9 / 11
九
しおりを挟む
生徒会室にアルベルトと二人きり、けれどそんなことを気にする余裕はサラにはなかった。
こめかみがずきずきと痛む。それに、眼球の奥も。この症状には覚えがあった。現世ではなく前世で。長時間同じ姿勢で事務作業を行った日は必ずといっていいほどこの痛みに襲われていた。
――――せめてストレッチだけでもしておけば……。
と、今更後悔したところで遅い。それよりも今必要なのは鎮痛薬と睡眠だ。
「アルベルト様。あの、頭痛を」
「コレだろう?」
そう言ってアルベルトは小さな箱から瓶を取り出し、小皿に二粒とりわけるとサラに差し出した。サラも見たことのある薬だ。父の執務室に常備してあるものと同じ物。
「ありがとう、ございます」
さっそく口にしようとして、飲み水がないことに気づく。タイミングをみはからったかのようにアルベルトが隣室から水が入ったカップを手に戻ってきた。
カップを受け取り、薬を口に投げ込むと一気に飲み干す。
「効くには少々時間がかかるだろう。それまで横になっているといい」
「はい。あ、いえ、私は大丈夫ですから」
帰宅しましょうと窓の外に視線を向ける。すでに日は暮れ始めている。薬が効くのを待っていたら真っ暗になってしまう。さすがにそれは申し訳ない。しかも、相手は王太子だ。
サラの言葉をどのように受け取ったのか、不意にアルベルトが片方の口角を上げて笑った。
「こんな時まで気を遣う必要は無いぞ。それに、ファビオ達にああ言った手前、サラ嬢に無理をさせるわけにもいかない」
「それは……」
「私はもう少し仕事の続きをする。サラ嬢は隣室のベッドを使うといい。そうだな……一時間経ったら起こそう」
有無を言わせない物言いにサラが折れた。隣室に入る前に、ちらっと振り向く。
「もし、一時間経っても私が起きないようでしたら叩いてでも起こしてくださいね。よろしくお願いします」
「ああ、そうするとしよう」
令嬢らしからぬ発言にアルベルトは笑い頷いた。
すぐにアルベルトの視線が机の上の書類に移ると、サラはこれ以上邪魔をしないようにと隣室に入った。
休憩用のベッドにしては大きなベッドに身体を横たわらせる。
――――さすが王太子も使うベッドね。ユアントレーナ家のベッドと遜色ない寝心地だわ。
薬が効いてきたのだろう。眠気に誘われサラは瞼を閉じた。
「ん」
異常な身体の熱さを感じて意識だけが浮上する。この熱さは間違いなくヒートだ。
「あっ」
冷たい大きな手がサラの頬を撫でている。身体がビクリと震える。もっと触れてほしくてサラは無意識にその手に頬を擦り付けた。触れている手の動きが止まる。
――――ドウシテヤメルノ? モットサワッテ?
両手を伸ばして相手を抱き寄せる。吐息が首筋にかかる。サラは熱い息を吐き出した。
サラの期待に応えるように唇が首筋を這い、大きな手がサラの左胸を包み込む。やわやわと揉みしだかれ、サラは微かに声を漏らした。
サラの反応に気をよくしたのか動きが大胆になる。服の中に侵入してきた手が直接サラの柔肌に触れた。先程よりも強い力で胸を揉まれ、時折起ち上がった胸の先っぽを指ではじかれる。そのたびにサラの腰が揺れた。
――――ジラサナイデ。モットシテ!
「ファビオッ」
懇願するように名前を呼ぶと、完全に手が止まってしまった。どうしてやめるの?!
そう言おうとして目を開いた瞬間、サラは思いがけない人物と目があった。
「な、んでっ」
サラに覆いかぶさっているのはファビオではなく、アルベルトだった。
瞬時に、今サラはどこにいるのかを思い出した。そして、今自分に何が起きているのかを悟る。
慌てて上半身を起こそうとして、失敗した。
アルベルトから肩を押され呆気なく再びベッドの上へと戻される。
いやいやと首を横に振る。
「なぜ、アルベルト様っ」
「なぜって……本気で言っているのか? 『クイーン』」
ビクリとサラが震える。アルベルトはサラに跨ったまま上半身だけを起こすとふうっと息を吐き出し、王家特有の金の髪をかきあげた。アルベルトの観察するような瞳がサラを射貫く。事実、今サラはヒート状態を観察されているのだろう。
「……随分違うんだな」
アルベルトの言葉にサラは眉根を寄せた。
「確か、サラ嬢の『ナイト』はファビオだけだったな?」
「そう、です」
突然の質問に戸惑いながらもサラは頷き返す。
「だからだ」
「なんの、こと、ですか?」
震える声で受け答えをするサラに可哀相なものを見るような目を向けるアルベルト。
「供給に需要が追いついていない」
「え?」
「覚醒したばかりの頃ならファビオだけで充分だっただろうが、今は最初に比べて蜜の生成量が倍近くになっているはずだ。排出しきれなかった蜜が溜まり、ヒートの間隔が短くなっている。心当たりがあるんじゃないか?」
サラは答えなかった。いや、答えられなかったのだ。
アルベルトは嘆息し、現実をサラに突きつける。
「歴代の『クイーン』に複数のナイトがいたのはそういうわけだ。サラ嬢にとっては受け入れがたいことかもしれないが、ファビオだけに負担をかけるのもそろそろ限界だろう。……素直に受け入れた方がいい。サラ嬢の為にも、ファビオの為にもな」
そう言ってアルベルトはもう一度サラに身を寄せた。サラの瞳が揺れる。
――――ソウ。ウケイレレバイイ。メノマエノオスヲ。ソウスレバ、スベテウマクイク。カイラクニミヲマカセテ。
アルベルトの手がサラの顎に触れ、顔が近づいてくる。
サラは下唇を噛み、目を閉じようとして、やめた。目をかっぴらく。
「アルベルト様は、それで、いいのですか?」
「何がだ?」
「アルベルト様はミレーナ様の」
「ああそのことか。確かに、私はミレーナの『ナイト』だったが」
「なら」
「だが」
アルベルトに遮られサラは口を閉ざす。
「彼女はもう死んだ」
「で、でも、アルベルト様はただの『ナイト』じゃなかったでしょう?! ミレーナ様の『番』だったじゃないですかっ」
正式な発表がされたわけではなかったが、二人の噂は国中に広がっていた。
それに、原作でもアルベルトはミレーナの『キング』だった。
サラは必死に理性を働かせ、アルベルトを拒もうとした。けれど、難なくその手は捉えられてしまう。ベッドの上、縫い付けられ、逃げられない。
アルベルトはサラの顔を覗き込む。
「それについては、残念ながら噂止まりだ」
「噂止まり? お二人は恋仲ではななかったということですか?」
信じられないとサラは目を丸くする。意外な反応だったのか、アルベルトは瞬きをして、フッと笑った。
「サラ嬢は意外とロマンチストなんだな」
「は?」
眉根を寄せるサラに、アルベルトはクスクスと笑う。
「ミレーナ嬢は男爵令嬢。そんな彼女が『クイーン』となったのを良しとしない輩はたくさんいた。そのことはサラ嬢も知っていただろう?」
「それは……はい」
特に『ナイト』の婚約者達やその家にとってミレーナは許しがたい存在だっただろう。
「だから、王家が『キング』に選ばれたという噂を流した。幸か不幸か『ナイト』の中にミレーナ嬢の目にかなう『キング』はいなかったからな」
だから気にすることは無いのだと微笑むアルベルト。言い様の無い嫌悪感に襲われサラは顔を顰めた。
サラの反応を窺っていたアルベルトは首を傾げる。
「そんなことより、サラ嬢身体の調子は大丈夫なのか?」
「大丈夫、ではありません。が……まだ大丈夫です。今すぐ、ユアントレーナ家に送ってください」
警戒心を頑なに解こうとしないサラを見て不可解そうにアルベルトは見つめる。
「おかしいな」
「何が、ですか?」
余裕のないサラは不機嫌さを隠せなくなってきた。イライラとムラムラで狂いそうだ。
「今、私が『ナイト』になることを受け入れてくれればその症状も解消できるんだが? サラ嬢はどうも嫌そうだな?」
「ええ。安易に『ナイト』を、選びたくはありませんので」
息も絶え絶えに、だから早くユアントレーナ家に送ってくださいと目で訴える。けれど、アルベルトは「そうか」とだけ言い距離を詰めてきた。
「な、なにをっ?!」
動揺して声がひっくり返る。アルベルトはサラを無視してサラの足に手をかけ、強引に股を開いた。
「よくコレで我慢できているな」
ぐしょぐしょに濡れ、色が変わっている部分をグリッと指で押す。
「っ!!!」
急な刺激にビクンとサラの身体が跳ねた。アルベルトが満足そうに微笑む。
「安心しろ一線を越えることはしない。ただ、ヒートを抑える為に蜜を吸いだすだけだ」
「な、にっ」
慌てて口を閉ざす。これ以上喋ったら口からとんでもない言葉が飛び出してしまいそうだ。
サラの中で二つの感情が暴れていた。
――――オネガイ。ハヤク、ハヤク、ミツヲウケトッテ。
――――駄目。耐えるのよっ。家まで、ファビオの元へ帰るまで耐えるのっ!
サラが目を閉じ必死で己を抑えている間に、アルベルトはぐしょぐしょになったサラのショーツに手にかけた。止める間もなく、剥ぎ取られる。
伸ばした手はアルベルトまで届かない。いや、届かせるつもりがないと言った方が正しい。サラの本能はすでにアルベルトを受け入れていたのだから。
「ああ。コレはすごいな」
アルベルトのつぶやきにサラの身体がビクリと反応する。異常に濡れている自覚はある。すでにびしょびしょのそこはアルベルトの言う通りすごいことになっているのだろう。
「少し、もらうぞ」
そう言ってアルベルトはサラのお尻をすくいあげるように手を添えると秘部にかぷりと食らいついた。
最初からじゅるじゅると音を立て吸い付き、舌を伸ばしてサラの中を刺激する。蜜の出が緩やかになってくると、今度はぷっくりと膨れ上がった豆粒を指でつまみこねくりまわし、長い指を中に入れサラが感じる箇所を執拗にせめた。ファビオとは違う慣れた手技に翻弄される。サラが達するのに時間はかからなかった。
「あっあっあー!!!!!」
中から蜜が噴出してアルベルトの顔を濡らす。アルベルトは驚いたように目を丸くすると、顔にかかった蜜をぺろりと舐め上げ目を細めた。
達したばかりのサラは目を閉じ、荒い呼吸を繰り返す。
――――デモ、タリナイ。モット……モットオクニアルミツモウバッテ! カワリニワタシニソレヲチョウダイ!
うっすらと瞼を開き、視線をアルベルトの下半身へと向けた。パンツ越しにもわかる。アルベルトのソレはすでに反応して生地を押し上げている。なかなかに大きそうだ。
ゴクリとサラの喉が鳴る。
無意識に手が伸びた。アルベルトはサラの行動に気づいてニヤリと口角を上げる。
「欲しいのか?」
「あっ……」
「私のコレが欲しいのか?」
そう言って下半身をわざとサラの足に押し当てた。大きく、硬く、熱い。サラはごくりと唾を飲み込み、アルベルトを見上げた。
そして、ぎゅっと目を閉じると、下唇を噛み、ゆるゆると首を横に振った。血の味が口内に広がる。
「お願いだから、はやく、早くユアントレーナ家に」
「……わかった」
興醒めしたようにアルベルトは息を吐き、サラから離れると己の服装を整えた。通信機を起動させ馬車を呼ぶ。その間にサラも震える手でなんとか己の服装を整えた。
――――危なかった。
でも、確かに最初の頃よりは身体が動かしやすい。蜜を体外に放出したおかげか、本能がまだ暴れてはいるが、理性も同じくらい取り戻せた。
ゆっくりと立ち上がろうと足に力を入れる。その瞬間、身体が前に倒れた。
「無茶をするな」
「すみ、ません」
アルベルトはサラを支えたまま己の身体とサラの身体に浄化魔法をかけるとサラを抱き上げた。燻る熱が残ったままのサラは小さな刺激に身体を震わせるが目を閉じなんとか耐える。そんなサラをアルベルトは興味深そうに観察していた。
こめかみがずきずきと痛む。それに、眼球の奥も。この症状には覚えがあった。現世ではなく前世で。長時間同じ姿勢で事務作業を行った日は必ずといっていいほどこの痛みに襲われていた。
――――せめてストレッチだけでもしておけば……。
と、今更後悔したところで遅い。それよりも今必要なのは鎮痛薬と睡眠だ。
「アルベルト様。あの、頭痛を」
「コレだろう?」
そう言ってアルベルトは小さな箱から瓶を取り出し、小皿に二粒とりわけるとサラに差し出した。サラも見たことのある薬だ。父の執務室に常備してあるものと同じ物。
「ありがとう、ございます」
さっそく口にしようとして、飲み水がないことに気づく。タイミングをみはからったかのようにアルベルトが隣室から水が入ったカップを手に戻ってきた。
カップを受け取り、薬を口に投げ込むと一気に飲み干す。
「効くには少々時間がかかるだろう。それまで横になっているといい」
「はい。あ、いえ、私は大丈夫ですから」
帰宅しましょうと窓の外に視線を向ける。すでに日は暮れ始めている。薬が効くのを待っていたら真っ暗になってしまう。さすがにそれは申し訳ない。しかも、相手は王太子だ。
サラの言葉をどのように受け取ったのか、不意にアルベルトが片方の口角を上げて笑った。
「こんな時まで気を遣う必要は無いぞ。それに、ファビオ達にああ言った手前、サラ嬢に無理をさせるわけにもいかない」
「それは……」
「私はもう少し仕事の続きをする。サラ嬢は隣室のベッドを使うといい。そうだな……一時間経ったら起こそう」
有無を言わせない物言いにサラが折れた。隣室に入る前に、ちらっと振り向く。
「もし、一時間経っても私が起きないようでしたら叩いてでも起こしてくださいね。よろしくお願いします」
「ああ、そうするとしよう」
令嬢らしからぬ発言にアルベルトは笑い頷いた。
すぐにアルベルトの視線が机の上の書類に移ると、サラはこれ以上邪魔をしないようにと隣室に入った。
休憩用のベッドにしては大きなベッドに身体を横たわらせる。
――――さすが王太子も使うベッドね。ユアントレーナ家のベッドと遜色ない寝心地だわ。
薬が効いてきたのだろう。眠気に誘われサラは瞼を閉じた。
「ん」
異常な身体の熱さを感じて意識だけが浮上する。この熱さは間違いなくヒートだ。
「あっ」
冷たい大きな手がサラの頬を撫でている。身体がビクリと震える。もっと触れてほしくてサラは無意識にその手に頬を擦り付けた。触れている手の動きが止まる。
――――ドウシテヤメルノ? モットサワッテ?
両手を伸ばして相手を抱き寄せる。吐息が首筋にかかる。サラは熱い息を吐き出した。
サラの期待に応えるように唇が首筋を這い、大きな手がサラの左胸を包み込む。やわやわと揉みしだかれ、サラは微かに声を漏らした。
サラの反応に気をよくしたのか動きが大胆になる。服の中に侵入してきた手が直接サラの柔肌に触れた。先程よりも強い力で胸を揉まれ、時折起ち上がった胸の先っぽを指ではじかれる。そのたびにサラの腰が揺れた。
――――ジラサナイデ。モットシテ!
「ファビオッ」
懇願するように名前を呼ぶと、完全に手が止まってしまった。どうしてやめるの?!
そう言おうとして目を開いた瞬間、サラは思いがけない人物と目があった。
「な、んでっ」
サラに覆いかぶさっているのはファビオではなく、アルベルトだった。
瞬時に、今サラはどこにいるのかを思い出した。そして、今自分に何が起きているのかを悟る。
慌てて上半身を起こそうとして、失敗した。
アルベルトから肩を押され呆気なく再びベッドの上へと戻される。
いやいやと首を横に振る。
「なぜ、アルベルト様っ」
「なぜって……本気で言っているのか? 『クイーン』」
ビクリとサラが震える。アルベルトはサラに跨ったまま上半身だけを起こすとふうっと息を吐き出し、王家特有の金の髪をかきあげた。アルベルトの観察するような瞳がサラを射貫く。事実、今サラはヒート状態を観察されているのだろう。
「……随分違うんだな」
アルベルトの言葉にサラは眉根を寄せた。
「確か、サラ嬢の『ナイト』はファビオだけだったな?」
「そう、です」
突然の質問に戸惑いながらもサラは頷き返す。
「だからだ」
「なんの、こと、ですか?」
震える声で受け答えをするサラに可哀相なものを見るような目を向けるアルベルト。
「供給に需要が追いついていない」
「え?」
「覚醒したばかりの頃ならファビオだけで充分だっただろうが、今は最初に比べて蜜の生成量が倍近くになっているはずだ。排出しきれなかった蜜が溜まり、ヒートの間隔が短くなっている。心当たりがあるんじゃないか?」
サラは答えなかった。いや、答えられなかったのだ。
アルベルトは嘆息し、現実をサラに突きつける。
「歴代の『クイーン』に複数のナイトがいたのはそういうわけだ。サラ嬢にとっては受け入れがたいことかもしれないが、ファビオだけに負担をかけるのもそろそろ限界だろう。……素直に受け入れた方がいい。サラ嬢の為にも、ファビオの為にもな」
そう言ってアルベルトはもう一度サラに身を寄せた。サラの瞳が揺れる。
――――ソウ。ウケイレレバイイ。メノマエノオスヲ。ソウスレバ、スベテウマクイク。カイラクニミヲマカセテ。
アルベルトの手がサラの顎に触れ、顔が近づいてくる。
サラは下唇を噛み、目を閉じようとして、やめた。目をかっぴらく。
「アルベルト様は、それで、いいのですか?」
「何がだ?」
「アルベルト様はミレーナ様の」
「ああそのことか。確かに、私はミレーナの『ナイト』だったが」
「なら」
「だが」
アルベルトに遮られサラは口を閉ざす。
「彼女はもう死んだ」
「で、でも、アルベルト様はただの『ナイト』じゃなかったでしょう?! ミレーナ様の『番』だったじゃないですかっ」
正式な発表がされたわけではなかったが、二人の噂は国中に広がっていた。
それに、原作でもアルベルトはミレーナの『キング』だった。
サラは必死に理性を働かせ、アルベルトを拒もうとした。けれど、難なくその手は捉えられてしまう。ベッドの上、縫い付けられ、逃げられない。
アルベルトはサラの顔を覗き込む。
「それについては、残念ながら噂止まりだ」
「噂止まり? お二人は恋仲ではななかったということですか?」
信じられないとサラは目を丸くする。意外な反応だったのか、アルベルトは瞬きをして、フッと笑った。
「サラ嬢は意外とロマンチストなんだな」
「は?」
眉根を寄せるサラに、アルベルトはクスクスと笑う。
「ミレーナ嬢は男爵令嬢。そんな彼女が『クイーン』となったのを良しとしない輩はたくさんいた。そのことはサラ嬢も知っていただろう?」
「それは……はい」
特に『ナイト』の婚約者達やその家にとってミレーナは許しがたい存在だっただろう。
「だから、王家が『キング』に選ばれたという噂を流した。幸か不幸か『ナイト』の中にミレーナ嬢の目にかなう『キング』はいなかったからな」
だから気にすることは無いのだと微笑むアルベルト。言い様の無い嫌悪感に襲われサラは顔を顰めた。
サラの反応を窺っていたアルベルトは首を傾げる。
「そんなことより、サラ嬢身体の調子は大丈夫なのか?」
「大丈夫、ではありません。が……まだ大丈夫です。今すぐ、ユアントレーナ家に送ってください」
警戒心を頑なに解こうとしないサラを見て不可解そうにアルベルトは見つめる。
「おかしいな」
「何が、ですか?」
余裕のないサラは不機嫌さを隠せなくなってきた。イライラとムラムラで狂いそうだ。
「今、私が『ナイト』になることを受け入れてくれればその症状も解消できるんだが? サラ嬢はどうも嫌そうだな?」
「ええ。安易に『ナイト』を、選びたくはありませんので」
息も絶え絶えに、だから早くユアントレーナ家に送ってくださいと目で訴える。けれど、アルベルトは「そうか」とだけ言い距離を詰めてきた。
「な、なにをっ?!」
動揺して声がひっくり返る。アルベルトはサラを無視してサラの足に手をかけ、強引に股を開いた。
「よくコレで我慢できているな」
ぐしょぐしょに濡れ、色が変わっている部分をグリッと指で押す。
「っ!!!」
急な刺激にビクンとサラの身体が跳ねた。アルベルトが満足そうに微笑む。
「安心しろ一線を越えることはしない。ただ、ヒートを抑える為に蜜を吸いだすだけだ」
「な、にっ」
慌てて口を閉ざす。これ以上喋ったら口からとんでもない言葉が飛び出してしまいそうだ。
サラの中で二つの感情が暴れていた。
――――オネガイ。ハヤク、ハヤク、ミツヲウケトッテ。
――――駄目。耐えるのよっ。家まで、ファビオの元へ帰るまで耐えるのっ!
サラが目を閉じ必死で己を抑えている間に、アルベルトはぐしょぐしょになったサラのショーツに手にかけた。止める間もなく、剥ぎ取られる。
伸ばした手はアルベルトまで届かない。いや、届かせるつもりがないと言った方が正しい。サラの本能はすでにアルベルトを受け入れていたのだから。
「ああ。コレはすごいな」
アルベルトのつぶやきにサラの身体がビクリと反応する。異常に濡れている自覚はある。すでにびしょびしょのそこはアルベルトの言う通りすごいことになっているのだろう。
「少し、もらうぞ」
そう言ってアルベルトはサラのお尻をすくいあげるように手を添えると秘部にかぷりと食らいついた。
最初からじゅるじゅると音を立て吸い付き、舌を伸ばしてサラの中を刺激する。蜜の出が緩やかになってくると、今度はぷっくりと膨れ上がった豆粒を指でつまみこねくりまわし、長い指を中に入れサラが感じる箇所を執拗にせめた。ファビオとは違う慣れた手技に翻弄される。サラが達するのに時間はかからなかった。
「あっあっあー!!!!!」
中から蜜が噴出してアルベルトの顔を濡らす。アルベルトは驚いたように目を丸くすると、顔にかかった蜜をぺろりと舐め上げ目を細めた。
達したばかりのサラは目を閉じ、荒い呼吸を繰り返す。
――――デモ、タリナイ。モット……モットオクニアルミツモウバッテ! カワリニワタシニソレヲチョウダイ!
うっすらと瞼を開き、視線をアルベルトの下半身へと向けた。パンツ越しにもわかる。アルベルトのソレはすでに反応して生地を押し上げている。なかなかに大きそうだ。
ゴクリとサラの喉が鳴る。
無意識に手が伸びた。アルベルトはサラの行動に気づいてニヤリと口角を上げる。
「欲しいのか?」
「あっ……」
「私のコレが欲しいのか?」
そう言って下半身をわざとサラの足に押し当てた。大きく、硬く、熱い。サラはごくりと唾を飲み込み、アルベルトを見上げた。
そして、ぎゅっと目を閉じると、下唇を噛み、ゆるゆると首を横に振った。血の味が口内に広がる。
「お願いだから、はやく、早くユアントレーナ家に」
「……わかった」
興醒めしたようにアルベルトは息を吐き、サラから離れると己の服装を整えた。通信機を起動させ馬車を呼ぶ。その間にサラも震える手でなんとか己の服装を整えた。
――――危なかった。
でも、確かに最初の頃よりは身体が動かしやすい。蜜を体外に放出したおかげか、本能がまだ暴れてはいるが、理性も同じくらい取り戻せた。
ゆっくりと立ち上がろうと足に力を入れる。その瞬間、身体が前に倒れた。
「無茶をするな」
「すみ、ません」
アルベルトはサラを支えたまま己の身体とサラの身体に浄化魔法をかけるとサラを抱き上げた。燻る熱が残ったままのサラは小さな刺激に身体を震わせるが目を閉じなんとか耐える。そんなサラをアルベルトは興味深そうに観察していた。
3
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた
cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。
お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。
婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。
過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。
ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。
婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。
明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。
「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。
そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。
茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。
幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。
「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?!
★↑例の如く恐ろしく省略してます。
★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。
★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません
ドン引きするくらいエッチなわたしに年下の彼ができました
中七七三
恋愛
わたしっておかしいの?
小さいころからエッチなことが大好きだった。
そして、小学校のときに起こしてしまった事件。
「アナタ! 女の子なのになにしてるの!」
その母親の言葉が大人になっても頭から離れない。
エッチじゃいけないの?
でも、エッチは大好きなのに。
それでも……
わたしは、男の人と付き合えない――
だって、男の人がドン引きするぐらい
エッチだったから。
嫌われるのが怖いから。
【完結】身売りした妖精姫は氷血公爵に溺愛される
鈴木かなえ
恋愛
第17回恋愛小説大賞にエントリーしています。
レティシア・マークスは、『妖精姫』と呼ばれる社交界随一の美少女だが、実際は亡くなった前妻の子として家族からは虐げられていて、過去に起きたある出来事により男嫌いになってしまっていた。
社交界デビューしたレティシアは、家族から逃げるために条件にあう男を必死で探していた。
そんな時に目についたのが、女嫌いで有名な『氷血公爵』ことテオドール・エデルマン公爵だった。
レティシアは、自分自身と生まれた時から一緒にいるメイドと護衛を救うため、テオドールに決死の覚悟で取引をもちかける。
R18シーンがある場合、サブタイトルに※がつけてあります。
ムーンライトで公開してあるものを、少しずつ改稿しながら投稿していきます。
残念な悪役の元王子に転生したので、何とかざまぁを回避したい!
*
BL
R18BLゲームで、頭弱く魔力最低、きゃんきゃん吠えるだけの残念なちっちゃい悪役、元王子のリユィに転生してしまいました……!
主人公にいじわるされたり、最愛の推しにきらわれたり、溺愛されたりしながら、ざまぁ回避のために頑張ります!
R18なお話には*がついています。
お話の本編は完結していますが、おまけのお話を更新したりします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる