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R18:SS(婚前調教編/完結)

12/19 ストリップ・調教

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【読まなくていい章1~3に登場する、調教過程】 あんまりエロくない
時間枠としては、「旦那様」の婚約者になることが決定した婚前のお話(2 回想内の教育)
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彼と会う前は、自分が自分でなくなるような混沌に堕ちている。
彼に見つめられたくて堪らない自分と、彼に失望されるのが恐ろしい自分が腹の中で混ざり合って、俺を惑わすのだ。


彼と会うときは、いつも二人きりだ。
公爵家の世嗣である彼との婚約が決まったのがつい先日のこと。僕はそれから彼にを施されていた。
「さっさとしろ」
彼の命令で、僕は服を脱ぐ。この服だって三男の僕では今まで買ってもらえなかったような上等なものであったので、皴一つつけないように丁寧に畳みたかったのだがそんなこと彼には関係が無い。扉の鍵は締められているとは言え昼間から肌を晒すのは恥ずかしく、また服を着ていても分かるほど逞しく鍛え上げられた彼の前で貧相な己の肉体を晒すのが情けなかった。
初めての日、彼は言った。

──先ず上下関係をその身体に叩き込もうか。

僕が公爵家の足手まといになってはならない。それは当然僕にも分かる。男爵家の僕が甘言に誘われ公爵家を裏切ることが、この結婚の最大のリスクだ。逆を言えば、僕は裏切るそぶりをみせれば簡単に公爵家によって葬られるのだろう。僕の婚約者はあらゆる面で秀でておりその分敵が多い。僕は盲目的に彼に従い、彼の便利な道具でなければならない。
僕が彼に舞い込む政略結婚を断るためにあてがわれた名ばかりの婚約者だとしても、彼の権力は反対意見を認めない。
既に僕は彼に無抵抗に差し出された贄も同然であったが、彼は僕の矜持すら奪おうとしていた。

初めて彼に命令された時、僕は流石に抵抗した。
物心ついた時から使用人に世話される生活を送ってきたとはいえ、目上の人の前で服を脱ぐような倫理観は持っていない。ついでに言えば彼に通されたのは応接室で、僕らの間にはつい先ほど使用人が入れた紅茶が湯気を立てている。人払いをかけたとはいえ、そんな健全な空間の中で裸になるなんてことは出来ない。寧ろ、彼の冗談だと思った。引き攣った笑みを浮かべてこの場をやり過ごそうとした僕を、彼は許さない。
「何故命令に従わない? 脱げと言ったんだ」
冷たい瞳の奥が、彼の言ったことが冗談などではなく本当の命令だと伝えてきた。
僕は思わず呆然としてしまった。確かに僕はなんの後ろ盾もない人間だ。されど、貴族だ。こんな屈辱を受けるいわれもなかった。
しかし彼に従わない理由も無かった。僕と彼の立場は全く違っていて、彼の機嫌一つで僕の生家だって簡単に取り潰すことが出来るだろう。彼が両親に口添えすれば、両親は僕を捨てて彼を選ぶだろう。この婚姻の意味を分かっていたはずなのに、僕は情けないことに彼の奴隷になる覚悟まで持ってなかった。
「君を傷付けるわけでもない。君にもできる簡単なことだ。どうして従わない」
僕の瞳からは涙が零れ落ちた。これまで教えられてきた常識が僕を蝕む。
僕が情けなく泣きながら服を脱ぐのを、彼は紅茶を飲みながら優雅に観察していた。


初めて彼に命令された時に僕の矜持は完全に砕けた。己の身分を弁えさせられる屈辱が、僕の心を歪めてゆく。
彼を前にして貧相な肉体を晒すのが恥ずかしくて僕は背中を丸めた。その肉体を見られたくなかったのだ。それすら彼は許さなかった。
「……ぬぎ、ました」
僕は下着まで脱ぎ去って、生まれたままの姿を彼に見せる。命令には従順で無くてはならない。僕は背筋をピンと伸ばして彼に向き合う。もう涙は枯れて、流れることは無くなった。
「宜しい。君も紅茶を飲むといい」
「はい」
彼に促されるがまま、彼の向かいに座して紅茶を啜る。その間も彼の視線に焼かれ、肌が栗立っていた。
僕は服を着ていないこと以外、何の変わりもないように平然と振る舞う。そう彼が命じたから。
「所作は悪くないな。君に公爵夫人としての責務を負わせるつもりもないから、重荷を感じる必要もない。無理に社交場に出る必要もない」
「承知いたしました」
彼は僕から一瞬たりとも視線を外さず、時折紅茶を口に運びながら僕に話しかける。僕は、返事を返すのが精一杯だった。
彼の視線が僕の肌を撫でる度、僕の尊厳は削れてゆく。彼は当然のように人の上に君臨するひとだった。生まれ持った気品が、僕を更に追い詰める。
彼が言わんとしていることはすぐに分かった。公爵夫人としての実権を与えない、社交場に出ることも禁ずる。貴族特有の遠回しな表現だった。
「こちらが婚姻を申し込んだのだ。しがらみは多いかもしれないが、不自由はさせないよう努力する」
「お気遣いいただき、ありがとうございます。」
会話の間にも、彼の目線は僕からそれることは無かった。

そうして時間をかけて紅茶を飲み終えた頃、彼からまた命令を受ける。
「服を着なさい」
「はい」
布ズレの音が嫌に部屋に響く。彼の視線は僕をただただ見つめていた。紅茶の流れた腹の中まで覗かれているような感覚すら覚えて、命令に従うという建前で彼から逃れるように急いで手を動かした。
服を着るという至極当然なことですら、彼に命じられ行う。その歪さに、いつか違和感を覚えなくなる時が来るだろうことが恐ろしかった。
彼は、冴えない僕とは違って優れた人間だ。婚約者の教育ですら卒なくこなす。

その予感は、そう遠くない日に現実のものとなるだろう。
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