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#1 レツオウガ起動

Chapter03 魔狼 13-03

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 クレバスは手前一センチで止まっており、斬撃自体は受けなかったのだろう。だが霊力増幅器には、下から上へ、一直線に亀裂が走っている。
 通過する刃の生み出した真空が、霊力増幅器の外枠を持って行ったのだ。
「よ、くも」
 怒りとともにオーディンへ再接続し、ギノアはレツオウガを睨む。
「よくも、私の霊力増幅器を! 私の夢の原動力を! よくも――!」
 機能不全を起こしたのか、霊力増幅器から送られる霊力量は激減している。
 だがそれでもギノアは、今までをはるかに上回る速度と激しさでレツオウガへ飛びかかる。
 己の夢を叩き折った仇敵を、命に変えても抹殺するために。
「は、あ、あぁぁぁぁっ!!」
 旋風を纏い、荒れ狂う一撃、二撃、三撃四撃五撃六撃。
 台風さながらに叩きつけてくる、オーディンの刃と殺意。辰巳はそれを全力で回避し、斬り払い、霊力装甲で防御する。
「霊力、増幅器、だと?」
 秒単位で激しさを増すグングニルの嵐の中。亀裂の向こうから鬼気迫る顔を見せるギノアと、その足元にある箱を、辰巳は見止めた。
 あの箱が、霊力増幅器だというのか。
「待てよギノア・フリードマン! オマエ本気で言ってるのか!? 霊力を増幅する装置なんてのは、絶対に造れないはずだぞ!」
「な、に」
 刃と刃が鍔迫り合った状態で、ギノアは動きを止めた。
 そう、辰巳の言う事に間違いはない。死霊術師リッチとして――いや、霊力を扱う者ならば、駆け出しの素人だろうと熟知している基礎知識の一つだ。
 霊力とは、言うなれば水である。人の心を原泉とし、命ある限りこんこんと湧き出る無形の力。
 その形状を変える事は出来ても――例えば凍らせたり蒸発させたりしたとしても、変わるのは体積だけだ。質量は変わらない。
 霊地ダムで一般人の霊力を確保しているのは、それが理由だ。
 一のモノがニに増える事など、有り得ないのだ。
 だが、ならば。
 神影鎧装を構築するのみならず、今まで大量の霊力をギノアへ供給してきた霊力増幅器とは、一体なんなのか。
「――」
 呆然とギノアが見下ろした矢先、霊力増幅器が割れ砕ける。今までの激しい機動によって、ヒビが広がったのだ。
 かくして箱の中から現れたそれを、ギノアは呆然と見据える。
「これ、は」
 レツオウガと鍔迫っている現状すら忘れ、ギノアはそれの、真っ暗な眼窩から目が離せない。
 まぁ、無理もない。
 何せ霊力増幅器の中から出てきたそれは、古びた、一個の髑髏だったのだから。
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