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#1 レツオウガ起動

Chapter03 魔狼 12-09

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 ふふん、と胸を反らす風葉を背後に、辰巳は自機に何が起きたのか調査する。
 結果はすぐに出た。
「フェンリルが喰ったRフィールドを、レツオウガの霊力へ転換したってのか……?」
 神の力を再現できる能力を備えた鎧装、レツオウガ。風葉はその能力を応用して魔狼フェンリルの身体を造り、霊力の捕食吸収術式として編み上げたのだ。
 ああ、理屈の上では理解できる。機転と才能を備えた一流の魔術師が、土壇場でそうした神技をやってのけた前例も知っている。
「しかし……そんな無茶を、素人の霧宮さんがやってのけるとはな。恐れいったよ」
「? 私はフェンリルの考えをやってみただけだよ。それに外国のRフィールドも、こんな感じで片付けてるんじゃないの?」
「それは、まぁ」
 確かにその通りではある。あるのだが、研究者達が長年かけて造り上げたそれを、素人がたった数分で組み上げるというのは何の冗談なのか。
 フェンリルの分霊なのだから、そうした知識もフィードバックされるのは分からなくもないが――。
「ダメ、なのかな。こういうのは何て言うか、こう、著作権みたいな問題が?」
 しゅん、と風葉の犬耳が垂れる。
「いや、まさか」
 はにかむ口元を隠すように、辰巳はバックミラーを消す。
「最高のサポートだね」
 ゆらりと、二刀を構えるレツオウガ。
 その動きと辰巳の背中に、風葉の犬耳がピンと立ち直る。
「アナタ方はぁぁ……」
 そんな二人の真正面、怒りを顕にするギノアが、苛立たしげにグングニルを振り下ろす。
「Rフィールドを……よくも私の依頼を……私の、ユメを……!」
 地面を叩く石突き。放射状に広がる衝撃波。
 だがもはや意に介さず、レツオウガの双眸がオーディンを見据える。
「さて、仕切りなおしだ」
 機体性能は、霊力装甲を纏った時点から既に互角。
 霊力切れの心配は、フェンリルのサポートがある限り必要ない。
 ならば後は、純粋に技量の勝負だ。
「殺す――コロス――! 絶対にぃぃ!」
「二言はない。容赦もしない」
 冷徹な宣言が、ギノアの激昂を両断する。
 闘志が、真芯を射抜く。
「速やかに、終わらせて貰う」
 かくして魔狼の影を従えるレツオウガが、一直線に跳躍する。
 決着を、つけるために。
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