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最後の恋は神さまとでした
天才軍師の結婚/3
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そして、中心街の駅近くのフルーツパーラーで、孔明と焉貴は会っていた。いろいろな話をいつも通りしながら、孔明は頃合いを見計らい、策の最初の言葉を告げた。
「焉貴、ボク、紅朱凛と結婚することにしたから」
「そう」
焉貴の返事はどこまでも無機質で、感情が見当たらなかった。愛していると言っている割には、ずいぶん冷めた反応だった。しかし、孔明にはわかっていた。焉貴はいつもこんな冷めた態度なのだ。そうなると、策はまだ成功へと向かって動いている。
*
いつも通りの会話をいつも通りにして、焉貴が家へ帰ってきた。
おまけの倫礼はパチパチとパソコンに文字を打ち込んでいると、だるそうなマダラ模様の声が廊下から聞こえてきた。
「あいつが結婚するって、あいつが……!」
「ん?」倫礼は手を止めて、ドアの外へ意識を傾けると、焉貴が両手で頭を抱えて、その場にしゃがみ込みそうになっていた。「どうしたんだろう? 焉貴さんが騒いでるなんて珍しい」
焉貴は熱にうなされたように言う。
「あいつ、十年以上も結婚しなかったのに、結婚するって。俺、超凹むんだけど~」
彼にしては珍しくめちゃくちゃな物言いに、おまけの倫礼はあきれた顔をした。
「何言ってるんですか。焉貴さんは何回結婚したんですか?」
「三回だけどさ」
「自分は結婚しておいて、凹むっていうのはどうなのかと思うんですけど……」
神なのに、自分のことを棚に上げて物を言うなど、どうにもおかしかった。しかし、焉貴が気にしていたことは別のことだった。
「あいつが結婚しちゃうと、俺膝枕してもらえなくなるでしょ」
「え……?」
妻はびっくりしすぎて、言葉を失った。我が夫が他のお宅に上がって、膝枕をしていたというハレンチな事件が起きていたのだった。
「膝枕をしてくれる友達……じゃなくて恋人だ。ちとややこしい」
妻は悟った。焉貴は友達としてではなく、愛しているのだと。そうなると、話は変わってくる。倫礼は焉貴の言っている意味がなんとなく理解できた。
「まあ、奥さんに内緒で膝枕してもらうはちょっとおかしいですよね」
「でしょ? だから、俺ショックなんだけど……」
いつもポジティブで、死ぬ間際で生きるには、もっと自由であれとハイテンションで語ってくる夫だったのに、今はガックリと肩を落としている。おまけの倫礼はどうしても励ましたくなった。
「結婚はできないかもしれないけど、そんなに好きなら、その人と彼女に許可を得て、会いに行ったり、膝枕してもらったらどうかな?」
「そうね」
結婚できないのなら、せめて、触れるくらいは許してあげよう。焉貴は体勢を立て直して、他の配偶者に同意を求めに行った。
倫礼は扉を閉めて、書斎机の椅子に手をかけたまま首を傾げる。
「ところで、焉貴さんの友達って誰なんだろう?」
彼女はまだ知らなかった。相手が強敵であるということに。
*
そして、数日後の夕方。みんなの同意を得られた焉貴は、友人を家へ招待していた。さらには、地球の倫礼の部屋へと連れてきていた。
おまけの部屋の扉を開けたところで、焉貴と二人で話をしている。霊感というのはずっとはっきり見えているものではなく、フラッシュバックするように印象の強いことが一瞬はっきり見えるものだ。
「あれが焉貴さんの友達?」
見えたら、それを逃さないでじっと見続けることだ。長い髪を頭の高くで結いている男だとわかった。そして、焉貴と親しげなのもよくわかる。話を色々としているのだから。
「何か話してる」
その時、男の声がはっきりと聞こえた。
「焉貴の家はそうなんだ。それで?」
春風みたいな穏やかでありながら好青年の響き。
「ずいぶんはっきりと聞き取れる」
様々な守護神に関わってきたおまけの倫礼は、ある法則を見つけていた。
「ってことは、地上で生きてたことがある人だ。そうなると……!」
神様の名簿の紙はもう捨ててしまったのだと思っている、倫礼は記憶の中から、ある神の名前を思い出した。
「孔明さん!?」
「焉貴、ボク、紅朱凛と結婚することにしたから」
「そう」
焉貴の返事はどこまでも無機質で、感情が見当たらなかった。愛していると言っている割には、ずいぶん冷めた反応だった。しかし、孔明にはわかっていた。焉貴はいつもこんな冷めた態度なのだ。そうなると、策はまだ成功へと向かって動いている。
*
いつも通りの会話をいつも通りにして、焉貴が家へ帰ってきた。
おまけの倫礼はパチパチとパソコンに文字を打ち込んでいると、だるそうなマダラ模様の声が廊下から聞こえてきた。
「あいつが結婚するって、あいつが……!」
「ん?」倫礼は手を止めて、ドアの外へ意識を傾けると、焉貴が両手で頭を抱えて、その場にしゃがみ込みそうになっていた。「どうしたんだろう? 焉貴さんが騒いでるなんて珍しい」
焉貴は熱にうなされたように言う。
「あいつ、十年以上も結婚しなかったのに、結婚するって。俺、超凹むんだけど~」
彼にしては珍しくめちゃくちゃな物言いに、おまけの倫礼はあきれた顔をした。
「何言ってるんですか。焉貴さんは何回結婚したんですか?」
「三回だけどさ」
「自分は結婚しておいて、凹むっていうのはどうなのかと思うんですけど……」
神なのに、自分のことを棚に上げて物を言うなど、どうにもおかしかった。しかし、焉貴が気にしていたことは別のことだった。
「あいつが結婚しちゃうと、俺膝枕してもらえなくなるでしょ」
「え……?」
妻はびっくりしすぎて、言葉を失った。我が夫が他のお宅に上がって、膝枕をしていたというハレンチな事件が起きていたのだった。
「膝枕をしてくれる友達……じゃなくて恋人だ。ちとややこしい」
妻は悟った。焉貴は友達としてではなく、愛しているのだと。そうなると、話は変わってくる。倫礼は焉貴の言っている意味がなんとなく理解できた。
「まあ、奥さんに内緒で膝枕してもらうはちょっとおかしいですよね」
「でしょ? だから、俺ショックなんだけど……」
いつもポジティブで、死ぬ間際で生きるには、もっと自由であれとハイテンションで語ってくる夫だったのに、今はガックリと肩を落としている。おまけの倫礼はどうしても励ましたくなった。
「結婚はできないかもしれないけど、そんなに好きなら、その人と彼女に許可を得て、会いに行ったり、膝枕してもらったらどうかな?」
「そうね」
結婚できないのなら、せめて、触れるくらいは許してあげよう。焉貴は体勢を立て直して、他の配偶者に同意を求めに行った。
倫礼は扉を閉めて、書斎机の椅子に手をかけたまま首を傾げる。
「ところで、焉貴さんの友達って誰なんだろう?」
彼女はまだ知らなかった。相手が強敵であるということに。
*
そして、数日後の夕方。みんなの同意を得られた焉貴は、友人を家へ招待していた。さらには、地球の倫礼の部屋へと連れてきていた。
おまけの部屋の扉を開けたところで、焉貴と二人で話をしている。霊感というのはずっとはっきり見えているものではなく、フラッシュバックするように印象の強いことが一瞬はっきり見えるものだ。
「あれが焉貴さんの友達?」
見えたら、それを逃さないでじっと見続けることだ。長い髪を頭の高くで結いている男だとわかった。そして、焉貴と親しげなのもよくわかる。話を色々としているのだから。
「何か話してる」
その時、男の声がはっきりと聞こえた。
「焉貴の家はそうなんだ。それで?」
春風みたいな穏やかでありながら好青年の響き。
「ずいぶんはっきりと聞き取れる」
様々な守護神に関わってきたおまけの倫礼は、ある法則を見つけていた。
「ってことは、地上で生きてたことがある人だ。そうなると……!」
神様の名簿の紙はもう捨ててしまったのだと思っている、倫礼は記憶の中から、ある神の名前を思い出した。
「孔明さん!?」
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