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リレーするキスのパズルピース
ラブレターと瞬間移動/4
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聡明な瞳と漆黒の髪の向こうに隠された頭脳。そこに記憶されているデータは天文学的数字をはるかに超える。それなのに、能ある鷹は爪を隠すで、好青年でありながら柔らかな陽だまりみたいな声で、孔明は甘々に交わしてゆく。
「得意技じゃなかったと思うんだけどなあ~?」
手首から手を離して、懐中時計の短針と秒針を瑠璃紺色のレンズを持つ目に映す。
今の時刻、十三時十九分十九秒。
さっきから、一分一秒経過。
残りあと、十三分四十一秒。
勝つ方法――
たった0.1秒で弾き出した、時間の計算。カウボーイハットのつばは、葉巻を持つ手で炎色がぶつからないように少し上げられた。
「何すりゃ教えんだよ?」
家でくつろいでいるように、深碧のソファーにもたれかかっている、孔明の白い布地が、足をまた組み直したことによって、香の匂いと衣擦れの音をともなって動いた。
「ボク今、本番前でドキドキしてるから、それを止めてほしいんだけど……」
シルバーリング三つをした節々のはっきりした指先から、最後の別れというように、ミニシガリロは火がついたまま、ストンと床へ落下させられた。不意に吹いてきた夏風でどこかへ連れ去られた。
「昔っからある方法で解決だろ、そんなんよ。手に人って何回も書いて、飲み込みやがれ」
「それでどうにかならないから、キミに頼んでるんでしょう?」
かすかに動く口元とは違って、落ち着きというより冷静さが、瞬間凍結させる吹雪のように全身をさっきから覆っているような孔明だった。
電話の向こうであろうと、野郎どもに慕われる兄貴の鋭い眼光は、それだけで相手を射ることができるほど、凄みを帯びていた。きっちり落とし前をつけてやるぜ。
「ふざけてんじゃねえよ。てめえが緊張なんかすっかよ。嘘だってわかるように言ってきやがって。マジで何してだよ? 話元に戻せや、どうやって、ボスの制止突破したのかよ?」
手強し兄貴。孔明の春風のような柔らかな声はここで、さっきとは違った口調に変わって、ヒントを告げた。
「それはね、ボク以前の人だったら、誰でも知ってるかも!」
また三人称。しかも、貴増参より上手なやり口。性別もない。丸テーブルの上に置いてある赤い弁当箱を、明引呼は視線でしっかりとらえた。
「てめえ、グッドにはぐらかしやがって。範囲広すぎんだよ。野郎か? 女郎か? どっちか言いやがれ」
「彼」
三人称ループにまた巻き込まれてしまった。即行、兄貴からツッコミのカウンターパンチ。
「野郎はメニーいんだよ。てめえより前にはよ」
お茶として出された、ジャスミンティーの香りを味わい、時間がだいぶ経過して冷めているはずなのに、最初に口にした時と同じ暖かさをたもっていた。
金色の液体を唇からのどへ、そして体の奥へと精神浄化の森へ入り込むように落としてゆく。癒しの時を味わいながら、湯呑みをつかむ手のひらには今も潜まされている懐中時計。聡明な瑠璃紺色の瞳を一瞬だけやる。
今の時刻、十三時二十分二十一秒。
さっきから、一分二秒経過。
残りあと、十二分三十九秒。
勝つ方法……。
そろそろこっちかなあ――?
桜の花びらが雪のように降り注ぐ窓の外で、元気にサッカーボールを蹴って、右へ左へ攻めて守ってを繰り返している子供たちを眺める。そして、孔明は甘々でのんびりした雰囲気で、さりげなく話題転換した。
「ねぇ、ボクがどこにいるか当ててみて?」
ガサツな声が吐き捨てるように、だるくて仕方がないように言ってきた。
「そのよ。カンニング用紙みてえなクエスチョンやめろや。わかってんだろ、オレとてめえの仲なんだからよ」
「ボク、キミに聞いてほしいんだけどなあ~?」
「しょうがねえな。付き合ってやっか。どこにいんだよ?」
情に熱い兄貴からの問いかけ。ふふっと子供が思わずもらした笑い声をもれた。
「ボクは今、姫ノ館にいるよ」
「だからよ、学校はわかったけどよ。そこはよ、小学校から大学まであって、広えんだよ、地球の11.5倍の敷地があんだからよ。そこのどこにいんだよ?」
「初等部」
深碧のソファーの肘掛けに袖口が広く取られた白をもたれさせる、ピンクのお弁当箱が見ている前で。その奥の景色は、孔明がさっきから眺めている小学校の校庭。そこで遊ぶ、パンダやトラ、もちろん人も混じる子供たちだった。
「小学校はわかったけどよ。それでも広すぎんだよな。小学生のガキはいっぱいいんだろ。特によ、一年の五歳児、あのガキの生徒数は、今や数十兆を軽く超えてんだぜ。そこだけでも、地球の6.7倍あんだよ。そこのどこにいんだよ?」
「講堂」
「得意技じゃなかったと思うんだけどなあ~?」
手首から手を離して、懐中時計の短針と秒針を瑠璃紺色のレンズを持つ目に映す。
今の時刻、十三時十九分十九秒。
さっきから、一分一秒経過。
残りあと、十三分四十一秒。
勝つ方法――
たった0.1秒で弾き出した、時間の計算。カウボーイハットのつばは、葉巻を持つ手で炎色がぶつからないように少し上げられた。
「何すりゃ教えんだよ?」
家でくつろいでいるように、深碧のソファーにもたれかかっている、孔明の白い布地が、足をまた組み直したことによって、香の匂いと衣擦れの音をともなって動いた。
「ボク今、本番前でドキドキしてるから、それを止めてほしいんだけど……」
シルバーリング三つをした節々のはっきりした指先から、最後の別れというように、ミニシガリロは火がついたまま、ストンと床へ落下させられた。不意に吹いてきた夏風でどこかへ連れ去られた。
「昔っからある方法で解決だろ、そんなんよ。手に人って何回も書いて、飲み込みやがれ」
「それでどうにかならないから、キミに頼んでるんでしょう?」
かすかに動く口元とは違って、落ち着きというより冷静さが、瞬間凍結させる吹雪のように全身をさっきから覆っているような孔明だった。
電話の向こうであろうと、野郎どもに慕われる兄貴の鋭い眼光は、それだけで相手を射ることができるほど、凄みを帯びていた。きっちり落とし前をつけてやるぜ。
「ふざけてんじゃねえよ。てめえが緊張なんかすっかよ。嘘だってわかるように言ってきやがって。マジで何してだよ? 話元に戻せや、どうやって、ボスの制止突破したのかよ?」
手強し兄貴。孔明の春風のような柔らかな声はここで、さっきとは違った口調に変わって、ヒントを告げた。
「それはね、ボク以前の人だったら、誰でも知ってるかも!」
また三人称。しかも、貴増参より上手なやり口。性別もない。丸テーブルの上に置いてある赤い弁当箱を、明引呼は視線でしっかりとらえた。
「てめえ、グッドにはぐらかしやがって。範囲広すぎんだよ。野郎か? 女郎か? どっちか言いやがれ」
「彼」
三人称ループにまた巻き込まれてしまった。即行、兄貴からツッコミのカウンターパンチ。
「野郎はメニーいんだよ。てめえより前にはよ」
お茶として出された、ジャスミンティーの香りを味わい、時間がだいぶ経過して冷めているはずなのに、最初に口にした時と同じ暖かさをたもっていた。
金色の液体を唇からのどへ、そして体の奥へと精神浄化の森へ入り込むように落としてゆく。癒しの時を味わいながら、湯呑みをつかむ手のひらには今も潜まされている懐中時計。聡明な瑠璃紺色の瞳を一瞬だけやる。
今の時刻、十三時二十分二十一秒。
さっきから、一分二秒経過。
残りあと、十二分三十九秒。
勝つ方法……。
そろそろこっちかなあ――?
桜の花びらが雪のように降り注ぐ窓の外で、元気にサッカーボールを蹴って、右へ左へ攻めて守ってを繰り返している子供たちを眺める。そして、孔明は甘々でのんびりした雰囲気で、さりげなく話題転換した。
「ねぇ、ボクがどこにいるか当ててみて?」
ガサツな声が吐き捨てるように、だるくて仕方がないように言ってきた。
「そのよ。カンニング用紙みてえなクエスチョンやめろや。わかってんだろ、オレとてめえの仲なんだからよ」
「ボク、キミに聞いてほしいんだけどなあ~?」
「しょうがねえな。付き合ってやっか。どこにいんだよ?」
情に熱い兄貴からの問いかけ。ふふっと子供が思わずもらした笑い声をもれた。
「ボクは今、姫ノ館にいるよ」
「だからよ、学校はわかったけどよ。そこはよ、小学校から大学まであって、広えんだよ、地球の11.5倍の敷地があんだからよ。そこのどこにいんだよ?」
「初等部」
深碧のソファーの肘掛けに袖口が広く取られた白をもたれさせる、ピンクのお弁当箱が見ている前で。その奥の景色は、孔明がさっきから眺めている小学校の校庭。そこで遊ぶ、パンダやトラ、もちろん人も混じる子供たちだった。
「小学校はわかったけどよ。それでも広すぎんだよな。小学生のガキはいっぱいいんだろ。特によ、一年の五歳児、あのガキの生徒数は、今や数十兆を軽く超えてんだぜ。そこだけでも、地球の6.7倍あんだよ。そこのどこにいんだよ?」
「講堂」
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