いものだと、明引呼は思った。
「懐かしいです。まさかこんなことになる何で思っていませんでした。お義父さん……」
火炎不動明王は感慨深く言った。
「そんなことはいいんだよ、ガキどもは納得すんのか?」
家族と家族が結婚をするのだ。子供ひとりひとりの気持ちも大切にしなければいけない。火炎不動明王はにっこりと微笑んで、
「前から言っていたんです。他の家族と一緒になることがあるかもしれない、と」
「何つってたんだよ?」
「うちは八人兄弟なので、サッカーチームが作れるねと大喜びでした」
「親に似たんだな。そういう脳天気なとこはよ……」
明引呼は珍しく笑顔になった。前向きな子供たち。本当にサッカーで遊び出すのももうすぐだろう。
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